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【34話】悪い行いは巡り巡って自分に帰ってくる

 

 それからは、リリーナと下らない雑談をしていく。

 ここのところずっと静かだった空き部屋は、以前の賑やかしい雰囲気にすっかり戻っていた。

 

「ダンスパーティーの季節が近づいてきたわね」

「そんなのもあったな。興味なさ過ぎてすっかり忘れてた」


 メルティ魔法学園では、毎年、年末にダンスパーティーが開かれている。

 美味しい料理や飲み物がたくさん出てくる、それはもう豪華なパーティーだ。

 

 しかし、誰しもが参加できるという訳ではない。

 

 参加するには、男女二人でペアを組む必要がある。

 相手が見つからない場合には、参加できないのだ。

 

「お前はクロードと参加するんだろ?」

「まだ誘ってないけど、そうなってほしいところよね。……あんたはどうすんのよ?」

「俺か? 俺がやることはいつもと変わらない。お前とクロードがペアを組めるように、全力でサポートするだけだ」

「そうじゃないわよ! あんたは誰とペアを組むの!?」

「なんだ。そういうことかよ」


 どういうわけかムキになっているリリーナに、リヒトは軽くため息を吐いた。


「答えは、参加しない、だ。ダンスなんて興味ないし、そもそも組んでくれるような相手がいないからな」

「……そう。それならいいの」


 わずかに口角を上げたリリーナは、嬉しそうな顔になった。

 

「どうしてそこで笑うんだよ?」

「べ、別に。ボッチでコミュ障で哀れなあんたを見て、思わず笑いが込み上げてきたのよ」

「……お前ってやつは。性根が腐って――へっくし!」


 性悪女に文句を言ってやろうとしたところで、くしゃみをしてしまった。

 くしゃみの瞬間顔を背けたので、リリーナへの被害はないはずだ。

 

「あんたもしかして風邪ひいたの? うつると嫌だから早く帰ってよ、この病原菌」

「病原菌って……! くそっ、うつしてやる! 明日の朝は、ベッドから出られないだろうな!」


 くしゃみひとつで病原菌扱いは、流石にあんまりではないだろうか。

 少々ムカっとしたリヒトは、リリーナに風邪をうつしてやろうと画策する。

 もちろん、冗談ではあるのだが。

 

 しかし、それがいけなかったのかもしれない。

 

 

 翌日。

 午前八時。

 

「結構酷い熱ですね。お兄様、本日は学園をお休みしましょう」

「ああ。そうするよ」

「病人用の朝食を持ってくるので、少々お待ちくださいね」

「悪いな。頼む」


 ベッドに横たわるリヒトは、隣で看病してくれているレリエルにかすれた声で弱々しい返事をする。


(冗談でも言うんじゃなかったな)


 風邪をうつしてやるなんて縁起の悪いことを言った罰が、そっくりそのまま自分に返ってきたのかもしれない。

 ゴホゴホとせき込みながら、リヒトは軽率な行いを反省した。

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