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1-16 港町アクアヴェール ~市場にて~


高速移動で動いているのを聖騎士団に見つかり


「危険だ」

「街中ではそういう行為は禁止されている」

「これだから傭兵は…」など酷くお叱りを受けたコトにより時間を割かれ

市場に到着した頃には日は沈み、オレンジ色の月が街を照らそうとしていた。


月はこの世界の魔力を感知しているらしく、季節によって色を変える。

日本でいう、春には桃色に染まり。夏にはオレンジ色、秋には紫となり、冬には水色になる。

満月か新月しかないことから、私が“月”と呼んでいる空に浮かんでる惑星も本当は違うものなのだろう。


占星術に関しては無知なので、詳しいことはわからない。


「罰金取られたし、センターベースだったら多めにみてくれるんだけどなぁ…。」


魔族、亜人種と共存するために、この街の規約というのは他の街より厳しく

聖騎士団管轄だから当たり前というと当たり前なのだろうけど納得は行かない。


海沿いに面している市場では、従業員と思われる魚族がせっせと閉店作業を行い

行きゆく人はこれから夕食の準備をするのか鞄を片手に帰路につこうとする人ばかりである。


店員は魚族が目立つけど、魚を売り捌いているってのもどうなんだろう?


「あちゃ…間に合うかなぁ…。えっと海さん海さん…黒髪の人間はと…」


しばらく市場を歩いていると少し大きな店の前で閉店作業をしている人物を見かける。

駆け寄り「あのぉ、すいません。海さんでしょうか?」と声をかける。


私の首から下げているドックタグをみるとにこやかに「そうだけど?傭兵さんが何用だい?」と彼女は答える。


良かった。合っていたみたいだ。


黒髪ショートで左目には黒の眼帯を付けもう片方は鋭い目つきに黒目。

背丈はさほど大きくなく、上着は半被を羽織り胸にはサラシを巻いている。

凛とした姿に似合わない、ほどよい筋肉質。そして腰には長細い剣を拵えていた。


(あずま)大陸の出身の方だろうか?


「ギルドから買い物を頼まれまして。まだ、間に合いそうですか?」


鞄からガラス製の容器に保管された、水色の魔力回復用ポーションと赤色の体力回復用のポーションを数本取り出しメモと共に渡す。


「おぉ差し入れかな?でも、悪いね。こんな時間だから全部は無理かもだけど…おぉい!!タコスケとオサカナ!!まだいるかい!?」

店内に向かって叫びだす、凛としている姿からは想像難い大きな声で叫ぶものだから少し驚くのであった。


「なに?店長?どうしたの?」


店内から顔を出したのは半魚人の女性。

薄い水色のショート髪に青白い肌に耳ヒレと体の一部は鱗で守られている。

貝殻で控えめな胸が隠されてた。綺麗な尾ひれが優雅に揺れている。


タコスケとオサカナってあだ名なんだろうけど。直球すぎやしないか?


「急だけどお客様だ。まだ頼めるか?」


「えぇ!?もう魔力限界なんだけど?…まぁ、少しでもいいなら可能かな?」


「悪いな、これ飲んで少し頑張ってくれ。」


ポーションを受け取ると「まぁそういうことなら…。」と少し疲れた顔で答える


「タコスケはどうしたんだ?またサボりか?」


「タコちゃんなら、いつも通り寝てるんじゃない?用意してくるついでに呼んでくるね。」


「悪いなぁ!頼のんだぞ!!」


半魚人は「はいはい」とポーションを飲みながら店内を戻っていくのであった。


「急にすいません。もっと早く来れれば良かったのですけど…」


「うん?良いってことよ!こっちも売上が上がるってもんだ!傭兵さんは観光で来たのかい?」


「それだったら良かったんですけどね…依頼で来ました。本当は観光したかったんですけど明日には出ないと行けなくて…そんな時間も無さそうですよ。」


昼間に作った水着ももう着れる時間はなさそうである。


「あらら、それは大変だね!んじゃあ、今日は少しでも美味しいもの食べて明日に備えないとだな!」


「ははは、そうですね。あの、失礼でなければ少し伺いたいのですけど、海さんって東大陸の方ですか?」


「あぁそうだよ!ラヴィ大陸だとこの髪の色は少々目立つよな?。」


「確かにそうかもですね。それに黒色の染色は禁止されていますし。」


(あずま)の誇りだかで禁止されてるんだっけ?はは、下らないよなぁ?なんだ?東に興味あるのか?」


私の情報が確か正しものならば日本に一番近しいところ、興味も出てくるのは当然である。

存在は知っていたけど、この1年間は生活に慣れる為に怒涛の日々で行けるワケもなく…。


「それはもう!東大陸は行ったことないので、どういう場所か興味しかないです!!」


誠心誠意を込めて作り上げた私が霞むほど美人の多いこの世界。

和服の大和撫子。是非とも、お目にかかりたい!!

