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1-15 港町アクアヴェール ~教会にて~


季節は日本で言うところの夏初期

夕刻は時とは言えど外はまだまだ暑い


動きやすいよう、昼間に作成したパーカーと白いシャツに黒の長いズボンに着替え

階段を降り厨房に差し掛かったところでギルドのおじさんが何かしているのを見かける。

箱の中身を確認しながら「うぅ、困ったべ。どうしたもんかなぁ…」と何か嘆いているようだ


「どうかしましたか?」


「おぉ、ビックリしたべぇ!なんだ傭兵さんじゃないかぁ。

実はのぉ、今日あんさん達が来るのワシは知らなーもんでねぇ。晩御飯の食材が足らなそうなんだべよ」


そういえば、依頼の存在すら忘れてたってあのおばあさん言ってたっけか。


箱の中を確認すると、多少の野菜と調味料が腐らないよう小さな氷の魔石で保管されていた。

この世界は電子機器とという画期的な物はないのは当然でありそれを補うよう、

魔石を活用して日常生活を過ごしやすいよう工夫されている。


「悪いんだがぁ、傭兵さんの市場行ってお使い頼まれてくれねぇか?」


「教会行くだけですし、大丈夫ですよ。何買ってくればいいですか?」


港街の市場か。

どういう雰囲気で売っているものも気になるので断る理由もない。

ボク神父に昼食のお礼用にお土産買って行かないといけないしなぁ…。


「女性なのに教会に行くって珍しいこともあるんだべなぁ…。ちょっと、待ってくれ。今メモするべよ。」


そういうと、厨房に置いてあった紙と筆ペンにメモを記入し始める。


厨房は狭いもののちゃんと掃除しているみたいで

大きいな汚れは目立たず整理整頓がキチンとされている。


「いやぁ、もう歳には敵わんねぇ。本当なら自分で行くべきなんだろうけど。この時間からだと遅くなっちまうからなぁ。メモとぉ…あったあった。荷物入れはコレを使ってくれぇ」


2枚のメモと小さな革製の鞄を受け取る。

鞄からは魔力が感じ取られることからの高級品なのだろう。


「市場に海さんって黒髪の長細い刀持った女性いるべよ。その人に鞄中入ってるポーション渡して請求はギルド宛でって言って貰えれば購入出来るべぇ~。

お酒類は必要なら自分で買ってきてなぁ。街の簡単な地図も書いといたから参考にして欲しいべ。戻ってきたら港街の名物ごちそうするべよ」


「わかりました。細かいところまでありがとうございます。では、行ってきますね。遅くならないよう心がけます。」


「うむ、にしても、さっきはエルフさんがいたから気が付かなかったがぁ、お前さんもなかなかの美人さんだべなぁ。

おっと、こういうこと言うとまたアイツに怒られてしまうべよ、ホホホホ。では、気をつけてなぁ」


初めて美人だと言われたのがおじさんという複雑な気持ちになりながらも

少し顔が熱くなるのを感じてギルドを後にするのであった。


ーーーーーーーーーーーー


地図を参照し教会に赴く。

聖騎士団の拠点の裏側に存在していたが

拠点が大きすぎるせいで外壁を大回するハメになり無駄に歩いた気がする。


教会も教会でセンターベースとは比にならないぐらい大きい。

扉は開放されていたので勝手に入るコトにした。


中は恐ろしいほど静かで誰もいない。

教会というのはどこもこんな感じなのだろうか?


教会内では無駄にヘソ辺りで逆三角形の形を手で作っている大きな神の石像の前に

凛々しい顔立ちの剣を持った青年と大きな翼を付けた魔王が握手している石像が飾れれているのが目につく。


近づいてみてみると【人類終戦】と石碑に書かれていた。

当時の勇者と魔王の状況を意識して作られたものだろう。


(これが終戦に導いたこの世界の英雄か…魔王の石像は胸膨らんでるけどもしかして女性…なのか?)


歴史は古くないハズなのに当時の資料全然見つからないんだよなぁ…。

勇者の名前も書物によってバラバラだし、魔王に至っても姿形どころか種族すら別々

当時のコトを隠しているのかわからないけど謎が大きい。


「まぁ、魔術教会行く機会があればその時にちゃんと調べるとするかぁ…。書物多いみたいだし何かわかるだろ」


祭壇の近くにある最前列の椅子に腰掛け目を瞑り祈りの姿を取る

まぁ、いつも通り祈っているのではなく愚痴をこぼしてるだけだけど。


しばらく祈っていると祭壇の後の扉が開かれる音が聞こえる


「あら、誰かいるのですか?」


神父かな?と目を開けると私はその人物に驚くのであった。


黒いベールから流れるように出る毛先が赤く染まっている白髮。

黒いワンピース服の部分でゆったりした袖のついたくるぶし丈のトゥニカを着込み

白いレース状のアイマスクをつけ、中央に大きな黒い瞳の装飾が施される。

胸の部分が程よく膨らんでいることから女性というのは間違いないようだ。

首から鎖で垂れ下がっている魔石の装飾が施された、金属のロザリオを付けていた。


(しゅ、修道女!?シスター!?)


