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第十六話:アーシアの決意

「ウ……ッ、クッ……!」


 その時アーシアは下着一枚だけの姿をしながらも、自分を拘束しているロープをなんとか解こうと必死に身をよじらせていた。


「……よし、ゆるんだぞ……!」


 パラリと地面にそのロープを落としたアーシアは、そのまま乱暴に脱がされていた自分の衣服や鎧を手にとって性急に身にまとう。


「……あんな男に、身を汚されそうになるとは……! なんという失態だ!」


 自分が最も嫌悪感を覚えた人間に貞操を奪われそうになった事に対して怒りを覚えるアーシアだったが、「外に出たあの男が戻ってくるまでは時間があまり無いかもれない」という思いの元、急いで傍らに置かれた聖剣をも取り戻す。


「しめた、裏口がある」


 フリオがいる正面入り口からの脱出は躊躇ためらわれていたアーシアだったが、そこにある意味での幸運が舞い込んだ。

 フリオがこの街で拠点としていた家屋は街の長が用意した立派な建物で、街の中ではかなり高級な部類の物件だったのだ。



バタン!


 装備を完全に整えたアーシアはドアを乱暴に開いて街の通りに姿を表すが、そこに広がっていた光景はまるで地獄のような物だった。


「うわぁぁぁ!! なんだ、あの化け物は!?」

「ちょっと! アタシを置いて先に逃げるんじゃないよ!」

「こんな街でオダブツしてたまるかよ!」

「わ、私も早く逃がすのだ! 貴様たちに金を払っているのは、こういう時の用心棒なのだぞ!」

「うるせぇ! 王都の商人だか何だか知らねぇが、命あっての物種だぜ!」


カーン、カーン、カーン!


 街の王都方面に向かう以外の全ての詰め所から警鐘が鳴り響く。


「……何だ、何が起こっているのだ!?」


 口々に恐怖におののいた言葉を吐きながら我先にと街の出口へ向かって殺到する住人達を見て、驚きの声を上げるアーシア。


「ヒッ、ヒイィ!」

「駄目だ、逃げろぉ!」


「……! あれは、我が軍の兵達……!?」


 何とその中には、王国兵の鎧を身にまとった兵士達の姿すら混じっている。


「おい待て! 貴様達、何故住民の避難誘導をしない! 何が起こっているかはわからんが、それでも栄えある王国に仕える兵士か!」


 一人の肩を掴んで引き止め、職務を全うしない事に怒りを覚えながら大きな声をかけるアーシア。


「なんだアンタ!? アイツが見えないのかよ、あんな化け物相手に俺たちが何をしろって言うんだ!」


 王国の騎士団長である事を示す鎧姿すら知らないらしいその兵士は恐怖に染まりきった顔で、必死にアーシアを振り払いながら答えた。


「ほら、アレを見ろ! あんなの相手になるかよ!」

「何……!?」


 後方を指差した兵士を殴り付けたくなる衝動を抑えながら、アーシアはバッと振り向く。


「…………!?」


 そこに見えたのは、巨大な一匹の獣の姿だった。

 それは3メートルはあるかという街の防壁越しにもしっかりと姿を確認できる程のサイズで、そしてあまりに禍々しい姿をしている。


グォォォォ……!


 怒り狂っているかのような咆哮ほうこうを上げる、形だけは狼のような姿をした黒いソレを見たアーシアは。


「なんという事だ……!」


 ソレを間違い無いと胸中で確信しながら、「魔王軍の侵攻が起こったのだ」と思い込んでしまった。


「さっきの振動は、この巨大モンスターが起こしていたのか……!」


 アーシアはフリオに陵辱を受けようとしている最中に感じていた振動が、この巨大な一匹の獣による物だとすぐに合点がいった。

 目の前の巨大な脅威に対して、戦慄するような気持ちを覚えながら脳内で前後の辻褄つじつまを合わせていく。


「……アーシア! アーシア、どこに逃げちまったんだ!」


 そこに聞こえてきたのは、先程まで嫌らしい声で自分に向けて余裕を見せていたフリオの必死な声だ。


「……!」


 ――――しまった、こんな所でまごまごしていては……!


 自分がフリオに対して下劣な感情のままに襲われそうになっていた事を思い出したアーシアは、自分が出てきた扉から姿を表したフリオと一瞬目が合った。


「クッ……!」


 そして脱兎のように走り始めて群衆に紛れようとした。

 騎士団長たる自分が住民の避難を先導出来ない事に、不甲斐ない気持ちで胸を一杯にしながら。


「まっ、待て! もう何もしないから、ちょっとだけ待ってくれ!」


 情けない声で必死にアーシアを引き止めるフリオの顔は、街に遅い来る獣に対して恐怖に染まり切った顔だった。


「お前、騎士団長だろ! 指揮を取って、アイツを迎撃しないといけないだろ!?」

「何を、言って……!?」

「あんな化け物、今の装備じゃ相手できねぇ! お前が戦ってる内に、俺は王都に、いやその前にある砦に戻って迎撃の準備をしといてやるよ!」

「貴様……!」


 予想もしなかった言葉に戸惑いを隠せなかったアーシアは、目の前の男が王国で最も力を持つとされる「勇者」である事に何度目かの失望をあらわにしていた。


「馬鹿、こんな所で俺様が死んだら誰が魔王を倒すんだよ!? いいからさっさと逃げてる奴らをふんづかまえて、アイツを少しでも足止めするんだよ!」

「この、ゲスが……!」


 思わず腰に差した剣で一思いに斬り伏せてやりたい気持ちに駆られるアーシアだったが、頭のどこかではフリオの言葉に多少の説得力を感じていた。


 あの巨大モンスターが魔王軍の放った物であるならば、それを討伐するのは戦力的に自分か勇者のどちらかしかない。


 そしてその勇者が役に立たない以上、自分の持つ「聖剣デュランダル」しか対抗手段は無い。

 苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるアーシアは、現状あのモンスターを迎え撃てる可能性があるのは自分だけなのだと考えた。


「……クズが! 早く行け!」

「へへっ、そう来なくちゃな! あばよ、俺の愛しい妻! 死ぬんじゃね―ぞ!」


 不快な言葉を残して群衆に紛れて行ったフリオを、アーシアは憎しみの籠もった瞳で眺めていた。


ズズゥン……


 だがすぐにそれを振り払って、今まさに防壁を軽々と踏み越えた獣を一瞥いちべつする。


「……聞け! 私は王国騎士団のちょう、アーシア! 少しでも胸の内に誇りがある兵士は私に従って住民を避難させるのだ! 奴は私が相手をする!」


 大きな声で群衆に紛れた兵士たちに声を聞かせたアーシアはスラリと腰の聖剣を抜き取ってから、背徳に塗れた街の為に戦う決意を固めた。


――――これで、本当に良いのだろうか。


 そんな胸の内にくすぶる、どうしようも無い程の違和感を振り払いながら。

勇者は次の大暴れの為に逃してあげます。

まあ死ぬんですけどね!

でもサクッと殺るか一回間を置くか考え中。


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