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第二十三話:開戦の狼煙

 

(俺は、どうしたんだ……)


 突然、俺は自分が眠りから覚めたかのような気分になって視界を取り戻した。


 目の前にはゴミのように地面に横たわる兵士達の死骸が点々と転がっている。


(俺がやった、んだよな……?)


――――。


 声を出したつもりだったのに、何か遠くから音が聞こえるような感じだ。

 意識と実際の体のサイズが違い過ぎるんだ。


(……)


 現実感がまだハッキリしていなかった俺だったが、頭の中には一つの物だけがハッキリと浮かび上がっていた。


 それは最愛の妹、エルマの笑顔。

 実の兄妹、実の家族である、強い繋がりを持つ肉親の姿だった。


(エルマ……)


 そして次に浮かび上がってきたのは、玉座の間で俺達を助けようとしてくれたアーシアの横顔。

 そして俺達を送り出してくれた、村の皆の顔。


(……)


 凄惨な蹂躙を行った俺の手に握られた巨剣と足元には、べっとりと返り血が付いている。


 それを見て一瞬、


(俺は何をやってるんだ……)

 という気分に囚われてしまった。


 目の前には人形のように転がる兵士達。

 俺の、あるのかどうかもわからない耳には信じられない程下衆な会話が聞こえて来ていた。


(王国兵なんて、皆チンピラみたいな物だったな)


 それで兵士達には何の同情も湧き上がって来ない。


(……!)


 それどころか、次に浮かび上がるのは心をドス黒く染め上げてくる奴らの顔だった。

 俺がアリの様に蹴散らした奴らを操る、俺が殺しても飽き足りないほど憎い奴らの笑みと笑い声。


(笑うな……! お前達が、お前達さえいなかったら俺は……!)


 妹を殺した兵士のドルベ、それを指示した勇者のフリオ、そして全ての始まりを引き起こした国王。


――――!!!


 俺は現実感の無いスケールになった体を使って空を見上げて、声を上げた。

 それは怒りだけに満ちた俺の心を決意によって純粋な物にした俺の、魂の咆哮だった。


――――エルマ。

 この胸の中に存在を感じる、エルマに向かって言葉をかけた。


(お前はもう、生き返る事は無い)

 俺が復讐を行っても意味が無いと言う者もいるだろう。

 魔王軍に対して戦いを続ける人間たちを攻撃するのは裏切り行為だとなじる者もいるだろう。


 だが、それは俺にとっては到底受け入れがたい話だ。


――――自分が利益を得る為に他人を罠にかける者が、他人の命運を決められる立場に存在してはいけないのだ。


 お前達は、生きていてはいけない人間なのだ。

 

ズゥン……


 俺は足元に散らばった兵士達の亡骸を全く気にもとめず踏み潰して、そこへの歩を進める。

 胸の中で暴走を更に強くする力の衝動に突き動かされながら。


 目指す先は、もう見えている。


 遠くでは、俺の姿を見た勇者フリオがヘラヘラと笑う姿がハッキリと確認できたのだ。


ーーーー!!