都市伝説かと思っていたけど実在したのか!?

細身のそこそこ高い身長。雪のように白い肌!!

私がずっと求めていた人物がそこはいた。


「あらあら、そんな警戒しないで下さいまし。そこにいるのは…?どなたです…?

申し訳ありませんが、ご覧の有様、わたくしは目が見えないので御座います。

気配でそちらに誰かいるっていうのはわかるのですが…。」


「こ、これは、失礼しました。誰もいないので勝手に入らせて頂きました。もしかして、不味かったですか?」


「これはこれは、まぁまぁ素敵なお声の御方で御座いますね!!そんな事はありません神への信仰は自由ですから…その、よろしければお隣座らせて頂いても宜しいでしょうか?」


「えっと…大丈夫ですよ。」


感謝致しますとゆっくりこちらに近づいてくる。

鼻をスンスンとさせていることから嗅覚も活用しているみたいだ。

目が見えないとのことだけど不自由なく私の隣にたどり着き腰掛ける



「始めまして。わたくしハーフヴァンパイアのウプィリと申します。

気分を損ねたら申し訳ありませんがあなた様は女性で宜しかったでしょうか?」


ハーフヴァンパイア。吸血鬼と人間の愛の子なのかな?

見た目は人間としか思えないけど言われてみると白くて綺麗な歯の一部は尖っている。

ヴァンパイアというと、太陽に弱いとかニンニクがダメとか弱点が多いことで有名であったけど

普通に教会にいてロザリオ付けているということは

彼女も、エルフみたいにこの世界特有の意味不明なルールが適用さてているのかも知てない?


「はい、エメリーって言います。女性ですよ。」


「まさか教会で私の女性とお会い出来るなんて思いもしませんでした!!それにあなた様からは凄く良いニオイがしますね。」


「えっと、そうなんですか?私もまさかシスターさんと出会えるとは思ってもいませんでしたので」


「まぁ、シスターだなんて…!あなた様からはこんなわたくしでもそんな立派に見えるのですね…光栄ですわ!!」


「そんなご謙遜なさらず、素敵ですよ」


「それはそれは勿体ないお言葉。あなた様…いえ、エメリー様は神を信じているのですか?」


「あぁ…まぁ…はい…いろいろありまして…。」


信じるも何もあったコトあるしなぁ…なんて言えるワケもなく。


「それは素晴らしいことに御座います!!わたくしも今日の出来事を主様に報告しに来たのですが、まさかあなた様みたいな熱心な方とお会い出来るなんて!!これも神の導きですね。」


心底嬉しそうに恍惚な表情を浮かべている。


「報告って言ってましたが、もしかしてなのですけど…神と会話出来きたりします?」


「それはもちろん。いつでもお会いすることは可能かとは思いますがエメリー様はそうではないのでしょうか?」


当然というように答える彼女に驚きを隠せない。

なにかの能力なのだろうか?ここは慎重に情報を抜き出すとしよう


「いやぁ…私は祈ることしか出来ませんよ…。そのどうすれば会話出来るのでしょうか?」


「はて?祈れば普通に声が聞こえると思うのでそうではないのでしょうか?。」


そういうものなのか?

やっぱり無視されているだけなのか?


「失礼でなければ、今日はなんて言われました?」


「はい!!それは誠に偉大な提示を頂きました!!“本日も迷える子羊を導きたまえ”と。」


「えっと…それ以外には?」


「こんなわたくしなんかに声をかけて下さるだけで充分なのにそれ以上なんて求めることなんて出来ませんわ!」


確かにそうなのかも知れないけど…でも…なんか胡散臭く思えてきたぞ…。


「そうなんですね。でも羨ましいです。私も会話出来たらと日々教会に来ては思っています…。」


「それはそれは…なにかお困りごとでも?よろしければ相談に乗らせて頂きますよ」


「いいんですか?」


「それはもちろんで御座います。では両手を繋いで指を絡ませて下さい。」


そう言うと彼女は両手を出す。

言われるがままにやってみるけどこれって恋人繋ぎって言われるものでは!?

細い指から体温が伝わりドキドキしてきた。


「緊張せず…リラックスして…目をつむり。無心になって下さいませ。そう、心を落ち着かせて…」


目を瞑っているのでわからないけど、優しい口調と共におでこが合わさったみたいだ。

なにこれ?恋人プレイの一環なの!?

