第三十話:防衛戦
「行くぞ……!」
アルスは眼前に広がる、巨大な王城都市に対して決然とした足取りで走った。
そのスピードはおよそ人間とは思えない程の物で、その後ろには大きな土埃が巻き上がっていく。
「撃てぇぇぇ!!」
「!」
聞こえてきた号令と共に、長大な防壁からは雨のような攻撃が放たれてアルスへと殺到して行った。
ゴォォォォ…………!」
黒い雨粒の集まりと化して標的に降り注がんとしているのは、魔法による機能強化を受けたバリスタや投石機から放たれた「対軍勢用」の火力を持った殺意の塊。
「っ!」
それにアルスは咆哮で返礼をした。
同時に右腕が大きく変化して膨れ上がり、少し前に形どっていた黒龍の物に変わる。
「……うぉぉぉぉ!!!」
……ブォン……!!」
急ブレーキをかけたアルスによって、驚異的な速さで振り払われる腕。
その腕は轟音を立てて振り抜かれ、それによってアルスを蜂の巣や地面のシミに変えようとしていた王国軍の攻撃は全て攻撃を打ち払われてしまった。
「う、うわァァァ!?」
ズズゥン……!
防壁全体に響き渡る振動。
防壁上に居た一人の兵士が叫び声を上げていた。
それは何故なら、振り払われた岩々や巨大な矢が自分の居る防壁上にまで打ち返されて殺到していたからだった。
「ギャァァァァ!!!」
「あ、あぁ……! 俺の、足、足がぁぁぁぁ!!!」
それだけで王国軍の中からは、さっきまでの粗暴な言葉からは裏腹な声が上がった。
逃げようとして岩石に足を押しつぶされる者、肩や腕をバリスタの矢が炸裂して失う者。
「痛え、痛えよおぉ!!」
「こっちに来るな! 死ぬなら一人で死ね、馬鹿野郎!」
重傷を負った者が近くで無事だった者の足に縋り付くが、それを足蹴にして距離を離す。
防壁上に立て掛けられていた防御用の大盾は用をなさず、貫通した飛来物によってボロボロの様相を呈していた。
「駄目だぁ! やっぱりこんな大盾、役に立たねぇよぉ!」
「畜生、魔導砲はまだ撃てねーのか!?」
「城の魔導士達なんかアテにするな、とにかく撃ちまくれ!」
「おい、あいつらを出す準備だ! 早くしろ!」
「……?」
アルスは一度打ち返しただけの攻撃がピタリと止まった事に違和感を覚えた。
ーーーーまさか、今ので終わりなのか?
たった一撃で沈黙してしまった防壁に呆気なさを感じる。
だがそれは、防壁上の兵達、いや王国軍がどれほど下劣で薄汚い者達かを物語るかのような事の始まりだった。
ゴゴゴ……
硬く閉ざされていた大きな門が開かれ、中からは軍勢とは呼べない装備をした物者達が姿を表した。
「……」
「奴を殺せば、いいんだな……!」
その中の一人が、悲痛な覚悟を胸に言葉を放つ。
その軍勢には防具と呼べる物が一切装備されていなかった。
全員が全員薄汚いボロを纏っていて、手に持たれた貧相な武器だけが頼みの綱と言わんばかりだ。
そしてその首には同じデザインの首輪が装着されている。
「……!」
その姿を見たアルスは、防壁の上から聞こえてくる声によってその正体を知った。
「へへっ、他の国で反乱を起こした奴らなんか捕まえてどうするのかと思ってたが、なるほどなぁ!」
「行け行けぇ! お前らが必死に戦ってりゃ、その間に魔導砲の起動準備が終わるって寸法だぜ!」
「捕虜歩兵軍、前へ! 貴様らが奴を討伐すれば、お前たちは家に帰れるぞ!」
防壁上で号令を下す王国軍兵団長が、笑みさえ浮かべて叫んだ。
「……この王国は、どこまで腐ってるんだ……!」
アルスは怒りを更に募らせていた。
だが、その中にはアルスにとって見覚えのある者が一人居た。
「アーシア団長……。最早我々に、正義など無かったのかも知れません……」
その男の名はボルモス。
最初に王都へ訪れたアルス達兄妹を迎え入れた、そしてアーシアとの出会いを引き合わせた兵士だった。
「ボルモス、いるだろうな!? 反逆者アルスを王都に引き入れた罪は、自分で決着を付けるんだな!」
王国軍兵団長は身を乗り出して下に声を飛ばし、アルスの耳に信じられない言葉を聞かせる。
それに答えたのは、他の者達と同じく首輪を付けられたボスモスだ。
「……ああ、いるとも! 貴様たちがここまで下衆な集団だと知っていれば、そもそも兵士になどならなかったがな……!」
「へっ! アーシア騎士団長に取り入ろうったって、そう上手くは行かねぇって事だ! 生きてたらちゃんと反省しろよ、ギャハハ!」
王国兵団長とは別の、無傷の兵士が笑い声を上げる。
この兵士はボルモスがアルス達と接した時に上から見ていた者だ。
アルスが反逆者となったその瞬間ボルモスが引き入れた事を密告して、国王からはした金を受け取っていたのだ。
「……」
アルスは、そんな目の前の者達が自分に向かってくる事にほんの少しの躊躇いを覚えた。
そういう意味では王国軍の思惑は上手く推移していたのだが、ここで更に無慈悲な指示を飛ばして捕虜達に絶望を与える。
「我々は優しい王国軍だからな、貴様たちが戦っている間は攻撃を中止して体勢を立て直す! だから魔導砲のエネルギー充填が終わるまで反逆者を足止めしておくのだ!」
その言葉と同時に、王国軍兵団長は手に持った小さな機械に付けられたスイッチを押す。
ーーー……ぐ、ぁあっぁぁぁあ!!
ボルモス達はそれで、首から流れてくる魔力に体中を支配されるような感覚に陥った。
次々と頭を抱え、悲痛な声で苦しみ始める。
「…………コロ、ス……!!」
そして次の瞬間には、ボルモス達はもう人間としての理性を保ってはいなかった。
付けられた首輪は装着した物に魔力を流し込み、戦闘マシンのように闘争本能だけを増幅させる機能が備わっていたからだ。
「……」
アルスはそれを見て、巨大な龍の物となった腕を元通りにさせる。
だが、それは次の攻撃に備えて形を元通りにさせただけの事に過ぎなかった。
「……アンタ達に、正直同情は覚える」
そして、次に両足と腕を変化させた。
その足は獰猛な狼の物。
その腕は巨大な黒騎士のような装甲に覆われているものだった。
「……だけど、止まる訳には行かない……!」
アルスは目の前の軍勢に対して、戦う覚悟を固めていた。
なんだそりゃ!と思ったら下の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎を少なく、
いいじゃん!と思ったら多くの⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎を頂けたら嬉しいです。
感想なども頂けたら作者の励みになります!
ここは良くない、などでも是非お待ちしています!
ブックマークなども頂けたら滅茶苦茶嬉しいです!




