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注文のうるさいライスカレー

作者: jima

 注釈の多い話です。読みにくいけどだんだん慣れるのでよろしくお願いします。複数の会話劇は誰が何を言ってるのか、うまく書けないことが多くて苦労します。

「当然パウンドフォーパウンドは日本の猪上(*1)ということじゃないですか」

 山口がグラスを持ちながら若干興奮している。


「しかしクラフォード(*2)がPFPというのは世界の共通認識じゃないですかね」

 河田は野菜炒めを一口頬張った。カウンター越しにマスターの田辺が口を挟む。

「いやいや、今現在はウサク(*3)という声が。リング誌(*4)でもそうなってますし」




*1 猪上尚也…日本の誇るバンタム級の三団体統一王者。日本人初のPFP1位を獲得。


*2 パレンス・クラフォード…ライト級世界チャンピオン。左右どちらでも戦える超絶技巧派スイッチパンチャー。


*3 オレクサンバル・ウサク…ウクライナ出身のヘビー級王者。圧倒的なパンチ力でKOの山を築く


*4 リング誌…100年の歴史と権威を持つアメリカのボクシング専門誌。リング誌が決めるPFPランキングは世界のボクシングファンに大きな影響力と話題を与える。




 要するにここバー『サウスポー』でボクシングのパウンドフォーパウンド、最強は誰かという話をしているのだ。ボクシングファンなら誰しも月に何度かやっている会話であろう。

 ただし今日はここに『何にでも一家言ある』と評判の村崎が加わっている。でっぷり太った腹とにこやかな笑顔が印象的な男だ。その村崎をここに招いたのはこのバーの常連山口である。


「僕の会社の御意見番、困ったことがあったら村崎商店(*5)、と言われている村崎部長だ。今夜はゲストコメンテーター(*6)としてお呼びした」




*5 村崎商店…村崎の会社での愛称。蔑称の噂もある。『どんな話題でも受け付けます』のような意味らしい。何か太った腹が商店の親父風なのかも。 


*6 ゲストコメンテーター…本来であればある特定の話題に関して高い見識を持ち、難解な要素や様々な視点などについて一般向けの解説をするために招聘された人物のこと。ただし日本のテレビ番組ではそういった知識や意識は不要。




 村崎が苦笑してひょいと会釈する。

「はははは、そんなたいしたもんじゃありません。ただのへそ曲がりで何にでも文句をつけるので物好きな人たちに面白がられているただのデブですよ」


 河田もマスターの田辺も笑顔で頭を下げ、グラスを差し出す。

「では僕たちの議論に新たな風を吹かせてくれると、そういうことですね」と河田。

「どうぞ、一杯奢りますよ」と田辺。


 村崎はカチリとグラスをあわせ、ニコニコしている。

「では早速…」

「おっ、早くもPFPへの意見ですか」

「ワハハ、違いますよ。マスター、ポテトサラダ(*7)をください。それと生中(*8)のおかわり」

「はい。承りました」


 河田は自分の野菜炒め(*9)を、山口も食欲を刺激されたのかチーズ春巻き(*10)を注文した。




*7 ポテトサラダ…広義ではジャガイモを使ったサラダのこと。狭義においてはジャガイモは男爵、キューリ、ハムを使用のこと。クリーム入れたりするおしゃれ系もあるらしいけど鼻につくよね。マヨネーズは少なめの方がおいしい(と思う)。