落ち着けって言われてもこの状況だといろいろと意識してしまう。


「では、少しの記憶を拝見させて頂きますね『ブレインサーチ』」


魔術で何かをしているみたいだけど今この両手を繋いで

おでこを合わせている状況に私はドキドキで思考が追いつかない。

そして、顔が近いので吐息が顔に触れてこそばゆい気持ちになる。


「うん?うぅ…はて?ふむ、……はい…わかりました…。目を開けていいですよ」


手を解かれ、目を開けると整った面妖な顔が間近にあった。


「ちょっと失礼致しますね」そう言うと、彼女は優しい手付きで私の体の上から下までを弄り始める。


「え?っん…ちょっと何するんですか!?えっと…そういうのは…心の準備が……」


この私にも貞操の危機が!?とか思ったけど

そんなことは起こらず彼女は直ぐ手を離すのでであった。

今までににない、心臓の高鳴りを感じ顔に熱を帯び体も熱い。


「すいません失礼しました。えっと…、誠に申しありませんがあなた様の記憶はわたくしでは観ることが出来ないみたいで御座います。。

原因はわからないのですけど、殿方の記憶が再現されまして…普通は第三者の記憶はみることは出来ないはずなのこういうのは初めてでして…。

もしかたら本当は男性であるかと思ったのですが、そういうワケではないみたいですし…。」


そういうコトだったのか…。

にしても、距離感が近すぎる気もするけど。


「ふぅ…よろしければどんな様子だったか教えて貰えませんか?」


「それはもちろん。その殿方は病に侵されて苦しんでいました。

死にたい気持と生きたい気持ちが混じり合うような日々を繰り返してそうな雰囲気を感じることができました。

最終的には病に体が侵食され命を落としてしまったみたいですが…」


「……。」

それは恐らく異世界前のかつての俺の記憶だろう。

病気が悪化して死ぬ直前の記憶をみたのかもしれない。


「この記憶はどういう意味をしているのか存じ上げないのですが一つだけわかったコトがあります。

一部の記憶は何物かの強力な力で守られているみたいで今現在のエメリー様の悩みの種を探ることが出来ませでしたわ。

どこか、主様に似た気配を感じましたが…あなた様は何物ですか?」


神に取っても異世界転移である私の存在は簡単にバラしたくないワケか…。

ここで「実は異世界から来たんです」って言うのも簡単だけど

それの代償というのもわからないし変なコトは言えないかぁ。

黙秘は約束してないけど、この発言での代償は大きなことになりそうな感じもするし…。


「私は、その日暮らしのタダの傭兵ですよ。それにありがとうございました。

誰かわからないけど守ってくれている人がいるってだけで私が少し救われた気がします。」


「それは勿体ないお言葉…にしても、あなた様に益々興味が沸いて来てしまいました!!

正直、興奮をもう抑えれません。それは、禁欲期間でなければ生き血を啜りたいぐらいに…。」


「そ、それは困ります!お題は何か別の形でお願い出来れば…。」


「ふふふ、冗談ですよ。至らぬ点が多く申し訳ありませんが少しでも気持ちが楽になったなら幸いに御座います。。

これは、わたくしからのアドバイスですが気持を急いでコトを急がぬよう気をつけて下さいね。わたくしみたいに目を奪われてしまうかも知れないので…」


「そ、それはどういうコトですか?」


「これは主様との素晴らしい思い出なの秘密です。それにもう時間みたいですね…。」


すると教会の入口から男性のどなり声が聞こえる


『おい!みつけたぞ!!!!そこを動くな!!!!』


聖騎士団と共に神父が物凄い腱膜と共に駆け寄ってくる


「え!?…え!?」


「素敵な一時感謝致します。今度はゆっくり主様について語り合いましょう。それではさようなら。」


「ちょっと、待ってくれ!まだまだ聞きたいことが…」


私の言葉にペコリとお辞儀し、彼女はどんどん薄くなり赤い霧と共に消え去ってしまうのであった。


なんだったんだ…。

というか何だこの状況!?


『君大丈夫かい?何もされてないか?』


「昔の記憶を見られたみたいですけど、失敗したようで私自信には特に害はないですけど…。えっと、彼女はシスター様ではなかったのですか?」


『それなら良かった。シスターかどうかと言われると正直返答に困る。

彼女は信仰が強すぎる厄介者でね…。各地で宗教活動しているみたいだが少し度が過ぎていて困ってるんだ。

タダでさえ評判が悪い教会も彼女が原因で今も低下しているんだよ…もし、今度彼女を見かけたら教会まで連絡頂けるとありがたい。』


「そうだったんですね…。わかりました。」


「今日はもう立入禁止だ。何されていた調べないといけないからな、この件は聖騎士団が関与するので変なことはしないよう。」


「そうですか。わかりました。」


ハーフヴァンパイアのウプィリか…。

もしかたら、ボク司教なら何か知っているかもしれないし戻ったら聞いてみよう。


教会を追い出され外に出ると日が落ち始めていた。


「あぁ!不味い!!買い物しないといけないんだった!!急いで市場に向かい直ぐに宿に戻ろう。ちょっと考え事は宿に着いてから!!」


地図を頼りに移動速度強化のスキルを活用して急いで市場に向かうのであった。


ーーーーーーーーーーーー


物凄い速度で移動するエメリーを空から見守る物がいた。

「あの方が噂のエメリー様でしたか…神の加護があそこまで強い方は初めてです。少し妬いてしまいますね…。あの速度で移動出来るとなると身体能力も凄いのでしょう。有名人と言うのも少し納得です。あぁ、目を捧げたコトを後悔したのは初めてです…。どんな姿だったのでしょうか?きっと素敵な御方に違いないですわ!!いずれまた合う機会がありましょう…その時を楽しみにしていますよ。“全ては神の仰せのままに”」

ここまで読んで頂きありがとうございました。

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[一言] これは、ようやくエメリーにも春が!?
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