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1-17 港町アクアヴェール ~夜のギルドにて~


「すいません、遅くなりましたぁ…。」


ギルドに戻るとカウンター席で不機嫌そうに酒をあおりながら愚痴るアンリに

対してニコニコと楽しそうに話を聞いているギルドのおじさんのがいた。


「いやぁーお使い助かったべよ!これで晩飯準備出来るべ。準備してくるから、くつろいでいてくれぇ」


バッグを渡しつつアンリの隣に腰掛ける。

カウンターに空になりそうな白ワインの瓶が置いてあり早めの晩酌をしていたみたいだ。

依頼終了後にはよく見る光景なので驚きもしないけど、なんかなぁ…。


「お?やっと戻って来たか遅いぞぉ~!?腹減ったぁ~」


「そういうあなたは結構早かったのでは?いつもそういう店行くと朝方まで帰ってこないのに。」


「うぅん…」と目を瞑っりどこか真剣な表情で語りかけてくる。


「エイミーさんよ…今日あたしは学んだことがあるんだぁ…。」


「へぇ…珍しいこともあるんですね」


「あぁ…イケメンすぎるのはダメだ…。緊張してなんも出来ないまま時間だけが過ぎてしまったよ…。」


「………。」


しばらくの沈黙。

キッチンからせかせかと料理の準備している音だけがギルド内に響き渡る。


男の頃であった自分に例えてアンリの現状を解読してみる。

美人を目の前に、いざそういう行為が始まろうとしてる段階で

急に息子が元気がなくなり慌てるヤツ?


うわぁ…嫌だなぁ…それ…トラウマになるやつだ。


まぁ、かつての私も無縁の出来事ですけどね!!


「それは…意外というかなんというか…残念でしたね…。」


「うん…まぁ…貴重な経験させてくれてありがとうなぁ…しばらくは…もう…行かないでいいかなぁ…。」


遠くをみつめている瞳には光がなかった。

何があったのかのかはわからなけど、とても深い傷を負ってきたようで…心中お察し申し上げます。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「ところで、エルフ2人はどうしたんだぁ?」

ワイン瓶から最後の1杯目となるお酒を注ぎつつ私に問いかけてくる。


「どうしたって?いやぁ、本人達の判断に委ねることにしましたよ?」


「いやいや、お前の判断なんぞわかるからいいんだぁ!」


彼女にとってはこれは予想通りだったとのことで。


「そうじゃなくてぇ?今何やってるんだ?」」


「そんなコト言われても私も先程、戻ってきたばっかりですし…知らないですよ…」


「ふむ……よっし!突撃してくるかぁ!!」


「ちょっと!?彼女達にも考える時間というのは必要なのでは?」


「そうかもしれないがぁ…エル君の貞操が危ういとあたしの第六感が感知知ているんだ!待ってろエル君!今助けに行くぞぉ!!」


止める間もなく行ってしまった…。

細いカウンターをすり抜けてカウンターに入っていきダダダダダっと階段を駆け上がる音が聞こえる。

こういう時に無駄に高い身体能力使わなくてもいいのではないか?


「ちょっと!?なんなのよ!?はぁ?……やってないわよ!?あんたと同じにしないで!!」


このやりとり先程もあったような?

怒涛の叫び声を聞くに彼女も大変だなぁ…そして、部屋にいたんだ。


そろそろ止めに行かないとなぁ立ち上がろうとすると

「おぉい!お前さん達やぁあ~!そろそろご飯だべよぉ~降りてきてくれねぇかぁ?」それに負けじと大きな声で叫ぶおじさんの声。


「だってよぉ!ほら行くぞぉ!!」

「ちょっっと!!せめて上着だけでも、嫌!引っ張らないで!!」


オロオロしてそうなエル君が目に浮かぶ。

行かなくても大丈夫そうか…なぁ?