*8 生中…生ビール中ジョッキの略称。中生って言う人いるけど、あれは間違ってる。


*9 野菜炒め…美味しい。豚肉も入っていてよいけれど、むしろ少しでいい。


*10 チーズ春巻き…ただの春巻きでいいのに居酒屋ではこれだけ置いているところも多い。これにもチーズあれにもチーズ、ああ、嘆かわしい。 




「でね、皆さんはPFPというものをどう理解されていますか?」


 村崎の問いに河田が何を今さら、という顔で答える。

「全階級(*11)のチャンピオンが同体重だったら誰が最強か、という議論です」


 山口も頷く。

「もちろんこれまでの戦績や勝ってきた相手なんか、つまり実績も重視されますよね」


 村崎が二重顎で大きく頷き、それから出てきた生ビールをぐいぐいと飲んだ。

「想像してください。猪上チャンピオンが100㎏を越えた姿を。あるいはライトフライ級(*12)のウサクを」


 田辺がポテトサラダを村崎に出しながら、苦笑いをする。

「そこを無視して、というか体重は考えないで、というのがPFPなんじゃないですかね」

「そこがそもそもの間違いなんです。ウサクだって軽量級のウェイトであんなパンチは打てないでしょうし、今の倍の体重になった猪上に今のスピードで動けと言ったって無理でしょう」


「そりゃそうですけど」

「極端なことを言えば軽量級のボクシングと重量級のボクシングでは違うカテゴリーのスポーツといってもいいんです。野球とサッカーでどっちが強いか(*13)っていうようなものです」 




*11 全階級…プロボクシングは一般的に男子17階級、女子は18階級。1743年初めてヘビー級とライト級に分けられて以来、どんどん細分化された。安全面への配慮と興行的にたくさんのチャンピオンが必要だったため。


*12 ライトフライ級…48.97キロ以下の階級。この下に47.62キロ以下のミニマム級がありこれが男子の最軽量。

 某ベース○ールマガジン社の世界ボクシングパーフェクトガイド2022によるとこの軽量級2階級での実力ランキング8人中5人が日本人、反面重い階級ではミドル級邨田とスーパーフェザー級小河が敗北してしまい、これでバンタムの猪上チャンピオンまで日本人の名前が見つからなくなった。

 アメリカでの人気階級は依然として中量級以上であり、ちょっと残念。仕方ないと言えばそれまでだが。 


*13 野球とサッカーどちらが強い…あきらかに凶器になりそうな道具が多い野球優勢とみる。




 村崎の言葉に田辺が笑いながら反論する。

「いや、だから架空の話なんですよ。ファンはそれを踏まえながら、なおかつどちらが勝つかという話で盛り上がるんです」

「野球とサッカーのたとえはあまり適当でなかったな。戦車とフェラーリ(*14)、どっちがいい車?ってそんな話です」

「ますます解りにくい」


 山口が笑いながらグレープフルーツサワー(*15)を注文した。河田も笑う。

「僕はわかりますよ。攻撃力があるのは戦車、速いのはフェラーリ、比較のポイントが違うってことですよね」


 田辺が河田に野菜炒めを、山口に春巻きを渡しながら首をひねる。

「でもそれならすごいスピードで走る戦車と強力な砲台を持つフェラーリのどっちがいい車ってことで話は成り立つでしょう?」


 村崎がポテトサラダの最後の一口を頬張って笑った。

「それだともう好きなのどっちってことだけでしょう。私ちなみに戦車押しですが。このポテサラうまいですね。次はこのカマンベールのアヒージョ(*16)ください」




*14 フェラーリ…イタリアの高級スポーツカーメイカー。2022年の市販ではたぶん296GTSが4500万円台で最高価格。

 オークション価格では2018年、1963年型のGTOが89億円超で落札され当時の世界記録となったが、2022年、サザビーズのオークションでメルセデス・ベンツ300SLR ウーレンハウトクーペが182億円でこれを破った。個人的には馬鹿みたいだと思う。


*15 グレープフルーツサワー…焼酎と炭酸水、グレープフルーツによって作られる。チャラチャラしたクラブとかで頼むと薄いジュースみたいのが出てきて詐欺だと感じる。


*16 アヒージョ…スペイン南部の伝統的な小皿料理。出すとこ多くなった。このあいだ回転寿司屋でメニューにあった。連れの女の子に注文させるのが好き。何かいやらしくないですか。





