第二十一話:騎士団
「へへッ、やっぱ俺様にはコイツしかねーよなあ!」
一方フリオは、巨大な砦の中央部にある展望台のような場所で自分の為に設置させられた、ある物を撫で回していた。
「勇者殿!」
そんな所に、少女の声が響く。
その声は若いと言うより、幼いと感じるような物だ。
「……あぁ?」
ご機嫌な気分だった所に水を差された。
そう思って不機嫌な声を出しながら振り返ったフリオだったが、目の前に立っていたのは立派な騎士団としての鎧を身に付けている人物だった。
「アーシア殿が、我々の団長が街におられるとは本当なのですか!?」
自分の長の身を案じて、大きな声でフリオに問いかける少女。
その姿はまだ幼さのような物を全体的に残していて、一般人が見れば子供が騎士団の格好をしていると勘違いしかねない程だった。
「……あぁ、アーシアの副官だっけ? お前」
「我々も勇者殿の報告を聞きました! アルスなる反逆者によって街が襲われているのなら、アーシア団長は民を守る為に戦っておられる筈! ならば我々も加勢に向かいます!」
フリオに対して騎士団の対応を共有しておく副官の少女に続き、後から騎士団の団員も姿を表す。
その姿は王国軍の格好よりも少し豪華で、マントも装着するのが基本とした物だ。
「馬鹿だな、お前ら。見なかったのか? アーシアは聖剣を二回使ってるんだぞ」
「……?」
だが呆れるような言葉を吐くフリオに対し、副官と団員は揃って意味を測りかねる。
「二回もアレを使うって事は、アルスが一筋縄じゃ行かない相手だって事だ。大方、もうとっくに負けちまってんじゃねーか?」
「!!」
「おい、そこのお前! 騎士団が来てるなら、そいつらも砦の防衛に振り分けるよう砦の指揮官に言っとけ!」
フリオは二人が出てきた場所に向かって声を放ち、そこに立っていた一般の兵士に命令を下す。
はっ、と返事をする兵士に、二人は驚きの顔を浮かべてフリオに喰いかかった。
「お待ち下さい、勇者殿! 我々は……!」
「こいつを見てみな」
だが、それをフリオは遮って先程自分が撫で回していた物体を示した。
そこにあったのは、魔導兵器特有の文様が浮かんだ物。
筒状の物をいくつか束ねたような造形をした、魔力によってエネルギーを打ち出す兵器だった。
「コイツは、俺様専用に作られた強力な武器だ。なんてったっけな、ガトリング? 何とかだ」
「……?」
副官の少女と団員の男は未知の武器を目にして、フリオと兵器のそれぞれに目線を行ったり来たり。
「コイツは魔力の装填というより魔力を吸い上げてエネルギーを撃つ代物でな、お前らなんかが使ったら一気に魔力を全部無くして死ぬかもしれねぇ。 まさに俺様専用の兵器って訳だ」
それはスキル「魔力増幅」の力を持つフリオの、専用兵器と言って差し支えが無い。
「だが、威力は王国軍お墨付きの物だ。お前らにはアルスがこっちに向かってきた時の足止めをして貰うぜ」
「そんな馬鹿な……!」
副官の少女は見た目の年頃に合わない、理性的な瞳を揺らして勇者の言葉を聞く。
「それではアーシア様を見捨てるに等しい行為ではありませんか! 納得できません、我々は街に向けて出撃します!」
「そうかい、ならちょっと遅かったな」
フリオは決然と言い放つ副官の言葉を受け流しながら、遥か遠くの方を見させるように指差した。
それと同時に、地面が小さく振動する。
「……?」
副官はそれに従い、じっと目を細めてそれを見た。
遠くには既に出発をしていた砦からの増援が、うっすらと隊列を組んで街へと向かう姿が見える。
「お前らのアーシア様がアルスを倒したんだったら、あいつらは死なずに済んだぜ」
「!!」
次の瞬間、副官は信じられない光景を目にした。
地平線の彼方から巨大な何かが現れ、街に向かう隊列へと襲いかかっていたのだ。
ズゥン……
一撃が振るわれたのか、この距離であっても副官の足元にまで振動が伝わってきた。
それと同時に彼方では、豆粒サイズにしか見えない兵達が空中に投げ出されて散り散りになっているのが見えたのだ。
「馬鹿だねえ。あんな化け物マトモに相手をしたら、ああなるに決まってるぜ」
「……」
「アーシア様は負けちまったらしいなぁ。いや、残念だぜ? 俺もよ」
「クッ……!」
「まぁ、戦力を小出しにして全員ぶち殺されたかったら話は別だがよ。ここは砦に籠もって守りを固めたほうがよろしいんじゃねーのかぁ?」
フリオの言葉に、副官は汗を一筋流して黙りこくる。
「……」
あのような怪物が存在する街から、「迎撃準備をする」という名目で逃げ出した勇者に対してやりようの無い怒りを抑え込みながら。
「……わかりました。アーシア様の救出は、あの怪物を倒した後にします」
「そうそう、それでいーんだよ。わかったらさっさと下に行って、部下達に守りの準備をさせな」
「副官殿! 良いのですか、これで!」
「……」
勇者の元を離れた副官は、付き従う団員が納得行かないという風に声を荒げるのを聞きながら階段を降りる。
「あの怪物が本当に能力を暴走させた元勇者の仲間であるなら、たしかに砦を守るのは正しい判断かもしれません」
「しかし!」
「待ちなさい。……私には考えがあります」
幼さを残す副官は団員の口に手を当てて制止すると、小さな声でヒソヒソと話を始めた。
「私がアーシア様から、王都で聞いた話によると。あのアルスという者は反逆者と呼ばれるような人物では無かったとの事です」
「……? どういう事ですか?」
「人間を魔王軍から守る為に王都までやってきたアルスは、陛下や勇者によって不当に反逆者としての汚名を被せられたそうです。ならば、正義があるのは……」
「……」
それを聞いた団員は、言葉を無くして副官の少女の横顔を見ていた。
同じ女性騎士団員だという理由で副官に取り上げられたと兵士達に噂されている、目の前の少女が何を考えているのかをうっすらと理解しながら。
「……砦の防衛準備は進めておきなさい。ですが、出撃の準備もそれとなく行いなさい」
「!」
副官の瞳には、王国に対する不信感が見え隠れしているかのようだった。
これと今夜の更新で二回やろうと思います。
そして、書いてから次は幕間?的に砦のからの増援を蹴散らすシーンやろうかなと思いました。
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