ゴールデンウィーク最終日 後半
前話までに少し修正が入っています。大筋は変わりませんが少し印象が変わるところもあるかもしれません。
昼食を食べながら映画の内容についてあれこれ話した後、俺たちはゲームセンターにやってきた。
「普段ゲームをしないという翔太のために今日はここで遊びつくそう!」
「それはどうもありがとう?」
「よっしゃ、遊ぶぞ!」
そして、ユーフォ―キャッチャーやレースゲームなどをした。
「……もう、ユーフォ―キャッチャーで食っていけるんじゃないか?」
「それは無理でしょ」
「割と本気でいけそうなんだけど。ポンポン取っていくからびっくりしたわ」
「昔テレビでユーフォ―キャッチャーのコツみたいなのやってたの見たことあったからかな」
俺と有輝の手には箱のお菓子や小さいぬいぐるみなどが入った袋が握られており、俺が右手に持っている袋だけは少し大きめのぬいぐるみが頭を出していた。量が多くなってしまったのは有輝があれもやってみよう、これはどうだろうと言っていろんなユーフォ―キャッチャーに挑戦することになったからだ。
「普通はそれだけでは真似できないと思うんだけどなあ。レースゲームも最初の方しか勝てなかったしなあ」
「ははは」
そんな会話をしていると、右手に不自然な力を感じる。見ると、小さい女の子が俺の持っているぬいぐるみの頭をいじっていた。これは有輝が最後に俺に「これもやってみようぜ」と言ってきて取ったものだ。3回でうまいこと取れた。
俺の持つぬいぐるみを触る小さな女の子に目線を合わせるようにひざを折る。すると、女の子はビクッと手を引いて逃げていこうとする。
「ねえ、この子、好きなの?」
そう聞くと、女の子はコクリとうなずいた。
「じゃあ、あげるよ」
「いいの?」
「うん。この子もそっちの方が嬉しいと思うから」
笑いながらそう言ってぬいぐるみが入った袋を渡すと、両手で頑張って袋を抱える。
「ありがと!」
そうすると女の子は満面の笑みを浮かべてそう言い、そのまま小走りで行ってしまった。
「あー……、あの子大丈夫かな?お母さんとかに怒られたりしない?」
「大丈夫じゃないか?まあ、なんかあったら戻ってくるだろ」
まあ、そうか。ちょっとこの辺にいて、こなかったらそれでいいか。
それから少しすると、例の子がお母さんを連れてきて、謝られたりお礼を言われたりした。……こういう時は、祖父の言いつけの通りにしていてよかったと思う。呪いの言葉だとか言ったりもしているけど、こういうことがあるから俺はこの言いつけを守って生きているんだろう。
まあそれはいいとして、今俺と有輝は少し歩いて地域の体育館に来ていた。予約制で1組しか入ることができないくらい小さな体育館だ。俺とバドミントンをしたくて予約したんだとか。少し前にトラブルに遭ったところで、大丈夫かを聞かれたけど、もうどこも痛くないのでオーケーした。
動ける格好に着替えて、ネットを張って、準備運動をする。髪も流石に邪魔なのでピンを使って止めた。
「翔太、どれくらいぶり?」
「えー、夏休みにあった引退試合以来だから、9か月くらいかな」
「あー、そうか」
「ってか、せっかくの休日までバドミントンでいいの?」
「ん?全然大丈夫だぞ。俺、バドミントン好きだし」
「……そっか」
俺は……中学3年間やってきたけど、あまり好きじゃないな……。と言うか、こんな風に自信をもって好きだと言えるものが無い。まあ、ごたごたがあったせいでそう感じるというのもあるだろうけど。
「ほい、これ」
「ああ、ありがとう」
ラケットが渡される。握ると、なつかしさのようなものを感じる。まあ、このラケットは俺の物ではないのだけど。ちょっとやるくらいなら、家から自分のを持って帰ってくればよかったなあ……。
ネットを挟んで、適当に打ち合う。ラケットの話とかブランクがどうとかの話をしながらしばらく打って、身体が温まり感覚が戻ってきたくらいに有輝が話の流れを切って言う。
「試合形式でやろうぜ」
「いいよ」
~~~
結果は……俺が勝った。21対18。有輝は結構強敵だった。体力的にもきついし、2ゲーム先取だったら俺が負けると思う。
「はあ、はあ……結構、きついな……」
「翔太、バケモンかよ」
「いや、次は勝てないな……。もうきつい」
「くっそー、序盤、翔太は結構ミスが多かったのに、勝てんかった……」
序盤は俺がミスすることが多くて、有輝がリードする展開だった。それから、なんとか追い上げて最後は3連続得点で俺が勝った。
「翔太、またバドミントンやらない?」
「……いや、今はいいかな」
「そうかあー……。やりたくなったらいつでもウェルカムだから、いってくれよ」
「うん。ありがとう」
体育館の使用時間は片付け含めて90分。余裕をもって終わるなら、もう片付けを始めたほうがいい時間だ。
「んじゃ、片付けるか」
「そうだね」
片付けを終え、外に出る。運動を終えた後だからか、風がいつもより気持ちいい。
「この後どうする?」
「明日から学校だし、そろそろ帰るんでもいいんじゃない?」
「そうするか」
俺と有輝はショッピングモールまで戻り、そのまま別れた。そうして、ゆっくりと自転車をこいで30分ほどして家につく。
鍵を開けて部屋に入る。
「……」
靴を脱ぎ、荷物を置いて床に寝転がる。
……疲れた。久しぶりにラケットを握った。
右手を握ると、先ほどまでのラケットの感覚とともに、中学の練習の記憶がよみがえってくる。
……楽しかった。きつかったけど、すごく楽しかった。憂鬱な空間が多い中学生活だったけど、あの場所は、好きだった。
気が付くと、握った手が震えていて、目からは涙が一滴こぼれていた。
前半出してから後半出すまでに1年経ってるのヤバすぎ。すみませんでした。
ひと段落ついたのでちょいちょい更新できたらいいなあ……。いいなあ……。