 田辺が笑顔で注文を受けた。山口は面白そうな顔で質問した。

「じゃあ、村崎さん、ボクサーとプロレスラーのどっちが強いなんてのも比較できない話ということになりますか?」

「それはどういうルールで戦うかによるでしょうね」


 村崎が答えると河田が野菜炒めを頬張りながら口をはさむ。

「そりゃ『何でもあり』の路上ルールでしょう。それしかないですよね」


 田辺が山口にグレープフルーツサワーを渡す。

「路上の闘い、何でもありなら流行りのMMA(*17)ルールですね」


 村崎は片方の眉をピクリと動かす。三段の腹もゆらりと揺れた。

「UFC(*18)は何でもありじゃないでしょう」


 山口が口に入れた春巻きをサワーで飲みこむ。

「そうですよね。頭突き(*19)は禁止でしたっけ」





*17 MMA…Mixed Martial Artsの略。日本語では総合格闘技と訳されることが多い。


*18 UFC…世界最大の総合格闘技団体 Ultimate Fighting Championshipの略。PRIDEを応援していた人間からすると今の隆盛ぶりは忸怩たる思いあり。


*19 頭突き…自分の頭を相手に叩き込む攻撃。人間の体の中でも重く硬い前頭部は大きな破壊力を持つ。事故が起こりやすいためほとんどの格闘技で禁止されている。

 プロレスラー、ハリー・レイスのダイビングヘッドバットは実際に見るとなんだろう、受けるのを待ってマットで寝転んでいる人間がアホのように見えるときがある。





 村崎が首を振った。

「頭突きが禁止とか、それどころじゃありません。まず武器が使えない」


 河田がビールを吹き出しそうになる。

「武器が使えないって当たり前じゃないですか」

「武器の使用可ってなったら、格闘技とは言えないでしょう」と山口。


 村崎は動じない。

「その時点で何でもあり、とは言えないですよね。まず体重は無差別でない。1対1の闘いである。ケージの中で勝負をつける。レフェリーが試合を止める。…どれも路上では考えられないでしょう」


 村崎は平然とした顔で続ける。

「そもそもあのルールはUFCのルールです。あくまであそこのチャンピオンはほぼ同体重で厳密に決められたルールによって決められたチャンピオンです」


「街で歩いている時は一人とは限らない。場合によっては多対多の闘いになるんじゃないですか。少なくとも僕だったら近くの友人に助太刀をお願いする。ということは友人にたくさん強い奴がいると有利です。時間があれば電話で呼ぶこともできますし。それから…そう、道に落ちてるレンガ(*20)とかがあったら当然それを武器として使いますよね」


 田辺が渋々同意した。

「最近道にレンガが落ちてるかどうかはわかりませんけど、確かにどんなルールであっても路上のケンカとは違いますね」 


 村崎がにっこり笑う。

「でしょう。じゃあどんなルールなら公平かというと、それも難しい。例えば、例えばですよ。場所一つとってもトイレくらいの大きさの個室で戦うとしたら力士(*21)とか相当強そうですよね」


 山口が春巻きを食べ終え、エリンギバター(*22)を注文しながら感心する。





*20 レンガ…ア○ゾンで調べたら10個で3000円くらいだった。安いのか高いのか。


*21 力士…一般的には相撲を取る人のこと。正確には日本相撲協会認定の相撲部屋に所属して四股名を持ち、番付に関わらず大相撲の興業に参加する選手のこと。一説にはあの体型は太っているのではなく「筋肉質の肥満体」と称される。

 70㎏くらいの新弟子でも2~3年で150㎏を越えたりするが、これは改造人間みたいだ。外国人力士の活躍が目立って久しいが、黒人の力士は後述の戦闘竜以外、記憶の限りほぼいない。腰高の体型・縮毛の問題などがあげられるが、たぶん強すぎるから入門させないという噂もある。

 ちなみに戦闘竜は総合格闘技でも活躍した力士で、唯一の米国出身、唯一の黒人力士である。十両に昇進した時、化粧まわしに『こち亀』の両さんが描かれていて和んだ。


*22 エリンギバター…ちょっと前にこれを注文した上司に『アワビの代用品として食べているのだ』と言われた。次に『目をつぶって食べてみろ』と言われ、さらに『な、アワビだろ』と言われ辟易した。どう食べようが目をつぶろうが、上司が念を押そうがエリンギをバターで炒めた味であった。




