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第三話:王都到着。女騎士団長アーシアとの出会い

 それから俺たちは王都への旅を続けた。


 しかし道中、エルマは少し不安を覚えているような様子を見せる。


「ねぇ兄さん。私達、本当に勇者様のパーティーに入れて貰えるのかな……」

「ん? 何だいきなり……」

「だって、勇者様と言えば悪い人や魔王軍と戦う立派な人達なんだよね? だったら、私なんかが仲間に入れて貰えるのかなって……」

「……? ああ」


 少し目線を下にしてしまっているアルマを見て、俺は合点がいく。

 この間、荒くれ達に囲まれた時に怯えてしまった事を気にしてるのだろうな。


「大丈夫だ、エルマ。お前はその癒やしの力を使って、俺や仲間達を助けてくれれば良いんだ」

「……」

「心配するなよ。戦いになっても、今までみたいに守ってやるさ。大切な妹を傷つける奴は、俺が絶対に許さないから」

「……うん!」


 励ましの言葉にエルマはそう言って、元の可愛らしい笑顔を取り戻してくれた。


 そうさ。俺が必ず守ってやる。

 この命と引き換えにしても。

 

 本音を言うならエルマには戦いに参加して欲しくは無いのだが、スキルである「癒やし」の範疇には、「仲間の力や素早さを上げる」という補助的な能力も混じっている。

 勇者達のパーティーに参加したら、間違いなく戦闘メンバーの一員になるだろう。

 エルマの「世界の為に協力したい」という願いを無視するには、あまりにも頼りになる力だ。


「これからも俺のサポートをしてくれ、エルマ。お前が居ないと、生傷が治らなくなる」

「アハハッ! ……うん、わかった! 兄さん!」


 笑顔を向けるエルマを見て、俺は更に決意を固くして旅を続けたのだった。





 そして俺たちはついに王都へと到着した。


「……凄いな! なんて広さだ……」

「うわぁ、凄くおっきいね……!」


 青空の下、遠くに見えている筈の王都は俺達に距離感を狂わせるほど広大な外壁に囲まれていた。

 その外壁には所々に兵が詰めているのだろう、小城のような出っ張りも見える。


「……あんな大きな国が、本当にあるんだな……」

「ねー……」


 およそ俺たちが村に暮らしていた時には、想像も出来ないほどの大国だった。

 流石は大陸の中心地でとなえ、ただ一国としての統一を果たした国だと思わずに居られない程に。


「行こうか、エルマ。あの国に俺たちの仲間になる、勇者達が居るんだ」

「……うん!」


 それから俺たちは、一向に近づいているような気がしない王国の入り口扉に向けて歩みを進めた。


 そしてやっとの思いで巨大な城門に辿り着いてみれば、立派な鎧姿をした警備の兵士に呼び止められる。

 上の方には同じ警備兵だろう、何人もの兵士がこちらを見ていた。


「止まれ! 旅の者か?」


 精強せいきょうそのものと言った風の兵士は、俺たちをジロジロと見比べる。

 怪しい者では無いと示すには、まずは身分を名乗るべきか。


「俺たちはここから一月程の村から、この王都に向かって旅をしていた者だ。勇者達の仲間に入れてもらう事が目的で」

「私達、世界の平和を取り戻す為にやって来たんです! 信じて下さい!」


 それを聞いた兵士は、怪訝けげんな顔で俺を見る。


「ふーん……? それにしては、戦いが得手えてなようには見えないが……。特に、そっちは妹か? まるで戦闘には無縁な見た目だが」


 仕方ない、ここは自分の力を示すか。


 俺は自分の「獣化」のスキルを発動して、自らの頭を狼のように変貌させた。


「うおぉっ!?」


 屈強そうな兵もこれには驚いたようで、手に持った槍を放り投げて尻もちを付いた。


 上の方からもザワザワ声が聞こえる。


「見ての通り、俺はスキル持ちだ。こっちの妹も、癒やしのスキルを持っている」

