1-5 襲撃そして奇襲
敵目線での展開です。
奇襲を決め込み早2日。
場所が良くなかったのか、人通りがあまりない。
村人や老人やら子どもはちらほらと行き来しているが
強襲するリスクとメリットが割に合わない。
一般市民なんかの持っている金なんてたかが知れている。
その場しのぎにしかならない行為なんて時間の無駄だ。
少なからず私はそう思う。
それ以上に弾丸のお金のが割高ですし…。
変に知名度が上がって捕まるのも嫌だしね。
しかし、そうも言ってられないのも現実で
袋いっぱいに詰め込まれてあった食料も今ではすっかり空である。
湖のお陰で飲水は確保出来るけど、
ここらへんは食べれる野草とかキノコなんかも生えていないみたいで。
今日中にはどうにかしないといろいろ限界である。
そろそろ場所変えるか考えかけていたところに
先鋒に出ている相方からターゲット発見のサインが上がるのを見る。
「ようやく来てくれたのね。どれどれ」
安堵と喜び、期待と不安を胸に抱えながら銃のスコープを覗き込む。
そこには、重騎士と護衛対象であろう人物が
こちらが大きな台車を引き歩いていた。
「あの重騎士は厄介そうね…。もう一人は既に疲れ果ててるし、きっと身分が低い人がこき使われてるのでしょう。可哀想…でも、今日でそれもおしまいにしてあげる。」
ポーチから魔力無力弾、魔力貫通弾、装甲貫通弾、を取り出し。
マガジンにセットする。
この弾にはそれぞれ秘術が込められており大体のものは貫通することが出来る。
一般普及されてるような重装備なんて木で出来たおもちゃも同然。簡単に吹っ飛ばせるってワケだ。
重装備で固めてても無駄ってこと。
「我が一族とっておきの銃弾をおみせしてやるわ。」
標準を合わせ深呼吸。
にしても、普通に顔晒しているけどいいのかしら?
狙って下さいって言ってるようなものじゃない。
まぁ、どちらにせよ確実に仕留めるから狙う場所は変わらないか。
ゆっくりと進んでくるターゲットと共に
私の鼓動も大きくなるのがわかる。
こんなことは良くないのはわかっているけど
ごめんなさいね。これも生きるため仕方がないの。
自分に言い聞かせつつ少し震える手で狙撃ポイントに入るのを待つ。
5,4,3,2,1
「良し、今!!」
ドンッ!ドンッ!ドンッ!と3連続でトリガーを引く。
銃声が静かな森を包みこみ、そして静寂を迎える。
重騎士だったものは威力に負けて体が吹き飛び
辺り一面には赤い液体が散乱しアートが出来上がっていた。
「わ、わぁ~たいへんだ~。護衛さんがやられてしまったぁ~。命だけはお助けをぉ~」
荷物を放棄して両手を上げて凄い速さで逃げ出すもう一人
「っち、逃したか。まぁいいわ。なんとかなったのかしら?」
あんな重装備をしていても、こんなもんなんだから呆気ないものである。
相方に狙撃完了のサインを送り。
至急に物資の確保に取り掛かる合図をする。
もたもたして他の人に見られたら厄介事になる。
そうなる前に、撤退しなきゃ。
辺りに誰もいないことを確認しつつ死体に近づく。
タッタッタッと駆け足で近寄る、足音。
背丈より大きい杖を落とさないよう両手で抱えながら
走ってくるのは相方のエルだった。
「お、おねいちゃ……。あ、あぶな…い…かも…」
「何?大丈夫よ?私のこの銃とエル特製の銃弾全部食らってるのよ?」
「うっ…で、でも…。やっ、やっぱり…こんなの…だめ…だったかも…」
死体を見て少し怯えているみたいだ。
「何?あなたも生きるためにしょうがないって賛成してたじゃない!?……ちょっと!?な、泣かないでよ!!わ、わかったわ。私はこっちの処理するから。あなたは荷台からお金になりそうな物資を回収してきて」
「わ…わかっ…た。」
少し動揺しているみたいだけど大丈夫だろうか?
