勘違い
「やあ、アリカ嬢。休暇はどうだった? 」
夏の長期休暇が終わり、学園が始まると、なぜかルシオン王子が以前のように、アリカに話しかけてくるようになった。
「え、あ、はい…。お陰様でつつがなく…。ありがとうございます」
「そう、それは良かった。じゃあまた」
ルシオン王子はまるで普通の友人のように、アリカに話しかけてくる。
じゃあまた?
普通の友人のように?
リオス様が、ルシオン王子に何か言ったのかしら?
ちらりとリオス様を見てみるけど、にやっと微笑むだけで、何も言わない。
「アリカ、帰ろう」
いつもの通り、エキーザ兄さまが教室にアリカを迎えに来てくれた。
「また王子が話しかけてくるようになってから、嫌がらせのほうはどう? 」
「それが今のところ、まだ何もないの」
「それは良かった。でも気を抜かないように…、って、どうかした? 」
「うん、嫌がらせがないのは一番なんだけど、もしまた嫌がらせされたとしても、なんだかあまり気にならないかもしれないな、って…」
「へえ、それはどうして? 」
「うん、ちょっと…。ある人と話をして…、嫌がらせをされるのがイヤだから、自分の想うように人とつきあわないのは、嫌がらせした人たちの思うツボだ、って言われたの」
「ああ…。なるほど、そうかもね。それで、考えが変わった? 」
「言われた時は、ドキッとした。きっとその通りだと思ったんだと思う。でも、考えが変わったとは思わなかった。けど、いつのまにか…」
「感じ方が変わってた? 」
「うん。そうみたい」
「その話をした人、って、誰? 」
「え? えっと、それは…」
その時ちょうど校門のところに、リオス様が立っていた。
誰かを待っていたように、気だるそうな様子で、こちらに視線を向けた。
リオス様?
もしかして、私を待ってた…?
と思ったら、リオス様の視線は私を通り越して、私の後ろへと声を投げかけた。
「スカビオ、遅いぞ」
「悪い」
アリカとエキーザ兄さまの後ろから、スカビオ様が歩いてきてたのだった。
(私ってば、馬鹿みたいな勘違いして…)
「アリカ? どうした」
「あ、いえ、何でもない。ちょっと何か頭がぐらっ、て…」
「めまいか。学園に戻って少し休む? 」
「いいのいいの、大丈夫。もう治ったから。よくあるんだ、こういうこと」
「そう? 」
「うん。エキーザ兄さま、早く帰りましょう」