……いや、でもこの貞操逆転の世界を考慮するとどうなんだろう

エルフもあんなんだったし…少しモヤモヤする。


「お、おぅ…。そうだなぁ…、東の有名どころって言うと、温泉、お祭り、美味しい食事…あと面倒な作法とかか?ははは、あたいは性格の問題で合わなかったから移住しちまったけどな」


「どれも楽しそうですね!温泉かぁ…いいなぁ。やっぱり、主食ってお米なんすか?」


「勿論さ!そんなに興味あるなら今度送ってやろうか?あたいも久しく食べてないし一緒に頼んでやるよ?」


「えぇ!いいんですか!?」


「それなりの料金は頂くがな!米ならハーピー便で腐らせることもなく搬入出来るだろうし。」


「凄く嬉しいです!うわぁ、楽しみだなぁ!」


「そんなに喜んで貰えてなによりだよ。にしても…タコスケ遅いなぁ…すまねぇ傭兵さん。少し待っててくれ」


思わぬ収穫!おかずは何がいいかなぁ…。

焼き魚?に卵焼き?肉と野菜の炒めもとかでもいいかも。


そんなことを考えていると「いやぁ~だぁ~もう~働かない~!!営業時間外~!!ノー残業~!!」

無理やり引っ張れ柄のタコ型の魔族が海さんにと共にやってきた。


子供みたいな人型ではあるけど、紫色の肌でタコ型の髪の部分は触手でウネウネしており。

クマが酷く瞼はとろーんと下がり、眠そうな表情をしている。

伸び切っただらし無いシャツからは鎖骨がみえ、胸はペッタンコだ。

腰辺りからも長い触手が数本生え、下半身は覆い尽くされている。


「うるせぇ!お前はずっと寝てるだけだろうが!!少しは働け!!」


「ひーどーい~!この仕打ちなんなのさぁ~?魔平和共存促進委員会に訴えてやる~。」


なんか揉めているみたいだけど、これ私のせいじゃないよね…。


嫌々と拒否していたタコスケと呼ばれた彼女だが、見守っていた私と目が合うと少し驚いたように目を見開き。

今までの駄々をこねていたのが嘘のように冷静にゆっくりとこっちに近づいてくる。


「あれぇ~?お姉さんが今回のお客さ~ん?凄いね~、説明出来ないけどすげぇ人ってのはわかるかもぉ~、すげぇ~。」


「えっと…ありがとうございます?」


ゆったりとした口調が物凄くマイペースであることを強調させる。

私からすると、魔族普通に話してることがすげぇ~と思うのであった。


「早くしろよ、ずっと待たせてるんだよ!!」

イライラしているのがこっちにも伝わってきて少し気まずい。


「うみはせっかちだなぁ~、んでぇ?どれくらい必要なのぉ~?部位は~?今のオススメは前髪辺りかなぁ~?」


「え?えっと…4,5人分ぐらい?部位?はお任せします。」


「おぉ~!結構いくねぇ~。おっけぇ~。あ、うみ~ナイフ忘れたぁ~。貸してぇ~」


っチと舌打ちをして。店からナイフ取り出し、そして投げつける。

ダーツのように真っ直ぐに飛んでくるナイフをバシッっと髪の触手部で受け取ると


「おっとぉ?危険物~投げるの禁止~!暴力反対~。」


海さんはそれに対してとくに返事はなく、はぁとため息ついている。

少しヒヤヒヤしたけどこの人も苦労してるんだなぁ…とわかる瞬間であった。


「んじゃあ、落とさないように~鞄広げておいてね~。」


「あぁっと、はい。こうですか?」


言われるまま小さな鞄の口を広げる。


「そうそう~。うぅん、こんくらいかなぁ?落とさないように気を付けてね~」


そういうと手に持ち替えたナイフで自分の髪を切断した。

切断されたタコの触手は空中でもウネウネと動きながらもスポッと鞄に入っていく


「はぁああああああ?」思わない出来事に思わず叫んでしまった。


その叫び声に反応するようにビクッと体を震わせ「えぇ?なにぃ?ビックリするなぁ~。」とキョトンとするタコスケ。


「ビックリなのはこっちなんですけど!?えぇ!?大丈夫なんですか!?」


「だって欲しかったんでしょぉ?いらないって言われたほうが困るかもぉ?」


戸惑う私をみて「はははは!!そっかそっか!観光で来てたって言ってたな?はは、悪い悪い!」


笑う海さんは続けて言う


「えっと、一部食料はこうやってワケて貰ってるわけ。こいつらもそれを理解してこいつらも働いてるから気にするな」


「気にするなと言われても人体の一部ですよ?いいんですか?」と言いタコスケをみると。

今切った部分が何事もなかったのようにニョキニョキと再生していた。


自己再生能力?


