1-12 港街アクアヴェール②
「うひょ~!流石港町だぁ!綺麗だし広いなぁ!!人も多いしセンターベースが寂れて見えるぞぉ!?」
アクアヴェールは名前通り海の都であり
大きな噴水があり女神像なんかがそこらに飾られ
停泊場には独特なデザインの船で埋め尽くされていた。
風と共に潮の香りが鼻をくすぐり凄く新鮮である。
海岸沿いでは水着姿の人達とか露天なんかもみえる。
聖騎士団の衛兵もところどころみかけるので治安も守られているのであろう。
「そうですねぇ、それに魔族とか亜人種の方々も多種多様な人種が共存してるっぽいですね。
地元が人間だらけなのもあり少し新鮮です。」
この世界にはいろんな種族がいることは知っていたけど
この1年間はセンターベースで過ごしていたので他種族との交流はそうそうなかった
間近にいろんな種類を見たのは初めてであり異世界なんだなぁと改めて感動を隠せない
おぉ!あれはケモミミ娘!魚っぽいあれは魚人か?
小さな白いネズミみたいな種族もいるぞ。
角が生えてる大きな人種はなんだろう?
少し気になるのが他の種族もほぼほぼ女性という点である
エルフは…まぁわからなくもないけど、他人種にも男っていうのは少ないのであろうか?
なんかそれはそれでいやだなぁ…。
「これなら、あなた達も普通に歩いて大丈夫なのでは?」
荷台に隠れている2人に話しかけてみる
言葉に反応してひょっこり顔を出し辺りを見渡し
「ムリムリムリ!!絶対無理!!殺されちゃうわよ!!!!」
「ひ、人がいっぱい、こ、こわい、です……」
サッと一瞬にして荷台に顔を隠すのであった。
「引きこもり種族にそれはちょっと可哀想だぞぉ…。」
エルフ族というのは筋金入りの引きこもり集団だったらしい。
弟を守るという決意こそ素晴らしいけど
この様子でどうやって生きていくつもりだったんだろうか。
「すいません、私も珍しい光景で少し興奮していたみたいです。」
「へぇ~そうなんだ。珍しいって、てっきり世界各国周ってるものかと思ったけど違うのね。」
再度顔を半分だけ覗かせて話しかけてくる。
「例外はありますけど傭兵の仕事って村の手伝い関連のが多いですからね。他の都市行くことってそうそうないんですよ。都市事情に関しては私なんかよりアンリのが詳しいですよ。」
「最低限の情報ないと盗賊なんてやっていけなかったからなぁ。
まぁ、こいつは無駄に階級高いだけで抜けてるところ多いしなぁ」
「ふぅん、なんか全て完璧にこなしそうなイメージがあったけどそうでもないのね。少し人間味があって安心したわ。」
言いたい事だけ言ってサッとまた隠れたんだけど、
モグラ叩きゲームか何か?叩いていいの?
「なんかいろいろ失礼なコト言われた気がします…。」
「そんな落ち込むようなことでもないだろうぉっと。多分この建物だよなぁ?」
他の建物とは比べ物にならないぐらい大きい石造りの城っぽい建物の前に到着する
聖騎士団の紋章の旗が堂々と垂れ下がっているのをみるからにここが拠点なんだろう。
「デカいですね…。流石、聖騎士団」
「その正面にギルド拠点があるとは言っていたけどぉ…あれか…?」
その向かいにあったのは年季の入ったボロボロの木造建築で
壁には謎の植物の蔦が建物を侵食しており今にも崩れそうな雰囲気だ。
周わりに綺麗な建物が多いだけに変に目立ってる。
「本当にここなんですかねぇ…。」
「錆びてるけど看板だったと思わしき物があるしそうなんじゃねぇ?」
「確かめて来ますかぁ…。」
依頼書を片手にドアに開こうとするも
相当な月日をメンテナンスしていないのか
立つけが悪くなっておりキィイイと軋む音を立ててゆっくりと開かれる。
室内は多少の机と5人がけのL字カウンターが部屋の半分を埋め尽くし個人営業店の居酒屋を思い出させる。
薄暗く辛うじて窓から入ってくる日差しが殺風景な空間を照らしていた。
本当ににギルド拠点!?
めっちゃ怖いんですけど!?
「す、すいませーん、どなたかいらっしゃいますかー?」
恐る恐る声を出してみる。
するとカウンターの奥から物音が聞こえてきた。
このまま、魔物とか出て来ないよね?
「なんねぇ?今日の営業は終了しとるべよ」
L字カウンターの裏から顔を出してきたのは
服装はいたって普通の少し裕福そうな体格の
こじんまりとした白い口ひげが似合うおじさんであった。
「あのぉ…センターベースギルドから荷物依頼でやって来たんですけど…。ギルド拠点ってこちらで合っていますか?」
「そうだがぁ、はて?なんのことさね?ちょっと、かあちゃ~ん!母ちゃん!!他のギルド拠点からのお客さんだべよ!!!」
「なんだい!?なんだい!?騒々しい!!!!!」
呼ばれて奥からやって来たのは杖を着いた白髪の高年齢のおばさんだった。
歳には負けじと堂々とし威圧感がある。
「えっと、荷物依頼でやってきました。こういうのもなんですけど…。」
依頼書とドックタグをみせる
「そういえば、アカネちゃんがなんか運んでくるって言ってたっけ!?あら~いやだわぁ~。スッカリ忘れていたよぉ!!」
がはははと大胆に大きな口を開けて笑う姿は古の悪魔女を想像させる。
「と、とりあえず、荷物はどうしましょう…?」
「あぁん?入口付近に置いといて頂戴!!後で聖騎士団の連中に運ばれせるさ!アイツラはこういう時にしか役に立たないからねぇ!!
納付金もまた上がるしその分は働いて貰わないと気が済まないよ!!あと、その本とやらは今渡しておくれ!!!」
「わ、わかりました。すいませんが荷台に本がありますので取ってきますね…。」
「なんだい!?段取りが悪いねぇ!!早くして頂戴!!ノロマは嫌いだよ!!連れがいるなら全員で来るんだよ!少しでも時間かけたら許さないからね!!」
「ほほほほ、わしゃ~お茶の用意でもしておくべぇ。客人用の茶菓子なんてあったっけか」
軽く会釈をして外を出るとアンリが股を広げてダルそうに座っていた。
クラムとエル君も荷台から降りたみたいで
キョロキョロと周りを見渡しどこか落ち着かない様子で立っていた。
「どうだったぁ?合ってたかぁ?」
「合っていましたが…ま、魔女が管理していました…本だけ持ってさっさと全員で来いとのことです…。」
「まじかぁ!そいつはすげーなぁ!?」
「ひぃ!?ま、まじょ…。」
「私達も一緒じゃないとダメ…よね?ほ、本当に大丈夫なのかしら…。」
荷台から魔術で封印された小さな箱を取り出し
再度、重い足取りで再度オンボロ屋敷に入るのであった。
投稿当時の第一目標であった総合評価100pt達成しました。
初作品だったのもありこんな読んでくれる人がいるとは思っていなかったので嬉しい限りです。
4章ぐらいまでのプロットは完成しているので引続き読んで頂ければ幸いです。