笑顔で両手にサラダが盛り付けされたお皿を持ちつつ「ほほほほ、久々に賑やかじゃ!」と笑顔で出てきたおじさん。


それに続いて、先程まで寝ていたのであろう。

ポニーテールではなく背中辺りまで流れている金色の髪を掻きながらになり伸び切ったシャツにステテコパンツ姿のクラム。

それとは真逆に寝巻きで薄着だが、しっかりと身だしなみを整えているエル君。

そしてどこか満足そうなアンリとゾロゾロと出てくる。


うぅん…クラムさん-100エルフポイント加算で


「ちょっっと!?あんたの相方どうにかしなさいよ!!失礼よ!!」


怒りつつ光の空間から上着を取り出し羽織る。

羽織るだけで前は全開であり、だらし無いのは変わりない。


「まぁまぁ、食事前に喧嘩はやめましょうよ…」


「そ、そうだと思う。喧嘩ダメ…。」


「エ、エルゥ…。」愛する弟にフォローを貰えず少し泣きそうな姉であった。


「昼間も聞いたのですけど、エルフって人間の食事取って大丈夫なんですか?」


「えっ!?まさかのお預け…!?そうだったらここは我慢よ…」


アホがいる。いやもう今日1日でだいたい理解しましたけど…。


「おねえちゃ…多分だけど、そうじゃない…と思う。ボク達…そのエルフとして…その、食べても…ダイジョブか聞いてるのかと…。」


エル君は賢いなぁ!

そして寝巻き姿が可愛い+100エル君ポイント


「なんだぁ…てっきり試練かと思ってしまったわ。大丈夫もなにも普段の食事は人間と然程変わらないわよ?」


「そういうもんなんだなぁ…てっきり野菜とか木ノ実ばっかり食べてるのかと思ってたけどよぉ…」


「うん…でも、お肉は…エルフの村だと…高級品。そうそう食べれない」


木から生まれるって言ってたし自然が豊かなところなろだろうか?

そうなると確保も難しいのかな?


