第十三話:アーシア拘束と外の変化
「クッ……!」
それからアーシアはフリオによって捕縛され、後ろ手に拘束されたまま壁の方に座り込んでいた。
「ヘヘっ、いい格好だな。アーシア様よ」
勇者フリオは王都の貧民街に生まれた身の上だった。
貧乏な家に生まれ、慎ましくも犯罪や悪徳とは無縁な生活を送っていた両親に育てられたフリオは、子供心に「どうしてこの家はこんなに金が無いのか」と考える日々が続いた。
路地で遊ぶ同じ境遇の子供達と遊び回る度に、立派な服を着た大人たちが大通りを歩いている姿が視界の端に写り込んで来る。
そんな自身の境遇に不満を覚えていたフリオだったが、ある日突然に天啓とも言うべき事が起こった。
神から与えられたスキル、「魔力増幅」。
それはフリオをただ一人の貧乏な子供から、やがて一人の「勇者」としての人間に育て上げていったのだった。
副産物的な身体能力の強化で冒険者としてそれなりの知名度を得たフリオは、やがて他多数の冒険者と共に魔王軍の軍前との戦に備えた軍事訓練への参加を呼びかけられた。
その中で国王から能力の有用性を認められたフリオは、自らの両親が心配して止めるのを暴力で返して家を飛び出してしまったのだった。
「貴様が、これほど腐っている男だとはな……!」
そして今、フリオは自分を厳然と睨みつける女騎士団長を見下ろしていた。
「どうとでも言ってくれよな。俺は今最高に幸せな気分だぜ」
フリオは手を後ろに回された事によって、強調するような形にされた鎧の胸部を眺めた。
そのアーシアの美貌と言ったら、フリオにとって満点と言う他ない。
「勇者ともあろう男が、こんな者だと国民が知ったら何と説明するつもりだ……!」
「うるせぇな」
フリオは耳障りな言葉を吐くアーシアの口周りを手で掴み、力づくで黙らせるような仕草を取る。
フリオにとってアーシアとは、まず第一に「気に食わない女」だった。
「お偉い家」に生まれて、何不自由なく暮らしていた眼の前の女には、「勇者」となってから何度も見下したような目を送られていた。
事ある毎に自分を邪魔するアーシアには何度も思い知らせてやろうと思っていたのだが、いつもその周りにはアーシアを慕う騎士団員が守りを固めている。
それを歯がゆい気持ちで眺めていたフリオだったが、今日はなんと一人で自分の前に表れたではないか。
そのチャンスを逃がすような気持ちは、人間の希望である筈のフリオに存在しなかった。
「あの兄妹がこの街に向かっているとは、どういう事なのだ……!」
顎ごと掴みかかられたような格好となったアーシアは更に敵意をむき出しにして、フリオに対して責めるような口調で質問を飛ばす。
「ったく、兄妹兄妹ってうるせぇんだよな……。しょうがねぇ、お前には教えといてやるよ。何せ未来の妻だからな、へへ」
「……!」
不敵な笑みを浮かべるフリオに対して、嫌悪感を更に顕にするアーシア。
「俺はな、王様からの命令であの兄妹を始末したんだよ」
「!!!」
清々したような気分でそれを教えるフリオと、目を更に見開いて驚愕に染まるアーシア。
「妹ちゃんは俺のもんにしようかと思ってたんだけどな、あの無能馬鹿が殺しちまったらしい。で、しかも兄貴の方は仕留めそこなった事で復讐に燃えちまってるらしいな」
「なんと、いう事を……!」
「ほんと、あの馬鹿を使ったのが失敗だったぜ。アルスが片付いたら、あいつはもうお払い箱にしようと思ってる」
「……」
自分の知らない所でそんな事が起こっているとは露ほども知らなかったアーシアは、言葉も無く怒りに打ち震える。
「話はわかったか、アーシア? わかったら、お前は抵抗せずに……」
と、そこで外からは大きな音が聞こえてきた。
「ああ?」
それは何かが街の外で、大きな振動を伴わせる何かが起こっている音だ。
「あぁ、アルスが来たのか」
それと同時に、扉の向こうからも大勢の人間が街の外へと向かって走り回る音が聞こえてくる。
それを肌や耳で感じ取ったフリオは「あぁ、ドルベが俺の名前でも使って人を集めたんだろうな」と推察をした。
実際にその考察は当たっていた。
自分の片腕を奪ったアルスが街へ向かっていると聞いたドルベは、フリオの腰巾着である街の長に街の荒くれ達を集めさせていたのだ。
「ま、大丈夫だろ。なんか変なスキル持ちになったとか言ってたが、この街の奴にはあの馬鹿と同じ奴を何個か貸してるしな」
外を気にするのをやめたフリオは、再び拘束されたアーシアを見て笑みを浮かべた。
「こっちが優先だ」
――――敵討ちに来る野郎よりも、「勇者様」に楯突いた女の相手だ。
「……やめ、ろぉ……っ!」
フリオは抵抗出来ないアーシアの鎧に手をかけ、丁寧に留め具を外して一枚ずつ引き剥がしていく。
「やめっ……さわ、るなっ……!」
身じろぎをして精一杯抵抗してくるアーシアの息遣いを間近に感じながら、フリオは「その目的」に向かっての準備を進める。
「……!」
そして、フリオ自身が着込んだ魔導具を除けば最も美しく、実用面や凛々しさでも最高品質の鎧装束を全て取り払ってしまった。
「へへっ、いい眺めだぜ……」
下に着込まれているのは、布当て代わりに着込まれた厚めの肌着。
「う、うぅっ……!」
まだ十代の終わりを迎えてもいないアーシアの、束ねられていた金髪が肩にかかる。
肌を晒したわけでも無いのに、その顔には恥じらいが滲み始めていた。
「ここからが本番なんだからなぁ、アーシア?」
ニタニタと笑うフリオの頭からは、外の騒ぎなど頭から消え去ってしまっていた。
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