秀才令嬢は絶対の絶対に平民上がりの天才魔法使いに負けたくない!
一応異世界恋愛ジャンルにしてますが、恋愛はしてません。ざまぁはあります。
それでも許せる方のみどうぞ。
「ぐぬぅ、負けませんわよ……!」
侯爵令嬢エリシア・ドレメイクは歯噛みしていた。
エリシアは金髪碧眼の誰もが認める美人、そして魔法から勉強なんでもござれの成績優秀者。しかしその裏には思い出すのも嫌になるくらいの努力の数々がある。
だからエリシアは彼女が許せないのだ。
このところ貴族学園に入学した平民上がりの少女、ジェン。
彼女は元々普通の街娘だったが、平民にしては珍しい魔法の才が認められ、とある子爵家の養女になって貴族学園に入学したという特別な過去を持っている。
ジェンは本当に魔法の天才だった。あらゆる属性の魔法が簡単に使え、初めてだというのに思い通りに操れてしまうのだ。授業の時それを見たエリシアは絶句した。
――私が何年もかけてようやく使えた魔法を、たったの三分で習得するなんて!
それからエリシアは、ジェンへ対抗心を燃やすようになった。
ジェンより上等で洗練された魔法を作ってやる……! プライドが人一倍高いエリシアは平民上がりになんて負けてやるものかと奮闘し始めた。
今までは皆、エリシアをすごいすごいと褒め称えていた。
だが、ジェンが来るなりその評判は逆転する。
何をしてもジェンの方が上なのだ。
魔法はもちろん、さらには美貌までエリシアと比べられるレベルだった。エリシアが美人系ならジェンは可愛い系統に当たる。当然のようにエリシアの婚約者はジェンに靡いた。
それでもエリシアはただひたすら実力を磨き続ける。
正直言って婚約者はどうでも良かった。ただジェンに勝ちたい、その一心で。
授業でジェンが誉められる度に唇を噛み、年に一度学園で開かれる『魔法大会』であっさり負けて涙を流しながらも、エリシアは諦めなかった。
そして――。
「エリシア・ドレメイク!! 君との婚約を破棄する!」
「ごめんなさい、エリシア様。わたし、この人のことを愛してしまったの」
とある夜会でそんな馬鹿げた宣言がされた時、その努力は実った。
エリシアの全身から迸る魔法が婚約者へまっすぐ向かい、一瞬でその体を業火で炙り、かと思えば氷結させてしまう。
それを一瞬で行った彼女は婚約者の傍に寄り添っていたジェンへとにっこり微笑み、高らかに叫んだ。
「勝ちましたわ! 私、あなたに勝ちましたのよ!!! ざまぁ見ろですわ! 努力を舐めるなッ!」
唖然とするジェンへ、エリシアは再び魔法を放つ。
直後、避け切れなかったジェンの体が粉々になり……会場は阿鼻叫喚の地獄と化したのだった。