「ほほほほ、肉かぁわかったぞぉ。でも、その前にまずはこのアクアヴェールの名物を食べててくれなぁー」


出されたのは海の幸が盛りだくさんのシーフードピザだった。


トマトソース、ホワイトソース2種類共に大量のチーズが使われており

先程頂いてきた海鮮をパン生地いっぱいに広がっている。

焼き立ての良い香りが腹をくすぐり食欲を促す。


ただ…一点気になるとすると…

一口サイズに切られ焼かれても尚、タコスケの触手ウネウネと動いてるんですけど…。

生命力強すぎないか?本当に大丈夫なのコレ。


「うわぁ!?魔族料理とか超高級品じゃねぇか!!おっさんまじでこれ食べていいのかぁ!?」


「凄く良い匂い…いいのよね…?本当に食べていいのよね!?」


「今までで、一番、贅沢…。お、おこられない…?」


皆の反応をみるに大丈夫そう。

平然と目の前で自分の一部を切り裂いてたから日常的かと思っていたけど高級品だったみたいで。

そんな量が取れるものでもないであろう、それもそうか


「ほほほほ、喜んで貰えてなによりじゃ!作り甲斐があるのぉ~。あぁあと、傭兵さんよ。これ鞄に入れっぱなしだったべよ」と海さんから頂戴した米酒を渡される


「なんだそれぇ?」


「東大陸のお酒とのことです。店主さんからサービスと渡されました」


「そりゃ…本当だべか…!!うぅん…明日は嵐じゃのぉ…。傭兵さんワシ達にも少し分けて欲しいだが構わねぇべか?」


市場でも同じこと言われていた気がするけど

どんだけ酒好きなの海さんアンリと気が合いそう。


「勿論ですよ。結構な量頂いたので。」


「お前もたまには気が利くなぁ!!丁度、酒切らしていたし最高じゃねぇか!」


「ちょっと!!早く食べたいんですけど!?冷めちゃうわよ!!」


コクコクと頷くエル君。


「そうですね、頂くとしますか。」


「「よし、ではぁ、いただきまぁす!!!」」



ーーーーーーーーーーーーーーーー



おじさんが張り切りどんどん出てくる料理はどれも絶品であった。

要望に答えて肉料理とかも出してきてくれクラムとエル君は感動しつつもしゃもしゃと食べていた。


それはどんだけ入るんだと疑問に思うぐらい凄い量を…。


見た目でどうかとも思ったけど、

海さんが虜にならないよう注意を促すのもわかるぐらい魔族の食材は食べ応えのある品物であった。

ありがとう、タコスケとオサカナ…。


そんな食材に感動していたのもあっという間に去りの


今の、私たちはというと


「うえぇ…気持ち悪いぃ……は、吐きそう…うぐっ…」


「うわぁ!なんか凄い体がふわふわするぞぉ~あははははは。」


「エルゥ~好き好き!!もう絶対離さないんだらぁああ!」


「お、おねえちゃは、恥ずかしい…」


海さんの東のお酒が強すぎるあまりみんな酔っ払っていたのである。


私は自己再生機能が強いせいか身体の代謝が良いみたいで一気に酔いが回りグロッキー状態。

神よ、能力に対しての代償が…少し大きすぎないかい?


アンリはなんかキマってるし、


悪酔いのクラムにエル君はずっと、からまれている。

さっきからイチャイチャしてるけど、まじで今晩子作りとかするのやめろよ!?


「あららぁ…これは大惨事だべぇ…。今も必死で働いてるかみさんに怒られちまうよぉ…」


「うぐっ…すいません…私はしばらくすれば…大丈夫…です。」


「ほほほ、そんな顔色悪くして言われても説得力ねぇべよ」


そう言われると返す言葉もない…。


「気にすることねえぇべさ、こんな状態も今は懐かし感じでいいもんだぁ。だが、お前さん達今日はさっさと寝ろぉ?明日の昼過ぎまで寝てるもんならアイツが激怒すんべよぉ!」