「大丈夫ですか?」


 エルマは鎧の上から尻の辺りを撫でていた兵士に向かって、みずからのスキルを使った。

 温かな光が兵士の体を包んで、すぐに消える。


「……おぉ、痛くなくなった。それになんだか体が軽いな」

「ご迷惑をおかけしちゃいましたから、体に力が入るようにもしておきました」

「ふむ……確かに、槍が軽い。……どうやら、話は本当らしいな」


 放り投げた槍を手に取り、上下に動かす兵士の顔は驚嘆きょうたんそのものというふうだ。


「よし、少し待っていろ。勇者様達に話をしたいのならタイミングが良い。今外壁の内側には、我々王国の騎士団長アーシア様が査察に来ておられるのだ」

「騎士団長?」


 知らない肩書かたがきに、俺は思わず問い返した。


「この国の兵を束ねるお方だ。我々一般兵などとは比べ物にならないお方だぞ」


 兵士はまるで自分の事を話すように、誇らしげな声色こわいろで説明してくる。


 そして兵士は俺たちを待たせて外壁の入り口に入っていくと、少しあってから一人の女性を連れて出てきた。


「この二人が、勇者達の仲間になりたいという者か」

「はっ! 兄妹二人共がスキル持ちであり、勇者様へのお目通りを願っております」

「……ずいぶん優しいな、ボルモス。勤勉精強で頭が硬いのが、お前の長所だと思っていたのだが」

「はっ」


 ボルモスと呼ばれた兵士は、少し恐縮そうにアーシアというらしい女騎士団長にかしこまる。

 さっきは驚きで槍を落としていたが、普段はここを通る者を容赦無く尋問しているのだろうな。


 スキル持ちの人間はごく珍しいという話を聞いた事はあったが、本当らしい。


「田舎者故の無礼があれば、申し訳ありません。俺の名前はアルス。こっちが妹のエルマで、勇者様の仲間に加えて頂きたくて村から旅をしてきました」

「よ、よろしくお願いしますっ、アーシア様っ!」


「この者は見ての通り、獣のように姿を変えられるスキルのようです。そして妹の方は癒やしのスキルを使い、私の体を癒やしました」

「ふむ……どこか怪我をしたのか?」

「いえ、小さな物です。お気にする程の事では」


 ボルモスは自分が尻もちを付いた事を隠す。まぁ、確かに気にする事でも無いが。


「そうだな……」


 明らかに隣の兵士ボルモスよりも偉そうな、特注品らしい鎧マントを着込んだアーシア騎士団長。

 その顔は美人そのもので、その声はりんと響くような生真面目さを感じさせる。


「世界の為に、はるばる遠くから来たか。……良いな、私はそういう人間が好きだ」


 男のような言葉遣いの中に、確かな気品を伺わせる女性。

 俺は一瞬その姿に見惚れてしまっていた。


「……」


 隣のエルマが何か言いたそうにしている。

 何が悪いんだ。


「しかし勇者、か……」


 アーシア騎士団長の方も、何か胸につかえる物があるかのように言葉を曇らせていた。

 何か問題があるんだろうか?


「……まず、言っておく。勇者達というのは、話に聞く程に清廉潔白な人物ではない」

「構いませんよ。当然だと思います」

「私達も、流石にお話に聞くような聖人様とは思ってません!」


 勇者だって人間だからな。

 一つや二つは欠点ぐらいあるだろう。


「……そういう事ではない、が……。まぁ、私も全てを知っている訳では無い。いいだろう、話は通そう」

「ありがとうございます!」

「やった、兄さん! 私達、勇者様達に会えるのね!」


 俺とエルマは互いを見合って、笑顔を浮かべる。


「一緒に来るがいい。新たな英雄の兄妹よ」


 そうして俺達はアーシア騎士団長に引き連れられ、王都の中へと入って行った。


 これから、俺達は世界の為勇者達の仲間に入れてもらう。

 そう考えると、エルマと知らず知らず繋がっていた手に力が入るのだった。



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