1-10 エルフ村の闇事情
少し長くなりましたがエルフ関連の話は一旦終了です。
よほどお腹が空いていたのか
あっという間にサンドイッチどころか
一緒に入っていた果実やらもすごい勢いでエルフ兄弟は全部食べ尽くしていた。
「ダメ…しばらく動けないかも…ゲフッ…」
寝そべりながらゲップのコンボを決めている姿をみて
私の中のエルフという華麗な一族の印象が崩れさりつつある。
これが現実と受け入れるのはまだまだ時間がかかりそうだ。
「おねえちゃ…下品、いろいろと、失礼…」
「あたしでもここまで下品なことはしないぞぉ…」
これにはアンリもドン引きであったらしい。
「まぁ、それだけ今まで過酷だったのかも知れませんし…いいんじゃないでしょうか…。正直みたくはなかったですけど…」
もうエルフ娘という憧れを汚すのは止めて欲しい。
「何よ!?皆して!!酷いんじゃないの!?」
ガバッと上半身を起こし反抗するも皆の見る目は変わらない。
何か言い訳を考えてるみたいだったが
皆から向けられる冷たい視線に耐えられなかった少しシュンとなり
「その…失礼致しました…。そして食事の提供、衣類の洗濯等ありがとうございました。
強襲の件は誤って済む問題ってのはわかっているわ。事情があったとは言え殺害を試みたのは変えられませんし…。」
「す、すいません、でした。」
深々と頭を下げる2人。
「その…今から話すことにより許して貰えるかはわからないけど…
あなた達が求めている情報とやらを話そうと思うのだけど良いかしら?」
先程の下品な姿が嘘のように真剣な眼差しで語りかけてくる。
「エル…いいわよね…?」
「う、うん…きにしないで、だいじょうぶ。」
空気が一気に変わり張り詰めた空気が包み込む
思わず、ゴクリと生唾を飲み私も覚悟を決めたときに。
「ちょっと待ったぁ!!」
大声で空気を壊したのはアンリであった。
「なんなのよ!!せっかく話そうと決意したのに!?こっちだって心の準備がいるんだからね!?」
「おぉ…なんかすまん。しかし、お前は話す上で肝心なコト忘れてるぞぉ~?」
「え?何よ?なんなの…?」
検討がつかないみたいであたふたしている
正直、私もなんのことかわからない。
また、下らないことじゃないだろうかと若干不安が頭をよぎる。
ふふふと笑みを浮かべながら
「名前教えて貰ってないんだがぁ?まずはそこからだろぉ?」
「言われてみればそうでしたね…。」
姉さんと言うと怒られるし
正直、なんて呼べばいいか迷っていたので
珍しくアンリが良い提案をしたと関心
「な、なんだ、良かった…。ここに来て全裸にでもさせらるのかと思ったわ…。えっと、私は“クラム・テク・ファイゼイ”狙撃手よ。呼びやすいように呼んで頂戴。」
「えっと、ぼ、ぼくは“エルクロック・ガ・フォーサー“って言います…。ま、魔物使いです…。」
いつかは出会うとは思っていたけど長い横文字の名前本当にやめて欲しい。
この一瞬じゃ正直フルネーム覚えられねぇって…。
そして、エル君は魔物使いか
ちょくちょく襲って来ていた下級魔物は恐らく操っていたのであろう。
「クラムと、エル君は…もう呼び方変える必要もないのかぁ~
あたしは“ジュリア・アンリ”元盗賊今は…なんなんだろうなぁ?まぁいいか!
無愛想なコイツはエメリー。あたしの相棒!よろしくなぁ」
どこか満足そうであった。
あと私は無愛想なんかではない。
そう思いたい。
「えっと、よろしく?なんか、喋りづらくなったわねまぁ…いいわ。ゴホン!では改めて…」
再度、気持つを入れ直し喋りだす
「今、エルフは内戦状態にあるわ」
「はぁ?」
「え?内戦ってどういうことですか!?食料困難!?いや、王家争いとか!?もしかして、上位の魔物達に洗脳されてるとか!?」
「やたら食いついてくるわね…。いや、そんな理由じゃないわ…。それより、もっと深刻な問題よ…。」
それ以上の深刻な問題だと…。
「今から話す内容として、前情報として知っておいて欲しいのだけど、私達エルフは人間みたいな生殖行為って必要ないのよね。
と言うものの、私達の故郷にある森には“生命の大木”って呼ばれている幻大樹があるんだけど、そこから私達エルフは生を頂き誕生するのよ。
普通の木々とは違い大きな魔力の集合体が木の形してるだけだから枯れるってこともないし、気がつけば勝手に一族は増えていくから反映は困らないワケ」
「なんか凄いですね、私には想像出来ません。」
「でも、それがどうやったら内戦の話と繋がるんだぁ?」
「もう何年前の出来事だったか詳しくは覚えていないのだけど…。1冊の本?読み物と言えばいいのかしら?がエルフ族の村に流れついてきたの。」
「本ですか…」
「うん、その本の文字と羅列が特殊構造にになっていてちゃんと解読は出来なかったんだけど。
精密な描写が絵で書かれていて。その絵から想像するに、エルフでも人間みたいな生殖行為が出来きるって記載された本だったのよね…。」
「それって、エロ本ってヤツなんじゃないかぁ?」
「そういうものが人間界で普及しているのは知っているけど文章での読み物でしょ?」
「確かにそうかぁ。絵が挟まっているのって魔導書関連か生物、武器図鑑しか思い浮かばん。
イラスト付きのエロ本ってどんなんになるんかなぁ…」
この世界には地球でいう漫画形式なのは存在しなく
エロ本というと官能小説みたいな形式が一般的である…らしい。
前に、アンリが力説してくれたから間違いないのであろうけど。
「最初は誰かが適当に書いた落書きが流れ込んだと思いってね。みんな、興味もなかったんだけ、その…ほら…」
少し気まずそうに弟に視線を移す姉。
「ぼ、ぼくが、いたから…。」
何か嫌な予感がしてきた。
自慢じゃないけどこの予感は的中率高い。
変な汗が出てきてのを肌に感じる…。
「そう、この書物の影響力は凄かったのよ。誰もが興味なさそうな振りをしていたけど、実は興味津々だったという事実でね。
日に日に、エルに対するセクハラが酷くなっていって…。
次第には、誰が最初の相手をするかで争いが勃発、最初は口喧嘩程度だったのも小さな暴力沙汰な事件に繋がり最終的には各々の武力行使。そして、内戦にまで発達してしまったワケ。
そんなコトもあり、エルは精神的に参ってしまったみたいで、口数が少なくなっちゃったし…。」
「なんか哀れだなぁ…。」
さっきアンリが言っていた家族でのやり取りが本当だったことにならないか?