 俺はもう一度、今度は砦に向かって限界まで声を出した。


 三人いる内の、二人目に罪を償わせる為に。









「急げ! 早くしないと、あの化け物が来るぞ!」

「馬鹿、見えてるに決まってんだろ! 何なんだアレ!」

「フリオさんの話によると、反逆者のアルスって奴だとよ! 元勇者パーティーの仲間だった!」

「マジかよ、じゃあフリオさんのヘマじゃねえか! 何で俺達が戦わなきゃいけないんだよ!」


 砦の内部、街よりも更に高い防壁に囲まれた中では兵士達が慌ただしく動き回っていた。


「フリオさんも、早くあの兵器を使ってくれよ!」

「足止めしてからだって言われただろ! とにかく防衛準備を進めるんだ!」

「……騎士団の連中、何やってんだ!? 俺たちとは別の場所で好き勝手な事してやがるぜ!」

「構うなよ! お上品な奴らなんか、いざって時には当てにならねえんだからよ!」


 砦の防壁上に配置された、対モンスター用の大型バリスタの準備を進める兵士達。


 それに関わらない兵士達も、巨大なアルスに対して唯一攻撃を行えるように大量の弓矢を手に持っていた。


「畜生、王都なら魔法を使える奴らがいるってのに!」

「今更四の五の言うんじゃねー! 長い事魔王軍の侵略なんか無かったから、全員王都に集められちまってんだよ!」

「だから砦の配属なんて嫌だったんだ! こんな事なら王都で盗みなんかやるんじゃなかった!」

「強盗のせいでこんな所に配属されて、クズ仲間達とオダブツは勘弁してくれよ!」


 懲罰的な理由から砦の防衛戦力として駆り出された兵達は思い思いの身勝手な言葉を吐き散らし、急ぎ自分達が唯一出来るバリスタの発射準備を完了させる。


「おいお前ら、そのバリスタはもう撃てるんだろうな!?」


 そこに自分達の指揮をしている小隊長が姿を現し、準備を進める兵達に向かって怒声のような剣幕で詰め寄って来た。


「チッ……! もう完了ですよ、隊長殿!」

「ならもう撃て! このバリスタなら、あの反逆者を攻撃するのに十分届く!」

「えぇっ、撃つのかよ!? フリオさんの指示は足止めなんだから、もう少し近づいてからのがいいだろ!」


 突然の攻撃命令に、兵士達は不満を漏らす。

 だが隊長と呼ばれた男は更に不機嫌そうな顔になって、一人を突然殴り付けた。


「馬鹿野郎! 俺はお前達みたいなクズの指揮を取るのにうんざりしてるんだ、一番槍の手柄でもっと美味しい汁を吸える所に行くんだよ!」

「ケッ、クズはお互い様じゃねえか!」

「早く撃て、斬られたいのか!」


 腰の剣を抜いて振り回す隊長に兵達は顔をしかめながらお互いを味合わせ、射撃体制を整えて言葉を放つ。


「オラ、もう撃ちますよ! 知らねーぜ俺達!」

「フリオとか言うガキに威張り散らされるのはもう辛抱たまらん、撃て!」


 その指示を隊長が飛ばした瞬間、バリスタは他の兵士達が待機しているのを尻目に大きな矢を轟音と共に発射した。


 その矢は空気を切り裂きながら物凄い勢いで彼方にいるアルスの元に突き進み、やがてその巨体が回避するのは不可能に思える程肉薄する。


「よし、当たる! やっぱりデカブツにはバリスタが一番だ……!」


 数少ない大型モンスターとの戦闘経験がある隊長はニヤリと笑い、まだ叶いもしていない戦功の獲得に心をおどらせた。


 だが、隊長は次の瞬間信じられない物を目撃した。


―――ギィン……


 確かに命中したその巨大な標的には、少し遅れて鈍い音をさせながらも全くダメージを与えられ無かったのだ。

 アルスの装甲は、既に通常兵器では全く歯が立たない程の硬さを獲得していた。


「嘘、だろ……」


 呆然とする隊長だったが、その男は次の瞬間自分が命を落とした事にすら気付けないでいた。


「な……っ。 お前、ら……っ!」


 その腹には、数本の剣が突き刺さっている。


「あんたが悪いんだぜ、隊長。これで命令を破って攻撃したのはあんた一人の責任だ」

「どうせフリオさんに殺されるんだ、あんた一人が責任とっておっにな……!」


 周りの兵達はアルスの脅威に対する備えをしており、その凶行を目撃する事は無い。


 正確に言うなら、全員がそれを無視したのだ。

 それほどに元々この隊長は嫌われていた。


「フン、せいせいしたぜ」


 誰がそう言ったのかもわからないまま崩れ落ちる隊長だったが、次に命の危険に晒されるのは味方殺しを行った兵士達の方だ。


――――!!!


 なぜなら獣のような咆哮を上げたアルスにとって、それが砦との戦いの開幕を意味する狼煙のろしとなったのだから。

ちょっと遅くなりました。

朝の方が良かったかな?

いやそれは作者の都合か。



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