1-6 忌人
話が伸びているので1章完結は15ぐらいになりそうです。
盗品がないかチェックをし、
当初の予定通りアンリの休憩も兼ねて
顔にべったりついたブラットペイントを落とすのも兼ねて
とっ捕まえた奇襲犯と共に湖にやって来た。
荷台は目の届く木陰にとりあえず置いている。
もちろん、所持していた武器は没収している。
「アンリ?私の顔に傷出来てませんか?」
湖の水で洗顔をしつつ念の為に確認を取る
「あぁ?おまえが傷いてる姿なんてみたことないんだがぁ?」
と言いつつも、顔を見渡してるで確認してくれてるのだろ。
性格はドガってるところ多いいけど
なんやかんやで優しい一面はあるんだよなぁ
いつもこうならいいのに
「そうですか、良かったです。」
「んでよぉ、こいつらどうするのさ?」
荷台に入ってあった商品であろう縄で
手足首を縛って正座で座らせてる2人は沈黙を貫いてるのか
先程の出来事がトラウマになっているのかずっと黙って俯いている。
フードを深く被り表情こそ見えないけど
身長の小さいほうからはヒクヒクとすすり泣くのが
度々、聞こえてくるのが少しだけ心苦しい。
「知ってると思いますけど、私は尋問は下手ですよ?」
悲しいかな、コミュニケーション能力上昇までは
流石の神も授けてくれなかったみたいで……。
「そんなん知ってる…言うてあたしも得意じゃねぇしなぁ?拷問でもするかぁ?そっちは得意だぞ?」
ケラケラ笑いながら言うんだからタチが悪い。
「わ、わたしはどうなっても良いけど、この子だけはやめてあげて!!」
「お、おねえちゃ……だ、だめ…」
「何言ってるの!?この状況を作ったのはわたしなんだから…それにもうタダじゃ済まされないだろうし…。」
「うっ…うっ…」
何この状況…圧倒的悪役じゃん…
でも、今の私はそんなコトで同情なんてしないぞ?
なにせ(個人的には)完璧な美貌の
顔に弾丸を叩きつけてきたからな!?
防衛スキルに加えて頑丈と言えど痛覚は通っているワケで意識が何回飛びそうになったことか
それに殺人を犯してまでも強奪をしようとする輩なんてろくなやつでないのは確かである。
「とりあえず、フード取りましょうか」
「そぅだな」
ブラットペイントにより
少し汚れている緑柄のフードを取り顔を拝見すると
大きな目、エメラルドみたいな透き通った緑色の瞳
太陽も反射させるような金色の長い髪が後ろでヘアゴムでまとめられポニーテールになっている。
敵意を表しており、顔にシワが寄っているが
素の表情はとても綺麗なんだろうと印象を受ける
小柄の方は、体型通り幼く童顔である。
太陽も飲み込んでしまうような漆黒の黒色で肩にギリギリ届かないぐらいのショートヘア
本来綺麗であろう緑色の目は赤くなり涙をこぼしている
また、鼻水を垂らしているのでいろいろ台無しである。
ついでに、漏らした関係で匂いもちょっとキツイ。
しかし、そんなコトもどうでも良くなるような
衝撃の事実に私はしばらく言葉を失うのであった
2人とも、とても長く尖った耳をしていた。
「エルフですか?初めてみました…」
まじまじと見ていると
フンッ!と機嫌悪そうに顔を背けられる。
「えっ!?気がついてなかったのかよぉ?銃扱える種族なんてエルフだけだろぉ?」
何その新情報!!
初耳なんですけど!?
エルフに銃兵器とかロマンじゃないか!?
「エルフって弓なんじゃないんですか?」
少なからず、私の地球にあった作品ではそういうのに溢れかえっていた記憶がある。
風を操り狙撃が凄く上手くジャンプ力が高かったり飛んだりして獲物を捉えてるイメージ。
冷静に考えるとこの魔法蔓延る世界に銃兵器って有りなのか?
「そんなん知らねぇよ。気になるなら本人達に聞けよ…。それよりもっと突っ込むところあるんじゃないのか?」
「え?なんですか?」
こいつマジ!?って顔でこっち見るのやめろ
この世界の常識なんぞ知らんし知りたくもない。
「はぁ…その黒髪の方、貴重なエルフの忌人だろぉ?」
忌人って言葉を聞いた瞬間にビクッと2人の体が反応するのがわかった。
まぁ、言葉通り良い意味ではないんだろうけど
「貴重?忌人ってなんですか?」
「はぁ?」「っえ!?」「…ぇ?」
少し空気が凍った気がする
3人全員反応して驚いた顔をしているけどそんな常識的なコトだったの?
