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第二十話:街の終わり


 フリオが万全の準幅を整えて、アルスが向かって来るのを待ち構え始めた頃。


グォァァァァァ!!!


「死ねよ、死ねって! ヒッ、ヒィィィィィ!!!」


 建物の窓から必死に弓を撃っている兵が、その巨大な腕によって部屋ごと薙ぎ払われて瓦礫の一部となる。


 次々と降り注ぐ弓矢や投げ槍などの武器は、暴れ回るアルスに対して何の有効打にもなっていなかった。


「駄目だぁ!どうすりゃいいんだ、こんな奴!」

「畜生、今頃俺はもう少しで酒場に行けると思ってる頃なのによ!」

「アーシア団長ぉ! 早く聖剣でこいつを仕留めて下さいよ!」

「駄目だ、まだ魔力の装填が終わっていない!」

「畜生、フリオさんなら装填なんか一瞬で終わるのに! どこ行っちまったんだよ、フリオさんは!」

「奴の事など期待するな! 今はなんとしても、ここで奴を食い止めるんだ!」


 アーシアは懸命に、傷を完全に癒やして再び街を破壊しようとするアルスに対して決死の抵抗をこころみていた。


「アルス、やめてくれ……! お前だって、王国を守る為に勇者の一員となった一人だろう!」


 アーシアは自分達が犯した非道ひどうな行為によって憎しみを爆発させているような状態であるアルスに対し、悲痛な声で呼びかける。


グォァァァァ!!!


 だが足元の小さな存在の声など聞こえないかと言わんばかりに、アルスは更に攻撃を加えてくる兵士達に対して圧倒的な力で蹂躙じゅうりんを続けるばかりだった。


「やべぇ! 逃げろ、逃げ……!」


 攻撃を続ける兵士がまた一人、土煙と轟音を響かせてアルスの足跡と同化する。

 だがアーシアは次の一撃を加える為に身動きが取れず、結果的にただ蹴散らされる兵達を見ているしか無い。


「よせ! これ以上暴れるな、アルス!」

「何言ってんですかアーシア様! こんなバケモンに何言っても、聞くわけないでしょ!」

「王国の反逆者なんでしょう!? 元々こういう奴なんですよ、あの野郎は!」

「おい、やっぱり逃げようぜ! アーシア様だって聖剣が使えなきゃ普通の人間なんだ!」


「なっ……!」


 元から勤勉さなど持ち合わせていなかった兵士達は次々と弱音を吐き、ついに抵抗を諦めて一目散に逃げる者が現れ始める。


「貴様たち、戻れ! 王国軍が逃げ出したら、誰がこの街を奴から守るのだ!」

「冗談じゃねぇよ! 命張るような街かよ、ここが!」


 兵士としての責務を放棄する者達に一喝するが、逃げ出した者は自分勝手な事を言って脇目も振らずにその場を後にする。


 だがアーシアはそれでも必死に兵達を鼓舞こぶして、アルスから街を守ろうと号令をかけ続ける。


「弓矢を持っている者は引き続き攻撃を加えよ! もうじき異変を感じた砦から増援が送られてくる筈だ、それまで何としても逃げ遅れた住民を避難させるのだ! ……逃げた者は無視しろ、どうせ役には立たん!」


「クソッ、団長が美人でなきゃ誰がこんな事……!」

「よく考えろよ、ここさえ生き残りゃあ俺たち王都で騎士団入りの目も出て来るぜ!」

「俺達が王国で一番強いって言われてる騎士団に!? ほんとかよ、そりゃあ!」

「こんなバケモンと戦うんだぜ、それぐらい当たり前だ!」


 一部の兵士達はそれでなんとかアルスへの攻撃を継続するだけの気力を維持していた。


「……ああ、その通りだ! じきに聖剣も魔力を貯め終わって、次の攻撃を放てるようになる! 奴も流石に不死身では無い筈だ、もう少し耐えてくれ!」

 

 アーシアは兵士達に報酬を提示し、兵達もそれに決死の顔を浮かべて攻撃を続行する。


「撃て、撃てぇ!」

「このっ、魔王軍の手先が! 人間様を滅ぼそうったって、そうはいかねえんだよ!」

「待っ、待て! こっちに来るな、うわあぁぁ!」


 しかしアルスの黒く禍々しい体には一向にダメージを与えられず、次々とその手足によって薙ぎ倒されて行った。


「……よし、これだけ注げば……! 全員奴から離れろ、聖剣の力を解放する!」


 アーシアは力を使い果たしてただの剣と化していた聖剣に輝きが戻ったのを確認するなり、戦う者達に退避を命じた。


グルルルルル……!