「なるほど、せまい場所だったらあの体重と張り手で勝負がつくかもしれませんね」

 村崎がアヒージョを受け取って一口食べ、あまりの熱さに息を吐いた。本人が力士のようだ。


「ハヒハヒ、そうでしょ。逆にどこまでも何にもない草原での対戦でしたら、力士はきつい。陸上の近代5種選手(*23)とかが強いかもしれません。ハヒ」


 河田が眼を瞬かせて訊ねる。

「陸上の選手?」


 村崎はアヒージョのムール貝(*24)を殻から外し、おしぼりで手を拭いながら微笑む。

「捕まらないようにずっと逃げてればいいんです。そして相手が隙を見せたら石を投げたりして嫌がらせして、常に遠くから監視するわけです。辛抱強く見張って相手が眠ったところでとどめを刺しに行きます」


 山口が大笑いしてサワーのおかわりを注文した。

「ワハハハハ、なるほど。逃げてるのが反則じゃなければ追いつかれない限り負けませんものね」


 河田も笑って食べ終わった野菜炒めの皿を田辺に渡し、替わりにアボカド(*25)の生ハム巻きと芋焼酎のお湯割りを注文した。





*23 近代5種…フェンシング、水泳、馬術、ランニング、射撃を一日の内に行う競技。「キング・オブ・スポーツ」なんだって。馬術で使う馬は抽選なんだって。日本の競技人口50人くらいなんだって。どうなんだろうなあ。


*24 ムール貝…食用の2枚貝。うちの奥さんが苦手なのでアヒージョとかパエリアとかオーダーすると嫌な顔をする。むしろそれが快感で注文することが多い。


*25 アボカド…つい最近までアボガドだと思っていた。





「フフフ、ダッシュ力もあり、長い距離を走っても速く、投擲が正確で我慢強い…というような感じですか?」

「そうですね。野外で闘うのなら投石は有力な武器でしょう」


 村崎の言葉に田辺が苦笑いをして、山口にサワーのおかわりを差し出す。

「山口さん、どうぞ。でも村崎さん、この話の方向だと結局強力な武器を持ってる奴が最強、ってなりませんか」

「そうです。日本だったら、自衛官ということになりますか」


 事もなげに村崎が断言して、山口・河田・田辺の三人とも笑い転げた。

「すごい。さすが村崎商店」「まさかそうなるとは」「でも説得力あるなあ」


 村崎は鼻と二重顎と三段腹をピクピクさせて続ける。

「しかしですよ。自衛隊(*26)でも陸海空、どこが最強だと思いますか?」


 河田が芋焼酎に口をつけ、荒い息を吐き出して答える。

「そりゃ、今は空じゃないんですか。海外の紛争なんか聞くと制空権というのをよく聞きますよ」

「いいえ、あくまで私個人の意見ですが間違いなく海上自衛隊です」


 村崎が即断言するので田辺が笑い、エリンギバターとアボカドを出す。

「はは、私は全然わからないのですが、何か根拠があるんでしょうね。何でも注釈をつける村崎商店の村崎さん」


「陸自の第1空挺団(*27)とか空自だったらアグレッサー(*28)とか最強を名乗る部隊は数ありますが、私が最強と思っているのは海自の潜水艦部隊です」

「また何だかマイナーな話だなあ」

 河田が言うと村崎はニヤリと笑う。





*26 自衛隊…日本の平和と独立を守る部隊および機関。合憲違憲はともかく最近の災害時の活躍を見聞するにつけ感謝しかありません。村崎商店ごときが酒場の話題にするとは笑止千万。


*27 第1空挺団…陸自の最強戦力として名高い。いかなる犠牲を払おうとも最後の一員になるまで任務の達成に邁進するという。別名『第1狂っている団』だそうで筆者が言ってるわけでなく、他の隊員からも言われてるそうで恐ろしい話である。


*28 アグレッサー…空自の飛行教導群または仮想敵機部隊といわれる。空自の中でも特に傑出した技量を持つパイロットが配属され、各地を巡回し戦闘指導を行っている。部隊マークはコブラで『一撃必殺』を意味し、フライトスーツのドクロは『やられたらこうなる運命』だそうだ。何かいちいち格好いいのだった。





