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1-9 家族

エルフ回続きました。


自分の欲望に忠実な惨めなアホ2人は

エルフ少年の洗体を巡って口論を重ねるに連れ

お互いに胸に秘めている思いが同じだと気がついたのか

最終的には意見が一致し謎の一体感と見事な連携により

各々の欲望を完遂させていた


随時、エル君が怯えていた事実を

本人達は知る由もないであろう。


そんな2人はと言うと


「あたしの本気をくらいなぁ!!!!!」


「ふっ、甘いわね…。回避出来ないとも思っているのかしら!?」


魔力で湖の水を野球ボールぐらいの大きさにして

投げ合い雪合戦ならぬ水合戦をしていた。


あいつら元気すぎるだろ…。

特にエルフの姉の方もメンタル回復早すぎない?

仮にも今置かれてる状況本当に理解しているのだろうか?


ちなみに私も面白そうだったので参加しようとしたら


「やめろぉ!?死人が出るぞぉ!!!お前の投擲なんぞ喰らいたくないわ!!」


「そうよ!!それにこれは各々のプライドをかけた真剣勝負なの!!邪魔しないで頂戴!!!!」


見事なまでの参加拒否で仲間に入れて貰えず

不貞腐れ切り株に腰掛けてその様子をみているのであった。


私だって傷つくんだぞ…


せっかく水着着たのに

防具洗うことしか出来てないじゃないか…。


隣では大きな布に身を包み虚空を見つめつつ

ガタガタと体を震わせながら膝を抱えているエルフの少年は負のオーラを放っている。


「こわい、洗体…こわい…。」


いつも以上に覇気はなく目に光がない。

声量は大きくない彼が更に小声で囁いてるので

見ているこっちも恐怖が伝わってくる。


どうやらトラウマを植え付けてしまったみたいだ。


「ご、ごめんね?だ、大丈夫でしたか?」


「ゥン、ダ、ダイジョブ」


こんな時は、なんて声をかければいいのだろうか。

綺麗になって良かったね、気持ちよかった?

なんて言って日には更に酷いトラウマを植え付けることは間違いないだろう


うぅん、困ったぞ…。


「そ、それに、いまの、おねえちゃ、すごく、たのしそう。」


水遊びに没頭している姉をみて少し安心しているようで。

どこでも良いから体に水弾を1回当てれば勝ちの水合戦は

未だ水面で激闘を繰り広げるていた。


私には死人が出ると参加拒否していたのに

お互いに全力で豪速球の投げ合い。

時々、魔法を使っているのか投げた弾がいきなり屈折したりと

変な挙動してるのもあるしどうなってんだよアレ。


「ふふ、わらってるかお、ひさびさにみた」

どことなく嬉しそうにボソッと呟く。


「そうだったんですね…」


家族かぁ…。

地球の頃は反抗期を迎える頃には両親共に病死

その病気遺伝の関係で後に他界している。


こちらの世界では

1年前にこの姿で召喚された形になるので兄弟おろか親なんていない。


正直、私には家族というのが

どういう存在なのかは理解出来ないけども

このエルフ姉妹を見ていると良いものなんだなぁとは思う。


「でも、荷物奪おうとしたのは事実…。おねえさんに謝って済む問題じゃないのはわかってる、けど、本当に、ごめんなさい。」


頭を下げる姿は少し同情してしまう。

姉より弟の方が賢いのでは?

エル君のが現状理解度高いじゃないか!


「あぁ…いいのいいの。本気で殺されかけたのは何回もありましたから。

信じられないかも知れませんけど、今お姉さんと一緒に遊んでるアイツは

お姉さんよりも酷い方法で私を殺そうとしたんですよ…」


「ひぃ、ようへいさん、たいへん…。」


「なので、こんなのは私にとっては日常茶飯なのです。そんなに気にしないで下さい。」


あははと笑って誤魔化そうとするけど

返って不安を増幅させてしてしまったみたいで再び俯いてしまう。


うぅん、気まずさが悪化したぞ…。

このまま過ごすのも私の精神が持たなそうである。


よいしょっと、立ち上がり。2人に叫ぶ


「いつまで遊んでるんですか!?そろそろやめて戻って来て下さーい!!

エル君このまま拐ってもいいんですかぁ?」


「はぁ?そんなのダメに決まってるじゃ……ぶへっ!!!!」


一瞬のスキをついたアンリの投球が見事に顔面に直撃。

顔面に放たれた水弾は直撃の威力に負け破裂し顔全体を濡らし

その衝撃に体が耐えられるワケもなく尻もちをつき水面を揺らす。


「よしっ!あたしの勝ちだぁ!!」


「ごほごほっ…ちょっと、ズルいじゃない!?」


「勝ちは勝ちだ!まぁ、ウチの隊長さんは怒ると怖いから早く戻ろうぜぇ」


尻もちをついた姉に手を差し伸べるアンリ


「納得行かないわ!今度また勝負しなさい!!って、つい夢中になってたけど遊んでる場合じゃなくない!?これも作戦なの!?」


手を取り立ち上がりながらも

今の状況下を思い出したのか慌てるエルフ姉。


「どうだろうなぁ?あと、お前って相当馬鹿だろぉ?」


「あんたには言われたくないわよ!!」


ここ数分であの2人めっちゃ仲良くなってないか?

やっぱり、変態通しは惹かれ合うのか?