 それに気付いたアルスもまた、自分を悲壮な顔で睨みつけるアーシアと目を合わせた。


「……すまない、すまない……! お前の苦しみも、怒りも、私が必ず一生をかけて償うと誓う……!」


 力を開放し、まぶしい光を放ち始めた聖剣を構えてアルスへの謝罪を口にするアーシア。


「……この一撃で、止まってくれ……!」


 そして、渾身の魔力を込めた聖剣「デュランダル」を振り下ろした。


 直後、周りにいた兵士達は先程と同じ眩い光と衝撃波に襲われて地面に倒れ込んでいった。


「う、うぉぉぉぉ!!」

「やった、やったぜ! さっきよりスゲェ衝撃だ、これだったら……!」


 伏せた体が吹き飛ばされそうな程の衝撃に襲われる兵士は、今度こそアルスを仕留めたと確信して暴風の中歓喜の声を上げる。


 だが、


「……何、だと……!?」


 アーシアは目の前の光景が信じられなかった。


グゥゥ……、ォォォォォ!!


 目の前の巨大な黒い獣は、放たれた聖剣のエネルギーを口で受け止めていたのだ。

 その力の奔流ほんりゅうはみるみるその口の中に捕食されるように飲み込まれて行き、神から与えられた聖剣はその力を全て放出し終わって輝きを消滅させる。


「…………馬鹿、な…………」


 呆然とするアーシアに襲いかかって来たのは、横薙ぎに放たれたアルスの腕。


「ッ!?、グァァァ――――ッ!!」


 それをなんとか剣で受け止めた金髪の少女は、髪を揺らしながら建物の壁に叩きつけられてしまった。


グゥゥゥゥ…………!


「あ、あぁ……! アーシア隊長が、やられちまった……!」

「もう、駄目だぁ……! 逃げろぉ!」


(…………)


 意識を無くしていくアーシアがそれから耳にしたのは、更に憎しみの雄叫びを上げるアルスの声。

 そしてそれに蹴散らされながら逃げ惑う、王国軍の兵士達の悲鳴。

 それと、崩壊して街としての機能を無くしていく守るべき場所の音だけだった。






…………グルル……


 それから少しの時間が経ってから、アルスは周りの景色を見渡して唸り声を上げる。


 幾つもの巨大な足跡。

 建物としての原型を留めなくなった建造物。

 自分に射掛けられ、しかし何のダメージにもならなかった弓。

 

 崩壊した建物からは火の手まで上がり始めていた。

 恐らく火事場泥棒を狙った住民や兵士達によって引き起こされた物だろう。


…………!!


 だが、そんな光景を見下ろしたアルスは次に新しい目標を目撃した。


 少し離れた街の外から、武装した王国軍の兵士達が向ってくるのが見えたのだ。


 そして、その中には常人に感じ取れない程小さな「勇者」の臭いを確認したアルスは――――


グォォォォォ!!!


 更なる怒りを爆発させながら、その一団に襲いかかる為に踏み出したのだった。


ズズズ……、バキバキ……、

 

 取り込んだ聖剣のエネルギーによって、自らの身体を更に禍々しく変貌させて行きながら。

今日中にもう一回投稿予定。

毎日できなくて申し訳ないです。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 既に悪人に対してやってるけど。やるからには徹底的に、慈悲はなく躊躇なくやって欲しい。 [一言] この団長、生き証人になってこの事を語り継ぐ人にでもなりそう。 でも、こんな国や町を守ろうと…
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