「にして、こんな上手く行くとは思わなかったなぁ。まぁ初めてにしては上出来なんじゃない?」
満足行く結果に安心しつつ何か良いものは持っていないかと死体を漁る
「えっと、どれどれ?うぅん、良い装備してるけど…流石にこれは重くて持っていけないか…。
えっと、身元バレると後々厄介だしドックタグは忘れない内に回収しておきましょうか。」
首元からぶら下がってるドックタグをみて
私は信じられない事実に驚愕する
「嘘!?六芒星!?第一等級の傭兵とか嘘でしょ…。いや、考えるのは後にしよう
とにかく早く回収しないと」
慌てた手付きでドックタグを回収しようとした直後
物凄い勢いでガバッとその手を掴まれる
「捕まえました。」
「ちょっと!?嘘でしょ!?」
顔を液体で真っ赤に染めた重騎士がこちらを睨み腕を抑え込む
とっさに反対の手で太ももにストックしてあるハンドガンを取り出し
顔に向けて発射させる。
パンっ!パンっ!パンっ!パンっ!
全弾顔に命中させてるものも動きが止まる気配がない
「ちょっと?痛いんでやめて貰ってもいいですか?」
真っ赤な顔で這い寄らせ、もう片方の手を抑え込む。
振りほどこうにも壁に手を押し付けてるみたいに全然動かない。
そのまま、馬鹿力で押し倒され地面に叩きつけられ
一瞬で立場というものが逆転してしまった。
そこで私はとあるコトに気がつく。
この重騎士、血の匂いはするけど彼女から出ている様子がない。
「まさか!?ブラッドペイント!?」
「気がつくの遅かったようですね。」
六芒星のドックタグ、長い金髪の重騎士。
整った男勝りの美形…そこで私は思い出す。
「無慈悲な兵士アン・エメリー」
突如現れて、1年以内に第一等級傭兵に実力だけで地位を上り詰め
目標の達成なら手段を選ばないと噂の傭兵。
都市伝説だと思っていたけど、なんでこんなところにいるのよ!?
その肉体はもはや人間の想像する域を淘汰している。噂以上の化物がそこにはいた。
「私のこと知っているんですね?良かったです。話が早く済みそうですね。」
「いやぁ!!!!こないで化け物!?」
戸惑いと恐怖で錯乱し暴れるも
上半身は押さえつけれれ下半身はダダをこねる子どもみたいに
そこらを無造作に蹴飛すばかりである。
「おっ…おねえちゃ…!?」
荷物を漁りに行っていたエルが異変に気がついたのか
気がつけば杖を掲げて詠唱を開始し始めている。
「わ、我は…汝の……盟友…。そ、その友に…」
「おっとぉ?いけない子だなぁ?ダメだぞぉ?」
殺意混じりの声がどこからか聞こえてくる
その瞬間、何かに足を掬われその場に転倒する。
エルと呼ばれた子が見上げると
顔に蛇の入れ墨が入っていた褐色肌の女性が見下ろしていた。
ステルス!?いつの間に!?
というか、彼女荷物運び役でいた人じゃないの!?
小型のナイフを手に取り今にも襲いかかりそうであった。
「ダメ!!エル逃げなさい!!この離せ離せって!!」
口では何とでも言えるがどうしようもない現実に
私はやらかした事実と後悔が頭を巡っていた。
「うぅ……うぅ……」
どうやら死を直感してか足が動かないらしい
恐怖を通り越し下半身の衣服を濡らしていた。
衣服から滴る水は徐々に異臭を漂わせつつ衣服をどんどん侵食させていく。
どうやら、失禁してしたみたいだ。
「やめて!!やめてぇ!!!!」
必死に叫ぶ私、もはやどうすることも出来なく
瞳からはボロボロと涙が溢れ出てきていた。
「なぁ、エメリーよぉ?」
「なんですか?」
「なんかこれじゃあ、あたしたちが悪役みたいじゃねぇか?」
「少し気にしていたこと言わないで下さいよ…。」
やっぱり、慣れないことはするんじゃないなと後悔するのも後の祭りである。
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