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ⅩⅦ

 ステュークスの頭目が乗っていると思われる飛空艇に乗り込むことに成功したドゥーレ。 格納庫に飛空車を無理やり着陸させ、構成員の集中砲火を受けた飛空車が爆発する。

 

 ドゥーレとシンシアは飛空車から飛び降りるように脱出し、歓迎されない形で格納庫に到着すると、侵入者を迎撃するためステュークス構成員が続々と集まってくる。 その数、十三人。

 

「このふねが本命と見て間違いないだろうな」

 

「あらあら、大当たりでしたね! さすがドゥーレ様。 お目が高いです!」

 

「呑気に世間話などさせてくれそうにないな。 いくぞシンシア、殲滅の時間だ」

 

 ドゥーレの合図を受け、シンシアの全身が淡く発光しながら変形していく。 ドゥーレの身長とほぼ同じ長さの槍に変形したシンシアを握り、鋭い視線を巡らせながら敵の動きを観察するドゥーレ。

 

「さて、頭目はどこだ? お前らと遊んでいる時間はないのだが?」

 

「わりぃな第二王子、お前はここで大人しくしてもらうぜ!」

 

 構成員を代表するかのように、一歩踏み出しながら長髪の男が宣言すると、両掌に光で作られた剣を具現化させる。 それを合図にしたかのように、他の構成員たちも各々の武器を構えた。

 

「ふむ、力ずくで探し当てるしかないようだな」

 

 槍を構えながら狼のようにギラつかせた瞳を長髪の男に向けると、弓や銃などの遠距離武器を持った構成員が一斉に攻撃を開始する。

 

 炎で作られた弓矢や、怪で作り出した歪な形のマシンガンから連射、杖先から放たれた氷柱や稲妻などが一気呵成にドゥーレを目掛けて襲来する。 しかしドゥーレは顔色ひとつ変えずに平然とした表情で移動を開始した。

 

 優雅な所作で身を翻し、あるいは体操のように開脚して身を伏せ、さらには宙返りなどで攻撃をかわし、ゆっくりと長髪の男に接近していく。 遠距離攻撃は当たる気配が一切ない。

 

 もちろん構成員たちは適当に撃ち放っているわけではない。 ここにいるのは全員怪象師団と同等の実力者ばかり、闇雲に攻撃を続けて戦っている気分に浸ったりなどしていない。

 

 全員が全員、必ず当てるという気持ちで攻撃を打ち、自分がドゥーレを撃退するという気概で攻勢に望んでいる。

 

 にも関わらず、ドゥーレには攻撃がかすりもしない。 雲行きが怪しくなってきたことに気がついた中衛たちが各々武器を振り上げる。 それを合図に遠距離組はすぐに配置を変えるため移動。

 

 鎖で繋がれた鉄球や投げナイフ、鎖鎌や鞭などが一斉にドゥーレめがけて飛んでいくが、これすらも涼しげな顔でかわすドゥーレ。

 

 まるでどこからどの攻撃が来るのかを把握しているかのような、無駄のない華麗な動き。 全方位見えているとしか思えない挙動。

 

「いい連携だ。 空賊にしておくには惜しい人材ばかりだ」

 

 ボソリと呟いたドゥーレを前後から挟み込むようにして鉄球と鞭が襲う。 それを紙一重でしゃがみながらかわしたドゥーレは、床を強く蹴って一気に加速。

 

 雷閃の如き速さで一気に敵陣の中心まで突っ込んできたドゥーレを、近接武器を持った構成員たちが囲う。 しかしドゥーレが槍を横薙ぎにふり回すと、ドゥーレの槍に触れた武器が全て粉微塵に破壊された。 例外なく全て。

 

「なっ?」 「何が起きてやがる!」

 

 動揺した構成員の内二人が破壊された武器の残骸を見ながら声を上げる。 しかしその一瞬の隙がこの戦場では穴となる。

 

「武器を破壊されたらまず下がれ。 お前らはこの部隊に入ってから日が浅いのか?」

 

「……っ! ちくしょう!」 「うわぁぁぁぁぁ!」

 

 武器が破壊され、動揺していた二人の構成員が槍で貫かれる。 急所は外しているが一撃で昏倒するほどの大怪我だ。

 

 散らばっていた構成員たちはその光景を見て血の気のひいた顔をするが、すぐに陣形を変更する。

 

「そうだ、得体の知れない能力、触れたらまずい系統の能力だとわかった瞬間、前衛は間合いの一歩外で牽制。 攻撃は遠距離、中距離専門で攻める。 素晴らしい判断力だ」

 

 冷静な声音で相手に賞賛を送るドゥーレ。 しかしその賞賛は、自らの勝利を確信した余裕とも取れる。

 