「先程の陸上選手の話、覚えてますか?」

「ああ、逃げるのがうまいやつ最強、って話ですよね」

「そうです。海自の最新型潜水艦『たいげい』は潜行能力が1000メートルを越えると言われています」

「…」


 3人が黙ってしまったので、村崎はさらに力説する。

「他の潜水艦の能力はだいたい400メートル(*29)が限界です。そして静かで長持ち、しかも潜水艦の設計を出来る国というのは本当に少ないのです」


「つまり、どういうことですか?」

「敵がいない、ということです。場所の特定も難しいし、わかったところでその場所への攻撃手段がないのです」


「なるほど。さっきの無限フィールドに隠れていてチャンスを見て攻撃する、と言う…」

「そうです。絶対に負けません」


 呆れたように田辺が村崎を見た。

「村崎さん、ということは海自の潜水艦乗りが最強、ということでいいんですか?」

「いいえ、最強は海軍カレー(*30)です」


 あまりのことに山口がエリンギを口から落として、村崎を問い詰める。

「もう意味がわかりません。PFPでもなく格闘技のジャンルでもなく、すでに人物でもないじゃないですか」

 村崎はアヒージョの残ったオイルを意地汚くバゲット(*31)ですくい取り頬張った。





*29 潜水艦の能力は400メートル…原子力潜水艦ならこの限りではない。彼は意図的に米軍やロシア軍を無視している。こういう論法は乱暴である。


*30 海軍カレー…今でも伝統的に海自で作られ続けているという。一度は食べてみたい。まあ、こういうのは憧れているうちがいいんであって、実際食べてみると意外と普通のカレーかもしれないね。


*31 バゲット…フランスパンの種類。短いものをバタールという。バゲットは65㎝から70㎝くらいはあるもの。アヒージョの残りオリーブオイルは美味しいから少しくらいはいいけど、やたら吸い取って全部舐めたりしたら健康によくないし、見た目もよくないよ、村崎は特に。





「なんだかうるさいな(*32)。原子力潜水艦は日本にないんだからいいじゃないですか。オイルも全部食べた方が作ってくれた人の誠意に応えることになるのだ」





*32 なんだかうるさいな…本文が注釈に文句をつけるのは前代未聞である。





「…ムグムグ、えっとですね。海自の特に潜水艦乗りはずっと狭い空間で長い時間勤務を続けるので曜日感覚がなくなるんだそうです」

「ああ、聞いたことがあります。それで毎週金曜日にカレーを食べる(*33)んでしたね」





*33 金曜日にカレー…俗説だそうである。





「…この前テレビでも言ってたぞ!」


 村崎が怒鳴ると田辺が不思議そうな顔で言う。

「どうしたんですか。さっきから何か挙動不審ですよ。


「…いや、何でもありません。えっと、そうです。ある自衛艦に聞いたのですが『海軍カレーは最強!』だそうです。どうです。最強の自衛官が最強と認めているのです。カレーが最強です。あ、締めにカレー(*34)食べたいな。ありますか?」





*34 締めにカレー…最悪である。





「勝手だろうが!やたら絡むな!」


 田辺がびくりと笑顔を震わせる。

「えっ、何か悪いこと言いましたか。カレーならありますけど」


 何故か村崎の機嫌が悪くなっていて、田辺がビクビクしている。

「いや、申し訳ない。小盛でいい(*35)ので頼みます」

「うちのカレーはスパイスを効かせた辛いカレーですがいいですか?」

「もちろん。辛いほど最強(*36)です」





*35 小盛でいい *36 辛いほど最強 …結局食べるのであった。このためにカレー=最強論に引っ張っていったように思える。ちなみにどんなに辛くてもカロリーが減るわけではない。

 発汗作用が強くなるので罪悪感が軽減されるだけである。




「…」

 村崎が田辺に半分ベソをかいて聞く。

「締めのカレーって最強で最悪ですかね?」 


 

 どうでしょう。アイデアは悪くないと思うのですが、注釈と本文のケンカがうまく機能したでしょうか。また推敲したりしたいと思います。

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