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新たな日常と非日常

次の日から、小畑さんも昼食時に混ざるようになり、一緒に食べられない日に連絡が来るようになった。小畑さんはあの日から、探るような目で見るようなことはなくなり、むしろ気を使うような、様子を伺うようになったように感じる。……なんでだろう?


 あと、あれから3日ほど経った日に、少し前に俺を呼び出した、3人組にまたついて来いと言われた。断って、「次、この前のようなことがあったら学校に言う」というと、舌打ちをして去っていった。まあ、停学や退学にはなりたくないだろうし、また同じようなことをしてくることはないと思う。ああいうのは、黙ってしまう人を狙うものだろうし。……ほかの人に同じようなことをするかもしれないと思うと、少し様子を見ておいたほうがいいかもしれないけど。


 それから、バイトもするようになった。縁があって知り合ったおじいさんが経営している、学校から少し離れた所にある喫茶店で働いている。結構な頻度で行っているので、最近は仕事にも慣れてきた。……とは言っても、忙しいわけではないのだけど。


 そんな感じで2週間ほど経って、日常というものが確立してきた。最初は嫉妬や疑念を含む視線が向けられていたけれど、今ではそれも薄くなっている。


今日は非日常的なイベントの日である。少し前のHRで出場種目を決めたりしていたので、数日前から話題になっていたイベント。球技大会だ。


 出場する時間に、その場所に行けばいいので、それ以外の時間は応援かぶらついている人に分かれている。


 今の俺は、驚くべきことに応援組だ。宮本さんがバレーボールで出場しているので、有輝と小畑さんと俺の3人で応援……とは言っても声を出したりはしていないけど、応援をしに体育館の二階に来ている。


 試合内容は、優勢であと1点で宮本さんのクラスが勝つところまで来ていた。


 ……っと、終わったな。


 相手のサーブの失敗であっけなく試合は終わった。宮本さんは……運動が苦手というわけでもないようだけど、得意でもなさそうだった。新入生挨拶をしていたくらいなので、勉強のほうが得意なんだろうな。


 試合が終わると、出場していた人は自然と解散していき、宮本さんは俺たちの方へとやってきた。


「お疲れ様」


「うん。応援してくれてありがとう」


「美月おつかれ~!いい動きだったよ!」


「そんなことないよ……、いっぱいミスしちゃったし」


「いや!MVPだった!」


 小畑さんはいつにもましてテンションが高い。イベントごとが好きなんだろう。応援も、俺たちの3倍くらいの量と声だった。


「翔太は、いつ行くんだ?」


「あ、もうすぐ行くよ」


 宮本さんと小畑さんがイチャイチャしている後ろで有輝とそんな会話をしていると、宮本さんが反応する。


「石川君も頑張ってね。応援するから!」


「え、あー、いや、後ろで守りに徹すると思うから応援こなくてもいいよ?」


「い、いやいや、行かないわけないでしょ!」


 宮本さんにそう言うと、小畑さんが驚いたような反応をする。でも、すすんで勝ちに行こうとしていないのに、応援をされるのはちょっとなあ……と思う。目立ちたくないので、積極的に攻撃を仕掛けたりはするつもりはないのだ。


「というか、当たるの二人のクラスなんだけど……」


「あ、そうなんだ」


「じゃ、どっちも応援するから!」


「俺は、普通に応援だな。まあ、途中で抜けないといけないけど」


 そんなわけで、みんな応援に来るようだ。……なんか、あんまり手を抜けなくなったな……。少なくとも、それなりにちゃんとやらないと、応援に来てくれるのに申し訳ない。



~~~



「お疲れ様」


「うん。ありがとう」


 試合は0対0で引き分けで終了となった。声をかけてくれたのは宮本さんだ。有輝と小畑さんは自分の出場する時間になったのだろう。いたのは宮本さんだけだった。


「石川君、サッカー上手なんだね」


「そう?そんなことないよ」


「凄い上手かったよ。なんか、余裕を感じたよ」


「そうかな?ありがとう」


 言った通りに守りに専念していたし、走り回るようなことはなかったから余裕があったのは確かだ。


「2人はバスケだっけ?」


「うん。2人ともちょっと前に行っちゃった」


「そっちの応援に行っても良かったのに」


 そう言うと、宮本さんが少しむっとした顔をする。


「今からでも、余裕で間に合うから、一緒に行こう?」


「……うん」


 答えると宮本さんは、パッとした笑顔を浮かべる。


 ……かわいいな。かわいいのは前から知っていたけれど、再認識した。そりゃ、嫉妬の視線を浴びるわけだ。


 宮本さんと俺は色々と話をしながら体育館へ向かった。

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