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ある日の放課後、私はいつか呼び出された学園裏の森の入り口にいた。
ふきすさぶ風の中、現れたのはリオス様。
リオス様の手には私が、リオス様の鞄に入れた手紙を持っている。
「この手紙、お前だよな。俺宛になってるけど、間違えてスカビオの鞄に入ってたぞ」
「えっ、嘘っ!」
変だな。ちゃんと確かめたはずなのに。
「どうしたんだよ。お前がこんな下心ある行動するなんて」
「こっ、行動しなくちゃ“偶然”なんて起きない、って思ったから…」
「へえ、そうか。じゃ、俺に協力しろっていうことか 」
「え? 」
「“偶然”を起こしたい相手はルシオン様だろ? 俺にどうしろって言うんだ? 」
「違うわ、私は…」
「バイト帰りの時に、お前にルシオン様とのことを聞いたら、普通に友達としてつきあいたい、って言ってただろ。友達から“偶然”、婚約者になれたりするかもしれないもんな」
「違うってば! ルシオン様のことじゃないから! 」
「…そうなのか? じゃあ一体…」
「とりあえず、聞きたいことがあります。王子が私に挨拶してきたり、よく話すようになったりしても、嫌がらせがまったく起きない。何かしたんでしょう? 」
リオス様は、ああ、と思い当たるような仕草をしながら答えた。
「…あんな状況のままじゃ、王子も俺たちも動きにくいままだ。お前に言われたことも含めて、みんなで計画を立てた」
「計画? 」
「まずはお前に嫌がらせした令嬢たちを調べ上げてリストアップした。そして、この夏の長期休暇のあいだに、彼女たちと王子が、個別で対面して、王妃教育を受けてみないかと誘ったんだ」
「王妃教育、って、それって…」
「話を受けた令嬢は、自分は王子の婚約者として候補にあがってる、って思うだろ? 実際、婚約者になれば当然、王妃教育は受けてもらうことになるしな。
誘っても断るご令嬢もいたし、受けてみて途中で挫折したご令嬢もいた。頑張って続けてるご令嬢には、申し訳ないが少し厳しく教育させていただいたりした」
「それで…? 」
「ただ単に、王子と近づきたい、ってご令嬢は、関われたことで満足できたり、王子から声をかけられたことで、自分は特別と思えたりもしたようだ。
婚約者になりたいとは思うけど、いずれ王妃になるっていう厳しさには耐えられない、ってヤツもいた。
それでも王妃教育を続けようというご令嬢は、人格的にもそれなりのものを持ってるから、嫌がらせなんてケチなことはしない。ま、いつまで続くかわからないけどな。
こんなところだ」
「…そうだったの。いろいろしてくれてたのね。ありがとう。王子にも今度ちゃんとお礼を言いたいわ」
「言っただろ。お前のためだけじゃなく、王子自身のため、まあ、嫌がらせするご令嬢たち自身のためにもなったな。結果的に」
「ああ、確かに…」
「それに、お前に言われたことがなきゃ、俺たちはただ力で抑えつけようとしただけだったかもしれない。 勉強になった、って王子もスカビオも言ってたよ」
「それは…、まあ、そうだとは思うわ」
アリカは胸を張った。
リオス様はぷっと噴き出した。
「なんだよ、素直に認めちゃうのか。謙遜とかしないんだな」
「し、下心ある行動は苦手なのよ…」
「ふ…、一体どっちなんだよ。ところで、話はそれだけか? 」
「あ…、いえ、その…」
アリカはパッと手を挙げた。