「やっぱ純血は格がちげえな。 お前ら、油断すんなよ。 一人も死ぬんじゃねえぞ!」

 

「安心しろ、お前らを殺しはせん。 容赦はせんがな」

 

 ドゥーレが床を蹴った瞬間、巨斧と巨棍を持った二人の大男が牽制のために武器を大袈裟に振り抜くが、それすらも予測していたかのように身をそらして軽々と回避するドゥーレ。

 

 ブリッジのような体勢でかわしたかと思えば、そのままスピードを落とさずに両膝をつき、地面を滑るような体制で大男のうち一人に肉薄。 遠慮なく太ももから下を槍で切断して背後に回り、後ろで様子を伺っていた構成員の肩を貫いた。

 

 一瞬にして二人が脱落。 残りは九人。 前衛残りは巨棍を持った大男と長髪の男二人のみ。

 

 しかし時間が稼げたこともあり、遠距離組は高火力の攻撃で一気呵成に畳み掛ける。 その間に前衛二人はドゥーレから目を離さないよう離脱しようとしていたのだが、

 

「左翼! 分散しろ!」

 

 ドゥーレの足元を注視していた長髪の男が叫ぶように呼びかける。 しかし指示してからの行動では間に合わない。

 

「長髪の男以外は判断がとろいな。 それは戦場では命取りになるぞ」

 

 超高速で矢と弾丸の雨をひらりとくぐり抜けたドゥーレが、左翼から集中砲火していた遠距離組の懐に入り込む。 豪快に槍を一振りしただけで、一気に五人が宙を舞う。

 

 吹き飛ばされた全員が確実に反応していた、ドゥーレの槍を防ぐために各々の防具や武器をかざしていたはずだった。 しかし、その全てが紙っぺらのように破壊されてしまう。

 

「なんだよこりゃあ! 悪夢じゃねえか!」

 

 長髪の男が半ば投げやりに叫ぶ。

 

 怪で生み出す不思議な力には種類がある。

 

 時間、空間、自然、強化、創生の五種類だ。 この世界の人々はその内のどれかひとつに適性を持ち、その力を極めることで他には負けない唯一無二の力を得ることができる。

 

 力の種類には特殊な物もあり、その特殊な状態を反転という。 先ほどのメレクの能力無効化や、ドゥーレの能力は強化の反転。

 

 絶対崩壊——ドゥーレの怪に触れた物質を任意で選択し、確実に破壊する能力。 この能力の前ではガードは無意味。 そして、槍に怪を纏わせたドゥーレの攻撃は全てが一撃必殺。

 

 貫かれた空賊たちは間一髪で一命は取り留めているが、殺そうと思えば容易に殺せただろう。 ここまでの攻防は相手の命を取らないように手加減されている。

 

 そしてそのドゥーレの能力をさらに最強へと至らしめるのがシンシアの能力だ。

 

 自然の力を司った超音波。 風を振動させ、周囲の索敵をすることができる。

 

 この能力で分かるのは全方位どこに敵がいるのか、一体どんな体勢を取っているのか、筋肉や骨の動きで次の動きを予測できる。 さらには飛び交う遠距離攻撃の軌道も全て見透かしているのだ。

 

 目で見るよりもはっきりと相手の動き、攻撃、配置を理解することができる上、ドゥーレ自身に備わった圧倒的思考能力が彼の洗練された動きを可能にしている。 敵全体の動きを同時に掌握し、次の動きを予測して即実行。

 

 まるで未来が見えているかのように、降り注ぐ攻撃の雨を捌く。 大体の敵は攻撃が当たらない時点で絶望する。

 

「なかなかの部隊だったな。 最後はやはりお前か」

 

「ったく、割に合わねぇ仕事だぜ」

 

 最後に残っていた長髪の男に槍を向けていたドゥーレを見て、長髪の男は苦笑いを浮かべることしかできない。

 

 既に十三人もいた構成員全員が無惨に地に伏せており、全員重症でうめき声を上げながら昏倒していた。

 

 一人も殺さずに無力化していたが、その惨状は無慈悲と言ってもいいほど悲惨だった。

 

 抵抗せず、両手に構えていた光の剣を霧散させた長髪の男を遠慮なく薙ぎ払うドゥーレ。 壁に叩きつけられた長髪の男は腕や脇腹が変形しており、口から血を垂らしながら力無くその場に突っ伏した。

 

 吹き飛ばした男の状態を確認すらせず、目の前に電子映像を映し出すドゥーレ。

 

「三十分近くかかったか、こいつらはなぜ空賊などをしているのか、非常に惜しい人材だ。 まあいい。 罪は罪、受けるべき処遇はきっちりと受けてもらおう」

 

 無力化した空賊の拘束は後回しにし、ドゥーレはそそくさと飛空艇の操縦室へと向かって走り出した。

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