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第110話 必ず生きて帰ってこなければ

 王女セレスティアの下に寄せられた報告は、アンデッド討伐の吉報だけではなかった。

 そして残念ながらそちらは凶報だった。


「モルガネの冒険者たちが、都市のすぐ近くに謎のダンジョンを発見……? さらにその入り口が消えてなくなってしまった……?」


 王都に次ぐ、王国第二位の都市モルガネ。

 そこで活動していた冒険者パーティが、都市からほんの数十分ほどの距離のところで、未知の洞窟を見つけ、中に足を踏み入れてみたという。


 とても自然にできた洞窟とは思えず、未発見のダンジョンではないかと考えながら奥に進んでいくと、凶悪な魔物に遭遇したらしい。


「彼らはBランクの実力派パーティ。にもかかわらず、その魔物にまったく歯が立たず、すぐに撤退したそうです」


 それだけならまだよかった。

 都市のすぐ近くという懸念はあるものの、新しいダンジョンが出現すること自体は珍しいことではない。


「問題はその報告を受けたギルドが、後日、改めてそのダンジョンを調査しようとしたところ、どこにもその入り口が見当たらなかったというのです。発見した冒険者パーティも確認したようですが、やはり見つからず、首を傾げるばかりだったそうです」

「……突然現れ、そして忽然と消えてしまうダンジョン……まるでまったく同じ報告を受けているかのようですね……」


 彼女が知る限り、これで三度目だ。

 ダンジョンの出入り口は一般的に、現れたり消えたりすることはない。


 過去にほんの数例だけ、記録がある程度だ。

 それも信憑性の低いものばかり。


「そんなダンジョンが、急に幾つも……? いえ、それとも、まさか……すべてが繋がっている、一つのダンジョン……?」


 二つの例はどちらも王都近くなので、あり得ない話ではない。

 しかしモルガネはここから百キロ以上も離れている。


「もし同じダンジョンだとしたら……全長が少なくとも百キロ以上……?」


 信じがたい話に、セレスティアは戦慄を覚えるのだった。


「……頭を抱えたくなるような話ばかりですね。希望があるとすれば、勇者様の存在……だというのに」


 大きな溜息を吐くセレスティア。

 実は近いうちに、重大な任務に赴かなければならないのだ。


 それも下手をすれば、命を落としかねない危険な任務である。


「必ず生きて帰ってこなければ……勇者様方のためにも、この国のためにも……」




    ◇ ◇ ◇




 その日、俺は金ちゃんに彼の執務室に呼び出されていた。


「忙しいところ、すまぬでござるな、丸夫殿」

「いや、金ちゃんと比べればのんびりしてるぞ? それより鉱石はどうだ?」

「宝石にできそうなのは加工して、ジュエリーにして売りに出しているでござるよ。この辺りではそう簡単には手に入らない品質らしく、こんな輝きは見たことないと顧客に絶賛されているでござる」


 食材を売って寿司屋も経営して、その上、ジュエリーまで売り始めたとなると、もはや何の店か分からない。


「モルガネでの商売も順調でござるよ。それもこれも、丸夫殿のお陰でござる」


 なんだか今日はやけに俺を持ち上げてくるなと思っていると、


「それで一つ、お願いがあるのでござるが」

「何だ?」

「今、うちの従業員の中で、仕入れの秘密を知っているのは拙者を除けばメレン殿だけでござる。ただ今後、さらに事業を拡大していこうと考えれば、せめてうちの幹部たちにも伝えておきたいのでござるよ」

「……なるほど」


 確かに幹部に隠し通したまま、事業を広げていくのは難しいだろう。


「けど、メレンさんみたいな魔法契約は結べないんだろ?」

「そうなのでござる」


 メレンさんは金ちゃんの奴隷だ。

 奴隷だから強い魔法契約が結べ、内部情報を外に漏らさないようにすることができる。


 だが普通の従業員となると、そういうわけにもいかない。

 もちろん守秘義務はあるが、それを守ってくれるとは限らない。


「もっとも、拙者はある程度、信頼できる人間かどうかを見抜けるでござる。なのでライバル商会のスパイを、あえて泳がせたりもしているでござるが……実はそんな相手を、こちらの味方にする方法があるでござるよ」


 そう言いながら、金ちゃんはニヤリと笑った。


 ……一体どんな方法だろうか?

 こんな感じながら金ちゃん、意外と腹黒いところがあるからなぁ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 商店と寿司屋を同じ店でやってたのか・・・ イオンのフードコートが寿司屋になってて ジュエリーショップも開店したと考えたらワンチャン成立するか? 仕入れ元のダミー商会作るかと思ったけど 仕入…
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