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神として転生したけどなんか違う!  作者: ミスター栗
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第四話

しばらくして、同じ風景にもさすがに飽きが来た。

青空。揺れる草原。美しいけど、もう十分だ。


「そろそろ、他の景色も見てみたいな……」


そう思い、視界を別の方向へ向けようと軽く意識を巡らせた時だった。

窓の右端、視界の端に何かが引っかかる。――白い、文字のようなものが浮かんでいた。


「……あ?」


視界を窓の景色中心からその文字に変え、じっとその白い文字を見つめる。


一抹の不安が胸をよぎる。

あの微妙に胡散臭い神の、謝罪とも処理ともつかない細い目と笑顔が脳裏をよぎった。


「……なんか嫌な予感がすんだよな」


俺は試しに、意識を集中する。

そして白い文字に対して


【赤くなれ】


と強く意識した。


その瞬間、白かった文字がくっきりと赤く浮かび上がった。

見事に指示が通ったらしい。


「……マジかよ。知らなかったとは言え自由度高いな」


文字は何やら設定っぽいことが書かれていたが、この際文字の内容は後回しで良い。

それを確認する前に、まずは窓を閉じてみる。

これまで通り意識を向けると、すうっと景色が消え、部屋は元の真っ白な状態に戻った。

――ただし、一つだけ違う点がある。


「……なんで、赤文字が残ってんだよ」


窓と共に消えると思っていた文字が、空間にぽつんと浮かんでいる。

赤く、はっきりと。まるでそこに最初からあったかのように。


「……いや、最初からあったのか。見えなかっただけで」


思わずため息をつく。


「白い部屋に白い文字って……嫌がらせかよ……」


心の中でぼやきながらも、俺はようやく理解する。

この文字、窓にくっついていたわけじゃない。

元からこの空間にあった、常設の存在だったのだ。


まるで“最初からお前の目の前に答えはあったんだよ”とでも言われているようで、なんとも腹立たしい。


しかし気を取り直す。

ここには時間的制限は無いが、過ぎた後悔を続けているのは流石に時間の無駄だ。


そう自分に言い聞かせて文字を再度見る。

浮かび上がった赤文字には、こう書かれていた。


ーーー


【DP3/3】

【SP1】

【149:15:27】


ーーー


「……は?」


どれも意味深で、特に最後の「149:15:27」が気になった。

時間表示っぽい……まさかのカウントダウン?


そう考えている間にも数字が27から26、25と減って行くのが見える。

どうやらカウントダウンなのは確定のようだ。

おそらく左から時間、分、秒なのだろう。


しかしそれがわかった所でどうしようもない。

なぜなら何に対するタイムリミットなのかすらわからないのだ……対処のしようもない。


「……わからないことは後回しにしよう」


俺は再び赤く浮かび上がった文字と対面した。そして見つめながら、俺は思わず唸った。


「DP……ダンジョンポイントとかか?」


最初に浮かんだのは、ダンジョンに関連したゲームとか映画に出てくるようなシステムだった。

「ダンジョンポイント」ならば、どこかでダンジョン探索的な要素があるのか?もしかして創る側とか?

……それとも、やっぱり俺がただゲーム脳なだけか?


そうやって思考を停滞させているとなんとなく、DPがダンジョンに関連するものではない気もしてきた。


「まあ、試してみるしかないか」


決心して、DP3/3の文字に手をかざしてみた。

なぜそうしたかと言えばそうすれば良いという確信に近い勘だった。


手をかざしたその瞬間――文字が淡く光り、まるでウィンドウのように半透明の板が目の前にスッと現れた。



---


DPデイリーポイント

現在値:3/3

・物品との交換が可能。

・神の部屋内でのみ使用可。

・一日ごとに自動で最大値まで回復。

・ポイントの貯蓄は不可。使わなかった分は失効する。


---


「……っ!?」


急に現れた画面と、そこに並んだ“ゲームっぽい”文言に驚いた俺は、思わず尻もちをついた。


「何となく分かってたけど、やっぱり出たな」


勘ではあったものの想像通り、ウィンドウが出て嬉しく思う。

それはそれとして、目の前に現れて驚いて尻もちまでついてしまった。

誰にも見られていないはずだが、顔が熱い。


俺は誰もいない空間に向かって、まるで言い訳でもするように再び話始めた。


「それと……ダンジョンポイントかと思ったけど、全然違ったな。」


俺はしばし呆然としながらその説明を読み、なるほどと納得する。


書いてある通りなのだろう、しかし交換はどこですればいいのだろうか?

そして交換できる品の確認……カタログのような物は無いのだろうか?


そう意識するとDPの説明のウィンドウに重なるように新たなウィンドウが表示された。

DPと物品を交換できる場所......某ネットショッピングサイトを連想させるウィンドウだった。


交換できる物を一通り流し見した所。

どうやら、食品や本、CDラジカセのような娯楽品との交換に使うようだ。


つまり、この神の部屋での日常を少しだけ快適にするためのもの、ってことか。


「次は……SPか」


俺は視線を隣の赤文字「SP1」に移す。

「SP」っていうのは、スキルポイントとかそういう類かな?


そう考えながら、今度はそこに触れてみる。

すると、再びウィンドウが現れた。


---


【SP(崇拝ポイント)】

現在値:1

・崇拝されることで自然と蓄積されるポイント。

・使用により、神域外への干渉・スキル取得・天啓の付与・加護の授与・物質の創造など、多岐にわたる神的行為が可能。

・日毎にもリセットされず、保持可能。


---


「……スキルポイントじゃないんかいっ!」


思わずツッコんだ。そう、心の中では完全に「スキルポイント」だと思い込んでいたからだ。

“SP”といえば、ゲーム的にはスキルポイント。そういう刷り込みがあった。


けれど――その内容は予想を遥かに超えていた。


「スキルポイントよりも断然に汎用性に富んだトンデモな代物だったわ……」


神域外への干渉? 天啓? 創造? まるで何でもできそうな書き方だ。


スキルポイントなんかより、よっぽどヤベェ代物じゃねぇか。


「流石神様パワー……」


つぶやきながら、俺は腰をついたままもう一度画面を見つめ直す。

こんな大切なものを、説明もなしで隠すように“白い部屋に白文字で表示”してたってのか……。


「……でも、崇拝されるって、どうやって? 小石が対象だろ?」


俺は自然と、自分の“神としての立場”に思いを巡らせていた。

このポイントの性質上、誰かに信仰されないと意味を成さない。けど、小石を崇める人間なんて、いるか?


「そもそも……外の人間に、小石の神なんて気づかれんのか?」


SPの表示は、興奮よりも謎と疑問を呼び起こした。

力の存在はわかった。けれど、それをどう扱えばいいのか、何から始めればいいのか……まったく見当もつかない。

……そして謎のカウントダウン。


「暇ではなくなったけど、心配事が増えるのは勘弁願いたいね」


俺は赤文字を見上げながら、ため息をついた。

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