「うっぷ…それも…そうですね。そ、そうしましょう。うっ…ほら、アンリ行きますよ…」


「なんだエイミー戦か?戦が始まるのか?あたしも参加するぞぉ!?」


「はいはい。そこの2人!!少しでも変な声聞こえてきたら…おぇ…わ、わかってますよね?」


「だ、大丈夫で…す。お、おねえちゃ。もう…寝よ?」


「えぇ?エルから誘ってくれるなんてぇ…これは夢…そうか夢かぁ!じゃあ、何しても良いわよね!!」


本当に大丈夫かなぁ…。

いろんな意味で頭が痛い…。


散らかりっぱなしのテーブルを少し申し訳なく思いつつ、重い足取りで階段を登り

各部屋に入る前に「エル君…どうかご無事で…」と気遣ったつもりが「ひぃ!?」と少し怯させたみたいで余計なことをした。


部屋に入るなり「おっ!?ベット発見!!ダ~イブ!!!!」と一人はしゃいでいるアンリ。


「チェスト…チェスドからぁ、聖水をぉ…」


チェスト内から聖水を取り出し一気飲み干す。

ボク神父曰く、体外の体調不良は聖水を飲むと完治してくれるらしい。。

胡散臭いく本当に効果があるかは疑問だけど飲まないよりかは気持ち的には楽にはなるだろう。

いわゆる、プラシーボ効果ってやつ。


「あははは、エイミーって酒弱いよなぁ……閃いた!!今度呑み勝負しよう!!負けたやつの奢りなぁ!」


「絶対負けるヤツじゃないですか…嫌ですよ…。」


そして、チェストから聖水が無くなり空になった瓶と交換するように1冊の本を取り出す。


「なんだぁ?まだ、何かするのかぁ?」


「今日の出来事を今のうちに日記に綴ろうかと、先に寝てて良いですよ。」


いつの間にか日課となっていた、

異世界生活日記はどんどん分厚くなっていた。

魔力が込めれ高かっけど、ページの紙が無くならない性能の為凄く便利である。

肝心な内容はと言うと、読み返すこともなく基本的に愚痴しか書いていないというのも事実ではあるけど…。


それに、この世界主流と異なる共通文字とは異なる

日本語で記入しているので誰にも解読出来ないであろう。


この豊富な調味料とか東大陸から察するに異世界転生者は度々いると推測するに

今後訪れるかもしれない人達に役立つかもしれないというのもある。


「真面目だなぁ…せめてあたしが寝るまでは隣にいてくれぇよぉ…日記はその後でぇ~!」


「はぁ?なんでですか!?」


「いいじゃんいいじゃんたまにはさぁ?この大きなベットしかないし一緒に寝ることには変わりないだろぉ?」


それもそうだけど…。

身近なアンリと言えど一緒のベットで女の人と寝るというのは抵抗があるんだけど…。

見てくれは好みではないけど、乳デカいし。


「ダメ…かなぁ?」


なんで上目遣い?

これがお酒の力というもの?…恐ろしい…。


「うぅん…拒否しても強引で来そうですし…寝るまでの間ですよ…。」


決してやましい思いなどない!と自分に言い聞かせつつ

日記を机に置きベットに寝転んでいるアンリの隣に横たわる。

いかん、変に意識してドキドキしてきたぞ。


「いや、そんな間近でずっと見つめられると…少し…恥ずかしいんですけど…」


「改めて間近で見ると綺麗な顔してるんだなぁって思ってさぁ」


「なっ!?からかってるんですか?」


「ナルシストのクセにこういう言葉には弱いのかぁ?ふふ、顔真っ赤じゃん。」


そういいつつ二の腕とか腰辺りを平然と触ってくるアンリに「うへぇ!?」と変な声が出る。


「筋肉質だと思ってたけどそう言うわけでもなく柔らかいんだなぁ。それ!」


「っん…ちょっ…ちょっと…やめて下さいっ…くはっ…、やめ…、ふぁははは!!」


素早い手付きで腰脇を擽りだすのに笑いをこらえきれない。


「あ、弱点みっけぇ!感覚はちゃんとあるんだなぁ。斬撃とか防いでるのけど…どうなってるんだ、お前の体?」


「ははは…って当たり前じゃないですか。って本当にやめて下さいよ…」


手を振り払うと彼女は少し満足そうに、にひひと笑った。


「お前も普段からそうやって笑ってると可愛いげがあるんだけどなぁ。勿体ない」


「んなっ…口説いてるんですか?酔っ払いすぎですよ…」


「ふふ、そうかもな」そう言いいつき抱きついてきた。

胸に重なる柔らかい感覚と優しい髪の匂いが脳を刺激し鼓動の高鳴り加速すると同時に少し息も荒くなる。

アレ、この調子だとこのまま雰囲気で…


「エイミー…あたしが原因で無理させてごめんな…。」


ということにはならず。



「………。そのコトをまだ言うんですか?言ったはずですよ、私の選択は後悔してないって」


「『誰かの人生を犠牲に地位を上げることは私は望んでいない。寿命が少ない人間だからそこ自由に生きる権利は誰でもあるはずだ』だったっけか」


「ちょっと…その台詞…」


「あたしは未だにあんな面前の場でそんな馬鹿みたいな対応を取ったかわからないけど、その、格好よかったぞ?」


「あの行動も自己満足なだけで……私はただ…臆病なだけですよ…。」


「でも、勇敢な行動であたしは生き残れたワケだ、ありがとうな。」


「それもそうですね…まぁその後に一緒に仕事する間柄になることは予想外でしたけど」


「頼りにしてくれよなぁそこらの奴らよりかは役に立つぞ?…あぁ!これ以上は恥ずかしいからやめやめ!もう寝る!おやすみ」


そう言うと

体の離し、背を向ける。

このまま、貞操に危機かと思ったけどそういう行為には至らず

少し、複雑な気持ちになるのであった。


「ふふ、そうですか。おやすみなさい」


多少、お酒の影響もあったのだろうがアンリなりの気遣いだったのだろう。

なんやかんやで心配してくれてるのだろう。


「ふぁぁああ…。」

私もいい感じに眠くなってきてしまった…。

日記は明日早起きして書くことにして私もこのまま寝るとするか。

ここまで読んで頂きありがとうございました。

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