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宮本さん、襲来

「翔太!あれ、宮本美月さんだよ!」


「え、誰?」


「え、知らないのか?入学式の新入生挨拶してた人で、めっちゃ美人だって噂になってたじゃん。まあ、うちのクラスの細川さんも美人だけど」


「へえ、そんな人が……げ。」


 そこにいたのは昨日ヘアピンを探していた人だった。そういえば名前を聞いてなかったな……。言われてみれば美人さんだな。少し茶色っぽいセミロングの髪に昨日の探し物だった月の飾りのついたヘアピンが付いている。澄香は綺麗な人と言ったイメージがあるが、この人はかわいい人というイメージを持たせる容姿をしている。というか昨日の今日でこの教室に来たということは……


「石川翔太君っていますか?」


 ああ、やっぱりそうか……。うーん……、昨日はあれ以上深くかかわりたくないと思って逃げるように帰ってしまったのだが逆効果だったらしい。まさか俺に用があってきたとは思わなかったらしく、教室内がざわついている。澄香に至っては、鬼のような形相でこちらを見ている気がする。


「え、翔太。宮本さんと知り合いだったのか?」


「あーいや、昨日ちょっとね……」


「あ、石川君!昨日はありがとう!」


「ああ、えっと、宮本さん?よかったのにお礼なんて。昨日も言われたし」


「昨日は、改めてお礼を言おうと思ったところで帰っちゃったから……。その、迷惑だった?」


 周りの視線が痛い。宮本さんという入学式で話題になるほどの美人に話しかけられてる地味男くんの時点でかなり冷たい目で見られているのに、それに加えて「あいつ宮本さんに迷惑をかけたんじゃないか」的な視線を感じる。……正直、割と迷惑だな。


「いやいや、迷惑だなんてそんな。でもちょっと手伝っただけだし、あんまり気にしなくていいよ」


「ううん、ちゃんともう一回お礼を言っておきたかったの。本当にありがとう」


「あーうん、どういたしまして……」


 なんだろう。……昨日に比べて何というか元気になったというか積極的になった気がする。


「あの、石川君」


「何?」


「いっ、一緒にご飯食べてもいいですか?」


 ……グッバイ、俺の静かな学校生活。正直お断りしたい。こんなことで周りの人に目を付けられたくない。これが原因でいじめられるかもしれない。でも、これを断ったらそれはそれでいじめられそう。これが前門の虎後門の狼というやつか……。いや、本当は次から次へと災難が襲ってくるとか、そういう意味だから違うけど。うーん……これは、仕方ないか。


「……いいよ。ここでいい?」


「うん!ありがとう!」


 はあ、随分と嬉しそうだな……。この人は俺が断れない状態にあったということを理解しているのだろうか。……してないなこれは。まあ、もしかしたら理解してやってるのかもしれないけど。うん、要警戒だな。自分から関わりに行っといて何言ってんだって感じもしなくもないけど。


 そうして、宮本さんを交えて昼休みを過ごす。周りの視線は痛かったけど、3人で話しながら弁当を食べるのはそれなりに楽しかった。……この組み合わせは中学時代を思い出す。


 これはダメだ。有輝と宮本さんには悪いけれど、明日からは今日みたいにするのはやめよう。泣きそうだ。というか吐きそう。2週間有輝と仲良くしてきて大丈夫になってきたかもと思っていたのだが、宮本さんが入って男子2女子1になっただけで中学でのことを思い出してしまった。澄香がいることを確認した時は大丈夫だったのに。やっぱり怖い。友達という存在が怖い。宮本さんが入ってきたことで、昔みたいに友達ができるのではないかと思ってしまった。


「ごめん、ちょっとトイレ行ってくる」


「え、お前ここで俺を置いていく気かよ」


 小声で有輝が抗議の声を上げているが、ちょっとそれどころではない。


「ごめん。宮本さんもごめんね」


「ううん」


 小走りでトイレに駆け込み個室に入る。少し荒くなった息を整える。吐きはしなかったけれど吐き気が酷い。


「はあ、はあ、はあ」


(『仕方ないから、仲良くしてるだけだし』)


(『俺の好きな人を奪ったやつが、何か用か?』)


 ……。これは昔の幼馴染と親友に言われたことであって、有輝と宮本さんには関係ない。でも、どうしても、頭の中に声が響いてくる。


(ダメだ。2人とは少し距離を置こう)


 その後、昼休みが終わるギリギリで教室に戻った。

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