第9話 一緒に遊んでもらったらいいのに
『警告。ダンジョン内に侵入生物です』
よし、来たな。
システムの知らせに、俺は心の中で頷く。
「ぷぅ!」
しばらくすると、一匹のアンゴラージがこっちに走ってきた。
「グギャギャギャギャ!」
その後を追いかけてくるのは、またしても一体のゴブリンである。
ゴブリンはそのままこちらに襲いかかってきたが、
「アズ」
「燃え尽きなさい」
「ギャギャアアアアアアアッ!?」
アズが放った炎がゴブリンを焼き殺す。
――【穴掘士】がレベル2になりました。
――スキル〈穴戦士〉を獲得しました。
「ん? 今また何か声が聞こえたような? システムかな?」
『いいえ、違います』
「じゃあ何だろう? ……まぁいいか。それより、上手くいったな」
「ぷぅ!」
俺が思いついたアイデアというのはこうだ。
外に出ることが可能なアンゴラージたちが、ダンジョンの周辺を探索。
そこで敵の魔物を発見すると、挑発し、ダンジョン内へと誘い込む。
そしてここまで誘導し、アズが魔法で攻撃して撃破する。
「アンゴラージは何体もいるんだし、このやり方ならポイントを稼ぐのも難しくないはずだ」
「あたしの負担が重くないかしら!?」
「ダンジョンマスターとして、配下に戦わせるのは当然なんだろ?」
「うぅ……」
そんなやり取りをしていると、再びシステムによる警告。
別のアンゴラージが戻ってきて、その背後に今度はオークだ。
身長180センチくらいあり、身体もがっしりしている。
ゴブリンよりも明らかに強敵だ。
「アズ、オークでも問題ないか?」
「余裕よ! むしろ大きい分、狙いやすいわ」
アズが宣言通り、攻撃魔法をオークに直撃させる。
「ブヒイイイイイッ!?」
焼き豚になったオークが倒れ込んだ。
こうしてアンゴラージたちとアズの活躍によりポイントが貯まってきたので、俺は新たに魔物Bを作成してみることに。
10ポイントが必要なので、きっとアンゴラージよりも幾らか強い魔物だろう。
外壁にお尻の方から生えてきて、現れたのは――
「わうわうわう!」
可愛らしいモフモフの犬だった。
『ポメラハウンドです』
「完全にちょっと大きいポメラニアンだな」
ポメラハウンドは甘えるように俺の腰に飛びついてくる。
「わうわうわう!」
「お~、よしよしよし」
「わう~ん!」
モフモフの顔をわしゃわしゃしてやると、尻尾を振りまくって喜ぶポメラハウンド。
「何でこんな魔物ばかりなのよっ!?」
「まぁいいじゃないか。可愛いんだから」
「全然よくない!」
「わう?」
俺はポメラハウンドをけしかける。
「あのお姉ちゃんが遊んでくれるって」
「わう~~~~ん!」
ポメラハウンドは嬉しそうにアズに突進していった。
やはり犬だけあって人懐っこいようだ。
「わうわうわう!」
「ちょっ、あたしはあんたなんか認めないんだからっ!?」
「わうわうわうーん!」
「そ、そんなに甘えてきたって無駄よ……っ!」
モフモフ犬の魅力に早くも敗北を喫しそうなアズを余所に、俺はポイントを気にせず使ってポメラハウンドを量産していく。
ダンジョンのレベルを上げるには、ポイントを消費する必要があるからな。
「「「「「「わうわうわうわうわうわうわうっ!」」」」」」
二十匹くらい作ると、見渡す限り犬だらけになってしまった。
「お座り!」
「「「「「「わう!」」」」」」
「お手!」
「「「「「「わう!」」」」」」
「ちんちん!」
「「「「「「わう!」」」」」」
おお、すごい。
何も教えていないのに、一発で俺の言うことを聞いたぞ。
『作り出した魔物は、ある程度ダンジョンマスターの意のままに動かすことが可能です』
「アンゴラージたちはこんな芸まではできなかったけど?」
『魔物の知能に準じます』
「なるほど。犬だけあって少し賢いってことか」
ところでうさぎと犬、ちゃんと仲良くできるのだろうか?
特にアンゴラージの方が、ポメラハウンドに怯えてしまうかもしれない。
うさぎって繊細だからな。
……という懸念は、杞憂だった。
「「「「「「ぷぅぷぅぷぅ」」」」」」
「「「「「「わんわんわん」」」」」」
お互いじゃれ合ったり、洞窟内を駆けっこしたりと、種族の垣根など関係なく遊んでくれている。
見ていて癒される光景だ。
「こ、これがダンジョン……違うわ……こんなの、あたしが思い描いていたダンジョンじゃない……」
一方、アズは相変わらず可愛い魔物たちと距離を取っている。
「素直になって、一緒に遊んでもらったらいいのに」
「結構よ!」
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