「お前さぁ…そんなんで1等級になれるって逆にすげぇなぁ?
まぁ、いいや。忌子ってのはエルフの男だよ男」
頭をポリポリかきながら気だるそうに答えるアンリ
「そっかぁ男の子かぁ……えっ!?男!?
男子?男の子!?!?こんなに可愛いのに!?」
「エルフってのは基本的には人間と交流したがらないからそもそもが貴重な存在だろぉ?
その中でもエルフの男ってのは重宝する存在で全然いないらしい。
幼い時期は、黒髪で女々しい姿をしているってのは本当だったみたいだなぁ。
しかも、成長速度が遅いから子作りするための準備期間も長いときた。
成人してもよぉ、体に蓄えてる魔力の性質が人間と全然違うからその関係から人間との間にはそうそう子どもなんて出来ねぇらしいしなぁ。
なによぉり!!成人すると誰もが心を奪われるイケメンになるって言う噂だ!!!!
そんな自然体で誘惑してくるようなおっかない存在だから、人間からは厄人って言われてるワケ?わかったかぁ?」
早口の説明ありがとうございました。
タダでさえ男が少なくなっていて
性欲まみれな女達に超絶イケメンで
子どもが出来ない男が現れるってなると確かに考えるものがあるよなぁ。
エルフの男性からしたら人間の女性こそ厄災だろうに。
基本的には人間の前に姿を表さないのも納得ができる。
「ちょ、ちょっと!!エルのコトを悪く言うのはやめて!!」
「あぁ?なんだよ?…あぁなるほど!!確かそいつからお姉ちゃんとか言われてたな!?
エルフの男子の初めては家族間で行うって噂は本当なのか!?
つまり、お前は夜の相手がいなくなるのが不安なんだろぅ?
うん、相手がいなくなるのは寂しいもんな!!あぁ!あたしも一度エルフとやりてぇ!!」
後半になるに連れて本音がどんどん出て言った気がするのだが?
あと、自分の知識からかけ離れたエルフの変な情報入れるのやめて貰っていいですか?
「な、なによそのデタラメな話!?これだから下品な人間は嫌いなのよ。
しかも、エルはまだ子どもなので、精通してませんけど?
してたとしても、あなた達みたいなゲスなんかお断りですけど?」
「んじゃ、あたしがこれからしてやるってぇ。エルフのあそこって長いって本当なのかぁ?
ボクゥ、安心して良いよ。あたしは男の人なら誰でもウェルカムだからさぁ」
「い…いやぁ…!!!」
え?なにそのいやらしい家庭事情
長いの!?欧米サイズなの?
精通してないことなんで姉さんは知ってるんだ?
だめだ、情報量が多すぎて頭の処理が追いつかない。
いや、今はいろいろ突っ込むのは後にして
暴走しかけているアンリを止めないとマジでこのまま貞操を奪いかねん。
頭の雑念を無理やり押し殺し止めに入る。
「はいはい!ストップストップ!」
「なんでだよ!?エルフとやれるチャンスなんてそうそうないんだぜぇ!?」
鼻息荒くして言われましても。
「えぇっと…。エルフの事情とかは後で詳しく聞くとしまして、今は何で奇襲したか?を先に聞くべきじゃないんですか?」
「あっ……、あたしとしたことが誘惑に負けるなんてよぉ…恐ろしいぜエルフの男…」
いや、お前はいつでも誰にでも異性の誘惑に負けてるだろ…。
その言葉を聞いて再び目を背ける2人は流石姉妹、息ピッタリだ。
「えぇっと、お姉さん?は誰からか依頼を受けたんですか?」
「あんたみたいな顔面に銃弾何発も喰らってもピンピンしてる
怪物に“お姉さん”なんて言われたくないわ。」
むっとなるけど耐えろ私の精神
冷たい言葉言われてるのは慣れてるじゃないか…。
「えっと、ボクはエル君だっけ?ボクはなんか知ってるのかなぁ?」
「ぇっと……えっと…」
「はぁ?何その喋り方?あはは、キモチワル!!!!あはははは!!」
何故か爆笑してるアンリに
無言で鉄槌を下して黙らせる。
エルフの少年は言っていいか悩んでるのだろう
私と姉さんを交互にキョロキョロと見てあたふたしている。
「エルだめよ!絶対言っちゃ駄目!!」
「お姉さんの言う事ばかり聞いていちゃ駄目ですよ?
