表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/47

メッセージ

3話前くらいから受け付けている「いいね」が108件頂けていました。煩悩の数と同じですね。

「あ、石川、これありがとう!助かったよ!」


「おはよう。昼休みでもよかったのに」


 学校にくると、教室の前で小畑さんが俺のノートをもって待っていた。


「今日授業ある科目もあるかなって思って。でさ、ちょっと聞きたいんだけど、地学の……ここってどういうこと?」


 生物と地理のノートを渡されて、地学のノートは小畑さんの手で開かれていた。


「どれ?……ああ、これか。そんなに複雑なことはないんだけど……」




 昨日青い線を引いたところの説明を小畑さんはうんうんと頷きながら聞いていた。


 廊下の端に寄って説明をしていると、ちょっと視線が気になるな……。うげっ……。


 視界の端にこちらを見ている人が入り込んできて、ちらっとそちらに視線を向けると、横目に俺の方を見ながら教室に入っていく澄香の姿があった。その目は何か、観察されているような感じで、居心地が悪いというか……少し不快だった。


「うん?どしたの?」


「あ、いや、なんでもない」


 ぼーっとしているように見えたらしく、心配されてしまった。


「そう?」


「うん。説明はこんな感じで大丈夫?」


「多分大丈夫!」


 ……これほんとに大丈夫か?ここでの多分は不安しかないんだけど……。


「ほんとにありがとう!……なんか、頼ってばっかりだね。あ、ノート貸してもらったし、今度お礼になんかおごるよ」


「いいよいいよ。俺も小畑さんには助けてもらってるし、これくらいはね」


「……」


 特に何も考えずにそう言うと、小畑さんは急に黙ってしまう。


 ……あれ、なんか変なことを言っただろうか。


「え、どうしたの?」


「あ、いや……、大丈夫なのかなって」


「……」


「ほら、この前の球技大会の時とか、すごく辛そうだったし……」


 急に随分と前の話をするな……。ああ、あの時小畑さんが俺を助けてくれたからか。別にあの時の話をしたかったわけじゃなくって、普段から助かってるって言いたかっただけなんだけど。


「……大丈夫だよ。っ」


 そう答えると、急に小畑さんは下から覗き込むように顔を近づけてくる。普段は目が合うと思うときでも、眼を見られていると感じることはないからびっくりしてしまった。


「そう……。そっか」


「……あー、小畑さん?もうそろそろ教室いかないとじゃない?」


「あ、そうだね」


 近かった顔が離れる。……初めて会ったときも同じように顔を覗き込んできた気がするな。


「……あのさ」


「うん?」


「……いや、やっぱりいいや」


 そう言うと小畑さんは、「ノート、ありがとね!」と言って自分の教室の方に早足で行ってしまった。


 ……え、気になるんだけど。何を言いかけたんだろう。……まあ本人がいいというならあまり気にしすぎないほうがいいか。



 教室に入ろうとすると、丁度有輝が登校してきた。


「お、よっす。翔太」


「おはよう、有輝」


「それ、昨日の?」


「そう。さっき小畑さんが返しに来てたよ」


「ほーん」


 有輝は軽く流すような返答をする。言い方は悪い気がするけど、あまり興味がないような返答だった。


 なんか、有輝って小畑さんと仲が悪いってわけではないんだけど、宮本さんと比べると対応が雑と言うか……まあ、嫌いってわけではないだろうからあまり気にすることはないか。嫌なら小畑さんと話すこともないと思うし。


 この2か月くらい一緒にいて分かったが、有輝は結構自分を強く持っているというか、あまり周りに合わせないタイプだ。……ずっと俺と一緒にいるって時点でそれはわかりきったことだったかもしれないけど。嫌なことは嫌で、やりたいことはやる。極端に我慢ができないとかではないけど、必要ない我慢はしないタイプ。


 周りの人の目もあまり気にしていないんだろうな。すごいことだなと思う。俺は、周りの目が気になって仕方がない。こうして教室に入って席に座るだけで嫌悪の目や疑いの目が突き刺さってきている。……ちょっと被害妄想が入っているかもしれないけれど。普段4人でいるときだって、優先順位が下になるだけで周りの視線を感じないわけじゃない。……そうなるとバイト先で宮本さんといるときはかなり気が楽だな。


「あ、そう言えば、試験最終日って暇?」


「え、ああ、うん。水曜だしバイト行こうと思ってたんだけど、試験で疲れるだろうから休んだ方がいいんじゃないかって言われたから、暇だよ」


「じゃあ今度こそみんなでカラオケ行かね?」


「あー、いいね。みんな予定がなかったらいこう」


「じゃあ聞いてみるか」


 有輝が携帯をいじりだして、すぐに携帯が通知音を鳴らした。俺たち4人のグループで連絡をしたのだろう。


 メッセージアプリを開いて、女子二人に向けて俺も何か送ろうかと思ったところで、手が止まった。4人のグループではないところにメッセージが届いたことを知らせるマークが出ていた。


 通知が来ないように設定をしていたから気が付かなかったけど、母親からメッセージが届いていた。


 この前実家に帰った後に一度バイトは大丈夫かという内容の連絡があった以来のメッセージだったから少し驚いたけど、いったい何だろうか。


 さきに有輝の「試験最終日、みんな予定なかったらカラオケ行かね?」というメッセージに付け加えるように、今回は俺は暇をしているということを送って、母からのメッセージを開く。


 内容はもうそろそろ試験だけど、大丈夫かということだった。行事があるから連絡をしてきたようだ。ご飯を作りに行こうかということが書かれていたけれど……別に大丈夫だ。試験前だからってご飯を作る余裕がないほど切羽詰まってないし、……あまり来てほしくない。母さんも来たいわけではないだろう。


 大丈夫と返信をしたところで、チャイムが鳴った。1限は自習にすると言っていたし……何をしようかな。






道締邪見

無色界苦締 辺執見

十纏嫉

十纏悔

無色界苦締戒禁取見


煩悩の名前ってかっこいいな……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