いや、この様子だとそこまでの事案にはなってはいないのか?
どちらにせよ認めたくない事実なことには変わりない。
「哀れというか…エル君の意見とかはどうしてたんですか?」
「一番下のこの子に意見出来るはずないじゃない…。酷いわよね!?それに、エルをずっとお世話してたのは私なのよ!?
なのにどういうことなの!?今まで心底どうでもいい扱いしてたクセにそんなことなかったように接して来るのよ?今更、エルの可愛さに気がついても遅いのよ!!
まぁ、そんな生活に嫌気がさして2人で村を抜け出してきたワケ。今頃、村では大騒ぎでしょうね!私からしたらざまぁみろって感じなんですけど?」
怒りたい気持はわかる。
いろいろと、本当にいろいろと恐ろしい出来事である。
「というと…えっと、クラムさんは今はエルフ界のお尋ね者ってコトですか?」
「エルフは引きこもり体質が多いから表にはそうそう出て来ないなら大丈夫でしょ。
もし、来たとしても返り討ちにしてやるわよ!…絶対に誰にも渡さないんだから…。」
「それに関してエル君は納得行っているのかぁ?」
「は、はい…おねえちゃ、には、いつも助けて貰ってるから、感謝して、る。」
普通に聞くとなんかいい話のように聞こえるんだけどなぁ
さっきの洗体の様子を見てしまったからなぁ…。
「今までの話を聞いたうえで、確認して起きたいことが一つあるんですけど、今回の本当の依頼物って何か知っていましたか?」
「えっ?なんのこと?食料と物資の運搬じゃなかったのかしら?」
「その、エロ本を取り返しに来たとかじゃないのかぁ?」
「ん?本ならまだ村に保管しているし、人間の書物だったとしても、読んだところで新しい魔術が扱えるワケでもないし興味ないわよ。
その、初めての表世界で急な出来事が多かったから本当に食料に困っていたのよ…これは本当よ!?今になって嘘なんてついてないわ。」
「うぅん…にしても問題の魂胆が本ですか…偶然、にしては出来すぎてる気がするんですけど…?」
「嘘言ってるとも思えないんだよなぁ、なぁ~、もう封印解いて中身見ちまうかぁ?」
「いや、やめましょう…大きな事件に巻き込まれそうな予感がします。
それに私達には封印を解くすべはないでしょう?あくまで私たちは傭兵です。
国絡みの大きな問題は聖騎士団とか魔術教会にお任せしましょう。」
確かに一理あるかもしれないけどデメリットが多すぎる
なにより、国家絡みの争いになんて巻き込まれたくないし!!
「なんだよぉ、つまんねぇなぁ~。でも、エイミーこれからどうするんだぁ?」
「これには困りましたね…。奇襲の情報だけ引き出してこのまま開放しようと考えていましたけど
エルフの村にも帰れないでしょうし、かと言ってこのままだと野良死にしそうですし。
とりあえず、アクアヴェールギルドまでついてきて貰いますかぁ…。判断はそちらのギルドの指示に従いましょう。」
「奇襲されたってコトからエルフ内戦状態にあるってコトを伝えるのかぁ?」
「いや、私達はそこは道中で倒れてたのを保護したってコトにしましょう。ギルドでどこまで話すのかはこの2人に任せます、それでいいですよね?」
「わ…わかったわ。私達もエルフの外の世界には詳しくないからそうしてくれた方が助かるわ。でも、本当にいいの?私達は…」
「まだ、気にしてるんですか?」
「そんなコト言われても…。エルフ界でも無駄な殺生はご張っただし…」
「クラムさんよぉ、少し表世界の常識ってのを教えて上げようじゃなぁいかぁ!!
表世界は弱肉強食!弱いものは殺され強いものが生きる。
そしてだ!!第一等級傭兵になるようなヤツがまともな神経なワケがないってコトだな!」
「はぁ、そういうもんなのね。少し納得だわ」
「ちょっと、酷いんじゃないんですか!?少なからず他の第一等級の方々よりまともだと思いますけど!?」
「はいはい。ソウデスネ―」
なんか腹立たしい…
あの自称ヒーローとかと評価一緒なの…凄く嫌だなぁ…。
「はぁ…まぁ、いいです。時間も結構経過してしまいましたし。とりあえず、アクアヴェールに向かいましょうか」
立ち上がり、焚き火を消しす。
「あ、その前に…着替えないと不味いですね…。」
ここまで読んで頂きありがとうございました。
不手際により、大きな世界観の説明が出来ないまま物語が進みそうなので
世界地図と世界紹介を地道に作成してます。
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