「おねえちゃ、タオル、これ、使っていいて。」


「えっ…あ、ありがとう…。」


戻って着た姉に運動部のマネージャーの如く

タオルを差し出す弟さんは本当によく出来ている。


「エイミー私のはぁ?」


「はぁ、はいどうぞ…。」

顔面に向かって放り投げる


「おっとと、なんだよぉ、優しくねぇなぁ…。」


「とりあえず、真剣勝負と言うのも終わったみたいですし

そろそろ、聞き込みに周るとしましょうじゃないですか?」


「うっ…。」


持って来ていた小さな袋を漁り。

癒やしの焚火着火セットを取り出す。


今まで椅子に使用していた

切り株に少量の着火剤を塗り専用の

紫色の火打ち石にて着火させる。

ボッと小さな紫色の小さな炎が灯り心地よい匂いと共に濡れた体を温める。


「まぁ、その前にお疲れでしょうし、昼食を取るとしますか!!」


ポンポンとボク神父から頂いた大きなバスケットを軽く叩く。


「動いた後だから助かるわぁ~。っていうか、お前いつも準備いいよなぁ~」


「誰かさんが全く事前準備しないので?やらざる負えないだけなんですけど?」


「はいはい、あたしがわるぅございましたぁ。~」


そんな私達を困惑した様子で見ている彼女に気がつく


「何、突っ立ってぼーっと見てるんですか?

あ、種族的な理由で人間の食物はダメとか?」


「ち、違うわよ。ただ…いろいろとあなたの行動が理解出来ないだけ。

それに?私はお腹空いてないから大丈夫ですし?」


「あぁ、考えても無駄無駄。こいつはいつもこんな感じだしなぁ。

一緒に行動してきたあたしもでも理解できねねぇ、あはは!

ほら、座れ座れ。飯食えねぇじゃねぇか!」


「で、でも…。」


ぐうぅうううと響渡る腹の音

意地を張っていいるのがバレて少し恥ずかしそうに赤面している。


「おねえちゃ、多分だけど、この人達は、良い人、だと思う…。

本当に、意地悪なら、もう、ボク、とっくに連れ去らわれてる…。と、思う……。

それに、ボクも、いろいろと、心配…。」


「そうね…そうよね…。」

弟が必死の訴えに納得したのか

気まずそうに弟の隣に座り込む姉


「出発前にとてつもない量頂いて腐らせそうなんで食べれそうなの適当に取って下さいな。」


エルフの食事情はわからないのでバスケット毎手渡しする


「頂いたって誰からだぁ?」


「ボク司教からです。教会で祈りを済ませた後に渡されました。」


「あぁ、なんだぁあのおっさんかぁ。お前、あぁ言うのが好みなのかぁ?なんやかんやで隅に置けないねぇ?」


「ち、違いますよ!!作りすぎちゃったって渡されたんです!!」


「ふぅん?」


そのニヤケ面腹立つからやめろ。

男性から手作りってことでもっと食いつくイメージだったけど

予想外にアンリの好みはどうやら違うみたいであまり興味無さそうであった。


「じゃ、じゃあ…、頂くわね…」


「エル君も好きなだけ食べて下さいね」


「は、はい。い、いただきます…。」


恐る恐るサンドイッチを手に取る彼女達の手は震えていた。

そうだよなぁ、彼女達からしたら今この状況全てがイレギュラーの連発。

殺そうとした相手からこんな施しを受けるこの状況なんて予想なんて誰が予想出来るだろうか。

警戒しているのか、手を持ったまま口に運ぶ気はないようだ。


「毒盛られてるかもって怯えてるじゃないですか!盗賊やめたんですし、当時のシンボルであった顔のソレ消してもいいんじゃないんですか?」


「はぁ?馬鹿言うなよ?格好いいだろぉ?当時とはデザイン変えてるんだけどなぁ…。それにあたしは食事に毒を盛るってのは絶対やらねぇ!食べ物は粗末にしちゃダメだからなぁ。」


それは、彼女成のプライドなのか

今までの苦労からなのかわからないけど凄い正論であった。


いつ抜き取ったかわからないサンドイッチを

周りの目をなど気にせず一人パクパクと食べ始めていた。


「全くあなたって人は…。まぁ私も頂きますか」


私も適当に手に取り食べ始める。

今はまず、食べても大丈夫という安心感を持たせるのが今は大切なのかもしれない。


「うぅん…なんか違うなぁ…。エイミー作ったほうが美味いってどうなんだ?」


「仮にも頂いたものなんですから…悪く言うのはやめましょうよ…。」


そんな食べる様子をみてようやく食べる様子をみせる2人。

最初は小さな口で黙々と食べていたけど、相当お腹は空いていたのか

次第にバクバクとがっつくように食べ進めるのであった。


「どう、エル美味しい?」


「うん!すごく、おいしい!」

その笑顔にどこかで気張っていた精神が緩んだのであろう


「そう…よかった。本当に…よかった…」

緊張が少しでも解けたのだろうか今にも泣き出しそうなのを我慢する彼女


「残さずいっぱい食べて下さいね!あと、水分補給もちゃんとして下さいよ。」


「お前は父ちゃんかよぉ…」


そっか、こういう役割ってこっちの世界だと男性なのか。


頂いた食事もこんな形で消化されるとは思っていなかったけど

感謝を込めて心の中でボク司教に感謝の祈りを捧げつつ

いつもより少し賑やかな昼食時間を過ごすのであった。

ここまで読んで頂きありがとうございました。

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