エル君にはわからないかもだけど、私は傭兵だからギルドに報告義務があって
このままだとお姉ちゃんギルドに連れてかれちゃうよ?」
可愛い子を脅すのは少し心苦しいが
話が進まなそうなので少し強硬手段をする。
「そうしたら、おねえちゃんに会えなくなっちゃうかもですけど、仕方がないですよね。」
「うっ…うっ…そ、その…」
「子どもから脅すなんてやっぱり外道だわ。
わ、私はどうなったっていいって言ってるでしょ?
理由?簡単にお金が欲しいからよ。これでいい?」
エルフというのは変にプライドが高いのだろうか?
それとも、裏があるのか?やたら高圧的に来るじゃないか
「もう、ごはん……なく…て……それで……それで…」
「ちょっとエルは黙ってて!」
貴重なエルフで男の子のコンビとなると
生きにくい環境ではあることには嘘はないのであろう。
でも、食料の為だけに殺害を計画するものなのだろうか?
今回の依頼物である“本”の存在もあるし。
「それだけが理由ですか?実は、何を運んでいたかとか知っていたのでは?」
「何を運んでいたとしても、奇襲することには変わりなかったわ!
その為に数日前からずっとこの道を見張っていたワケだし。
それにエルフは腹持ちが良いので食事なんて取らないでも全然平気ですし?」
「おねえちゃ、嘘、ダメ…。そ、その……えっと……
もう、3日間ぐらい、まともに、食べてない…。おねえちゃは…
何日、ちゃんと、食べてないか…わからない…。それで、えっと…ごめん、なさい…」
「エル…。」
アンリの方をチラッと見る。
腕を組みながら黙って、エルフの少年を珍しそうに見ていたけど
私の視線に気がついたみたいで
「ん?あぁ、少なからずそっちの小さい方は嘘は言ってないみたいだなぁ。
まぁ、私の場合は経験の感覚だから高度の話術スキル持っていたらわからんけどなぁ。
エルフとの会話なんてのも初めてだし、正直わかんねぇ」
アンリの盗賊の感覚も確証は持てないかぁ。
まぁ、逃げようとしても簡単に追跡出来そうってのもあるし
いろいろ、対策取れるし大丈夫かなぁ
正直、考えるのも面倒になってきた。
「そうですか、ちゃんと言ってくれてありがとうございます。今縄解きますから少し動かないで下さいね」
「え!?」
「えっ……?ぇ……っ?」
予想外だったのであろう。
心底驚いたみたいで目をパチクリさせている。
「おい!?まじか?仮にもお前を…あたし達を殺そうとしてた連中だぞ!?
無慈悲と言われているお前はそれでもいいのか!?正直、失望したわ」
襲われた相手に何もしないってのはプライドが許さないのであろう。
私の判断に怒りを隠せないみたいだ。
「まぁまぁ、落ち着いて下さい。私も考えがあります」
アンリの耳元で小声で囁く
「弟君を利用して、姉の本音を炙りだしましょう。
それに今のうちに、好感度上げておくと後々“良いこと”があるかもしてないですよ」
「よぉし!そうだな!!それもそうだ!!!!!無罪!!!!うっへ…へへ……」
良いことをどういう風に捉えたかはわからないけど即答であった。
「勘違いしないで下さいね、縄を解くのは弟君だけです。あなたはまだ許してませんから」
姉と言われたエルフに対してビシッと指をさす。
「ちょっと!?わかったわ!!そのまま連れ去る気ね!?
あなた達は、住処どころかあたしの家族も奪うつもりなのね!
鬼!!悪魔!!怪物!!ショタコン!!性欲魔神!!」
どんどん罵倒雑になってないか?
「そんなことしませんよ。でも、あなたには今回の件は少しは反省して頂かねれば。
なにより、私の顔に合計9発の弾丸を打ち込んだのは罪は大きいのです。
まぁ、少し弟君にはそのお手伝いをして貰おうかと」
おぉ!と目を輝かせてるアンリ
いや…お前の想像していることはしないぞ…多分だけど。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
初作品というのもあり、あまり評価されないと思っていましたが
想像以上に見ている方が多いみたいでモチベーションに繋がっております。
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