「定期的に切らないと傷んじゃうしねぇ~こっちも助かるかも~。処理も困るしねぇ~」


ええぇ…っと、戸惑っていると店内から半魚人の女性が駆け出てくる


「おまたせしました。はいどうぞ。」


そう言うと、小さな魚が数匹水に入って泳いでいる小さな水槽を渡される。


「美味しく頂いて下さいね…ポッ///」


なんで照れてるのこの半魚人!?

ポーション…魔力…ってもしかして…これ今出して来たやつ!?

違うよね!?海から取ってきたものだよね!?


「まぁ、最初は抵抗あるだろうけど、魔族の食料は美味しいぞ~。病みつきになってそこらの人襲わないようには注意な!?ははは、あと生は人によっては危険だから毒消ししとけ~まぁ、ギルドのおっさんなら大丈夫だとは思うけどよ」


共存するというコトはこういうことを言うのであろう。

凄く合理的であり理解は出来るけど納得行くのは時間がかかりそうだ…。

今まで、処理された食材しかみてこなかったけど普通にこういうの行われていたんだろうなぁ。

ここは一つ勉強になったと思うことにしよう…。


「えっと…ありがとうございます。その美味しく頂きますね。」


その言葉を聞いて満足そうに微笑む2人。

それとは、裏腹に複雑な気持ちの私。


「あ、請求はギルド宛とのことですが。お米のお題は個人的なものなのでどうしましょう?」


「今貰えるほうが助かるけど。なんなら今度でもいいぞ?」


「これで大丈夫でしょうか?お釣りはいらないのでこのでお願い出来れば」


価値がわからないので金貨を渡す。


「あらら、こいつはたまげたなぁ。米もそんな高価なものでもないしなぁ…ちょっと待ってくれ!」


店の商品を数点と大きな瓶を袋にまとめ渡してくる


「なんですかコレ?」


「サービス品とあたい秘蔵の米酒。うめぇぞ?」


「嘘…!?店長が…お酒を!?」


「えぇ?お酒上げるなんて珍しいこともんだねぇ?明日の天気は大荒れかなぁ?」


「うっせぇ!これでもこっちは割に合わないんだよ!!賃金を頂くってことはそういうことだ覚えておけ!」


そんな言葉は聞き飽きてるのかそっぽを向き無視する2人。


「大丈夫でしたのに。えっと、ハーピー便はセンターベースギルドにてアン・エメリー宛でお願い頂ければ。」


「アン・エメリー……!?……よっし!わかった。良いの届けてやるかた楽しみに待っていてくれよな!」


「楽しみにしてますね!それに何から何までありがとうございました。では、失礼しますね。」


荷物が多くなってしまった。小さいとは言えこの水槽も少し厄介だなぁ。

走るとまた怒られそうだし夜風に当たりながら少し時間かけてゆっくりと戻るとするか。

それに…帰路で今後のことを改めて考えないと。


ーーーーーーーーーーーーーーーー



「あの人が無慈悲な傭兵さんだったかぁ…通りで金貨なんて平然と出せる御方なことで。」


「私は綺麗で礼儀正しい人としか思えなかったけど、そんな有名な人だったの?」


「なぁに?うみ~?知り合いだったのぉ~?」


「そうか、お前達は知らないかもなぁ。そうだなぁ…種族は人間だけどお前達より化け物かもなぁ。あたいも噂で知らなかったけど全然普通だったな。ははは、噂ってのはやっぱり宛にならん!」


「やっぱり~そうだったぁ?うん、すごいそうだよねぇ彼女は。あとぉ~“化け物“は差別用語~だよぉ~。訴えてやるぅ~!!」


「店長も仕事以外の時は呑んだくれじゃない。オンオフで切り替えるタイプの人なのでは?それにそんな強い人に私のを…ポッ///また、体が火照って来そう…。」


「ははは、そいつは悪かったな。んで発情してるところ悪いけどその気持は明日に備えてくれ。ほらほら閉店作業の続き。さっさと動く」


「面倒くさいなぁ~。オサカナ~あとは任せたよぉ~。」


「そうは行きませんよ?ほらもう少し何だから!」


後日、大量の東の食品が送り込まれギルドから怒られるのであった。


ーーーーーーーーーーーーーーー

ここまで読んで頂きありがとうございました。

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