第三十四話 最後の一人に償いを
ほんの少しだけ灯りが灯っている、薄暗くて隠された城の地下通路。
俺が通った大穴は天井にポッカリと開いており、周りからボロボロと石が剥がれ落ちて行っていた。
「……エルマの仇を、取らせて貰う……!」
降り立った先にいたのは、ついに再会を果たした憎き国王の姿。
「貴様、どうしてここが……!?」
国王は驚きに目を見開いて、こちらに困惑の声を上げていた。
その足元にはガラガラと音を立てて落ちた財宝らしい物が、キラキラと光りながら転がっていて、これだけでもと持ち出したと想像するのは容易な事だった。
俺はそれに冷たい目を向けたまま、質問をしてきた国王に答えを教えてやる。
「簡単だ。お前が逃げて行った方角を、出会った奴全員に聞いて回ったんだ」
「……!!」
それで国王は、俺が瞬く間に場内を駆け回った事に推測がついたらしい。
配下の者達に裏切られた事に、少なからず驚きの色を滲ませる国王。
「ハハッ」
俺はなんだかおかしくて仕方がなかった。
実際、兵士達は自分の命さえ助かるならと喜んで国王の逃げ去った方角を俺に教えて来たのだ。
そのままほぼ全員が騙し打ちをかけようとして来たので、その報いを受けさせてはやったのだが。
「優しく質問したら、心良く教えてくれたな。良い配下を持ったじゃないか」
「ぐう……!」
国王はそれにワナワナと体を震えさせ、財宝を落として空になった手をギュッと握る。
その様子は今にも俺に向かって襲いかかって来んとするような勢いだった。
「……」
キィィィン……
決着を付けてやる為、俺は右手に魔力を集中させ始める。
だが、
「……待て! すまぬ、儂が、悪かった……!」
国王は突然地面に膝を突いたかと思えば額を地面にこすりつけ、その口から謝罪の言葉を吐き始めてしまった。
「勇者フリオの横暴には、儂も腹に据えかねていたのだ……! お主の妹を死なせてしまった事には、王として反省をしておる……!」
「……」
「お主の先程までの戦いぶり、見事であった……! 悪逆たるフリオも既に討伐を果たしたのであれば、どうかこの国の新たな勇者として名を馳せてはくれまいか……!」
目の前で安い芝居を始める国王。
だが、それに俺はあえて乗るような言葉を吐いてやる事にした。
「本当に反省しているのか」
「!!」
その言葉と同時に、頭を下げた国王は体全体に喜びの色を浮かべたのがわかる。
「本当か!? 儂を、許してくれるのか……!」
「ああ」
俺は変化させていた腕を元に戻して手を差し出す。
「俺をこの国の勇者にしてくれると言うなら、話は別だ。今までの事は綺麗に水に流してもいい」
自分でも吐き気を催すような言葉だったが、国王にとっては救いの言葉に違いなかった。
「……本当か、恩に着る……! 我が国の兵士達が荒くれのようになってしまったのは、何を隠そう王国軍の兵団長に汚染されていたのだ……! だが兵達も、これからは人間をモンスター共から護るための心構えを教えてやるとしよう……!」
顔面一杯で卑屈な愛想笑いをして俺の気に入りそうな言葉をとにかく吐く国王だったが、俺は既に気付いている。
「……おぉ、これが並み居る兵達を尽く討ち果たした勇者アルスの手か……! なんという力強さだ……!」
俺の手を握り返し、熱い握手を交わす方とは別の腕。
後ろに回されたその先には、短い剣が物が握られている事に。
「俺の故郷に来て、妹に直々の謝罪をしろ。それが俺の、お前に従う唯一の条件だ」
「あぁ、あぁ……もちろんだとも……!」
その言葉に気を良くした、と言わんばかりの顔をあえて浮かべる。
そして「だったら、まずは外に出よう。戦いが終わった事を国民達にも伝えないとな」と告げながら国王に対し後ろを見せて隠し通路の先へと向かおうとした。
「……ハァッ!!!」
当然、国王は立ち上がって俺の背中へと走り寄ってくる。
ドスッ……
「……フハ、フハハハ!! 若造が、駆け引きという物がわかっておらぬな!」
背中に走る鈍い痛み。
想定通り、国王は俺の背中に剣を突き立ててくれたようだった。
こいつは俺の回復能力を知らない可能性があると思っていたが、まさにその通りになったな。
「……それで終わりか?」
「!?」
騙し討ちが全く成功していない事に、驚愕の声を漏らす国王。
ガシッ……
だから俺は、その顔を鷲掴みにしてゆっくりと持ち上げてやった。
初老を迎えている国王は宙に浮かび、必死に体をジタバタ動かして抵抗を示す。
「ぐっ……くぅっ、くそっ……!」
手にした剣を落としてしまい、俺の手の向こうで必死の形相を浮かべているらしい国王だったが、さっき収束させた力が額辺りに集まってくるのを感じた事にまたも三文芝居を繰り返し始めた。
「よ、よせっ……! そうだ、これからはお主がこの国を支配すると良い! 国王の特権はこの世で最も強い力だ、お主とて富と名誉は欲しい筈だ! だっ、だから……!」
「ああ、それは結構魅力的だな」
「だっ、だろう!?」
嘘を平然とつくのも、こいつ相手には全く良心が痛まない。
だがさっき伝えてやった通り、俺の望みはたった一つだけなのだ。
「望みを言おう。まずはお前のせいで殺された妹、エルマに今すぐ謝罪を述べろ」
「すっ、すまん! すまん、すまん、この通りだ……! 助けて、くれ……」
ギリギリと頭を握る力に、国王は苦痛を浮かべながら妹のエルマに対しての謝罪を述べる。
しかし、それが俺の望みを果たせる物だと思っているなら大きな間違いだ。
「だったら……」
キィィィィィ……!
手に集めた魔力を、限界近くまで溜め込んでいく。
「次は、あの勇者や配下達と。一緒に地獄から謝るといい」
「よっ、よせ……! よせぇーーーー!!
ボォッ……! メラメラ……
「うぐあぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
炎のような魔力をその醜い体に纏わせて、俺は国王の体を黒い炎で包み込んだ。
それは一瞬で国王の体全体を焼き焦がし、体が黒焦げになって行く国王に悲鳴を上げさせる。
「グッ、アッ、アァァァァァ!!
掴まれた顔の部分でさえ炎に覆われた国王は、通路全体に響くような悲鳴を上げる。
俺がその炎に焼かれる事は無い。
「……グッ……ア、アァ……」
国王はやがて体から力が抜けていき、手足がだらんと垂れて抵抗をやめていく。
ブスブス……ドシャッ……
やがて物言わぬ人形のようになった、黒焦げの亡骸を床に放り出した。
「……」
更に小さな魔法の塊を国王に撃ち、その体が確かに死んでいる事を確かめる。
「……エルマ、終わったぞ……」
ついに俺の復讐は終わった。
この国を支配していた薄汚い奴らは、全てが俺によって最期を迎えたのだ。
「……」
国王が絶命したのを確認した俺は、奴が来たのとは反対方向から外に出ようとする。
「……?」
だが――――俺が向かおうとした城側の出口の方角では、一人の女性が待ち構えていた。
「……アルス……」
それは、城下町で避難誘導を行っている筈のアーシアだったのだ。
一応次で完結予定!
最後はちょっと長くなるかも知れません。
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