第三十二話:王の焦り、そして
時間が少し巻き戻って、アルスが防壁上を蹂躙する少し前。
「勇者フリオはまだ見つからんのか!」
「恐れながら陛下。以前入ってきた砦の状況と、あの遠くからも見えた閃光から察するに、勇者フリオ様はもう……」
「っ……! ええい、黙れ黙れ!」
城の玉座に戻った国王は目の前の兵に八つ当たりの言葉を喚きながら、本人にとっては「事件の張本人」である勇者の所在を確かめさせていた。
「貴様達は何故こんなに使えないのだ!? それでも我が王国の兵か!」
その兵士達が、王国の城下町から国民を避難させる人員から割いた人間だと言う事は王にとって重要な事では無い。
唾を吐き散らしながら苛立ちを兵にぶつける国王だったが、そんな所に息を切らせた伝令兵が駆け込んできた。
「陛下! 反逆者アルスが王都の外に現れたとの報告が、今入りました!」
「!!」
玉座に戻ってふんぞりかえり、罵声を上げ続けていた王は飛び込んできた報告に体を固まらせて戦慄した。
――――奴が、奴が来る。
その手足が背筋に冷たい氷が当てられたかのように固まり、動かなくなる。
目の前の伝令が息を整えているのをじっと見つめていた国王だったが、やがて突然電源が入り直したかのように頼みの綱についての報告を求めた。
「魔導砲は、魔導砲はまだ撃てぬのか!?」
だが、国王の目の前に膝を立てて傅いている伝令はそんな事を知る余地すらない。
「……申し訳ございません、私は城の防壁からの伝令を行っているだけです。最上階階がどうなっているかは、私にもわかりかねます……」
「……ええぃ、もう良い! 貴様は用済みだ、さっさと消えよ!」
憤慨して立ち上がった国王は、そのまま伝令を跳ね除けて自ら足を運ぶことにした。
(ええい、どいつもこいつも……!」
玉座から飛び出すように出た国王は苛立ちを抑えることが全く出来ず、重い体をドスドス言わせて最上階へ続く階段を登る。
――――やはり、スキル持ちの冒険者など国にとっての害でしか無い……!
国王にはそう思うだけの理由があった。
この国王、元はアルスやフリオなどと同じ一般市民の出で元冒険者だったのだ。
一時は強大な力を誇っていた国王も、老いてしまえば一人の非力な人間。
神から与えられたスキルは、歳月の流れと共に霧散して使えなくなっていた。
「やっと、やっと……! ワシによる、ワシの王国が誕生したと言うのに……!」
只の一般人が王位につくまでの道のりは、血と裏切り、そして何より金の力が効果を発揮した。
それによって健全な国家であった王国は国王個人にとって「歴史上最も卑しい身分から成り上がった王」を生み出し、元々の国家として存在していた良識を投げ捨てていたのだ。
もはや国王には、自分と同じ力を持つ冒険者達など王位を脅かす簒奪者のようにしか見えない。
「ふぅ、ふぅ……!」
国王は今やすっかり醜く太った体をに汗をかいて、最上階への階段を駆け上る。
「ふぅ、はぁ……! 貴様達、一体何をしておる!? 早く魔導砲の準備を完了させるのだ!」
吹き抜ける風。
壁や天井が一切存在しない空間の中には、数多くの人間がごった返していた。
「魔力装填率七十%! 魔道砲の発射は、後十分で完了致しします!」
そこでは大量の魔導士達が慌ただしく動き回り、一部の者達が必死の形相で魔導砲へと魔力を流し込んでいた。
貧血めいた顔をして、必死に根元にあるエネルギータンクに手を当てる魔道士達。
「早くするのだ! 貴様たち、アルスに城が吹き飛ばされても良いのか!」
「お待ち下さい! あと十分だけ……!」
「待てぬわ! 何のために日夜捕虜を標的にしての魔導兵器能力試験をさせていたと思っておる!」
「今撃てば、火力は九割程度しか!」
「構わぬ、砲身を動かすのだ! 例え人外の力を持つと言えど、魔導兵器に太刀打ちできる者など存在せぬ!」
その場の責任者と押し問答をする国王だったが、そんな所に絶望的な衝撃が響いてきた。
ドゴォォォォン…………!
「!!」
それに国王はバッと顔を向け、衝撃の発生源へと顔を向ける。
城から遠く離れた王都の防壁。
その上では、土煙と共に姿を表したアルスによって兵達がなぎ倒されている光景が広がっていたのだ。
それを遅れて眺めた責任者は、魔導砲の根本でエネルギーを注ぎ続けていた者達に中止を命令した。
「! ……かしこまりました、おい! エネルギー注入は中止、カウントダウンを開始しろ!」
「了解、カウントダウン開始! 十、九、八、七……」
魔導砲の注入を指揮していた者が、発射までの秒読みを開始した。
「それで良いのだ……! お前たちも、国が滅んで研究を続けられなくなるのは困るであろう!」
「次は騎士団から『標的』を頂けると助かりますね。既にボロ雑巾のようになっている者に兵器を打ち込んでも、キチンとしたデータが取れ辛いですから」
少しの間を待つ国王と責任者は、そんな会話を繰り広げる。
「六、五、四、……」
「良いだろう。ワシもいい加減、あの騎士団の存在には頭を悩ませておった」
ゴォン、ゴォン、ゴォン…………
標的に向かってゆっくりと、その砲身が角度を付ける。
貯められたエネルギーを解き放つ為、頭上の魔導砲は機械音を響かせ始めた。
「三、二、一! 魔導砲、発射します!」
「撃て!」
カウントダウンを続ける者の隣で、ようやく忌まわしい反逆者に決着をつける為の号令を下した。
直後、城全体が大地震に見舞われたかのような衝撃に襲われる。
それは巨大なエネルギーを発射する準備が整った魔導砲が、溜め込んだ魔力で全て破壊する為の咆哮。
この世界で最も力を持つ王国軍の、全ての力を開放するかのような轟音だった。
ちょっと小説情報を修正。
教会の大教皇みたいなのも出そうと思ってましたが、尺が足りなくなりそうなので断念。
今月中に完結できるかな?
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