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一話・騙された気分の誕生

勇者───とは英雄と同一視され、誰もが恐れる困難に立ち向かい偉業を成し遂げた者を指す。  


魔王───とは悪魔、魔物、妖魔、魔族などと呼ばれる者の頂点に立つ者指す。


995年

エルグ大陸に相反するその二つの存在あり。

高尚な王国、シャインダイン王国。

その王国に【ソヴィン・レオ】という英雄在り。聖剣オーバーを手に取り、魔王軍を殲滅せんと立ち上がった。 

 

1005年

その英雄、勇者として進軍する。

自分の命と引き替えに【魔王ギグス・ヘルグ】を封印、エルグ大陸を平和へと導いた。


そして百年の月日が流れる。

エルグ大陸は平和が溢れるものと思われていた……。


1105年

魔王軍大魔道士【ギロロス】により、新たな魔王が誕生しようとしていた……。


◇◆◇


満月の夜。

エルグ大陸東にある元魔王城の【儀式の部屋】で黒フードを被っている者、ギロロスを含む三人が魔法陣に向かい、呪文を唱えている。


『皆渇望せよ、我が主が来たり。』

『深淵の果てにあるは闇、混沌なり。』

『混沌を超えし者、それすなわち我らが主なり。』

『我が主よ、導き給え。』


三人が魔法陣に一斉に力を入れた瞬間。

魔法陣が青白く光り出し、はっきりとその姿を見せた。

その者は黒の鎧に青い目をしていた。


──しかし彼からは強大な力、威厳を感じることは無かった。


「……魔王様……陛下の復活だ……」

ギロロスは100年ぶりの魔王復活に感嘆した。

100年かけ、やっと復活するのだ。

人類らに復讐するため、魔族ら魔王軍はようやく進歩する。


「百年かけた甲斐がありましたなぁ!」

「ギロロス様、ご尽力お疲れ様でした……」

ギロロスの二人の従者達も喜びに溢れている。


【魔王】は辺りを見渡し、ギロロス大魔道士に問いかけた。


「お、おい。」

「何でしょうか陛下。何なりとお申し付け下さい。」

「は?……いやいや、それなんだけどよ。陛下って俺のことか?」

「……はい?」


彼はどうやら復活した【魔王ギグス・ヘルグ】ではないようだった。魔王に忠誠を誓う魔族達は困惑を隠すことが出来なかった。


◇◆◇


「……陛下って俺のことか?」

「お忘れになっていらっしゃる。ハッハッハ、ご冗談を。」

「笑う要素ねぇーだろ、どこだここ。お前誰だよ。」


……なんだこれ。

なんだこの状況。

俺は赤城 陸斗(あかぎ りくと)。桜山高校二年生だ。

正確には高校生()()()、だな。


俺はここに来る前死んじまった。

そこはいわゆる天国のような静けさを体現したような空間だった。そこで一人の白髪のじいさんに会った。


─────────────


……おれは、どうしたんだ?

ばかみてぇに体軽いんだけど。


『お主は死んだ。そしてここは【精神の部屋】。迷いつく魂の部屋じゃ。』


誰だおめぇ……。なんだその精神と時の──


『お主はトラックに轢かれたんじゃよ、飛び出した猫を助けようとしてのう。』


話を遮るなよ…。


あ~言われてみれば思い出した。

確かにそんなことがあったな……。

ってだからお前は誰──


『さてどうする?お主は現世では悪ガキだったらしいからのう……地獄送りにして焼いてやろうかと思ったのじゃが、大したことしてないから【天国】に行かせようか違う世界に行かせようか悩むんじゃ……。』



話は聞かないし、さらっと俺を馬鹿にしたなじいさん、いや、クソじじい。


ん~、天国か、異世界か……。


異世界ってのはいわゆるオタクが読むような異世界みたいなやつか?


『そうじゃな、勇者がいる世界じゃ。』


女に囲まれるのか?


『あ、あぁ場合によったらな。』


強くなれるのか?


『……勇者は強いと思うが……』


よし、きめた。異世界にいくぜ。

前にオタクから借りパクしたラノベ…ってやつをみたことあっけどめっちゃ楽しそうじゃねぇか!【異世界】での生活楽しみだぜ……。


『……理由が不純すぎんか……?』

『言っておくがランダムで出生地が決まるんじゃぞ?恨むんじゃないぞ?』


あぁ、頼むぜ、じじい。


ん?ランダムだと?ってことは勇者になれないかもしれ──。



『キエェェェェイ!!!世界よ!!ひらけえええええ!!!』

ご老体(じじい)は奇声あげると突然光り出した。



─────

そしたら、これだ。

いきなり魔王だのぎっくり腰のヘルニアだの言われてよく分かんねえよ。



んで、俺の目の前にいる男三人は黒いフードをかぶっててよく見えねぇな。顔を見せやがれやこのオタンコナス野郎ども。


「忘れてるのでは……?」

「そうですね……お忘れのようなので確認のため……。」


その三人の真ん中にいる一番偉そうな奴がフードを脱ぐ。



そいつには大きな目玉が一つあり、その目の上に小さな角のようなものがある。

歯が尖り、『化け物』と言っても過言でなかった。


「……なんかのコスプレか?」

「コスプレ……とは何か存じませんが、私は魔王十臣大魔道士、【ヴァル・ギロロス】と申します。お忘れでしょうか?」


「ぎ、ぎろろす?」


全く記憶に無ぇ。

学校祭にもまともにいってなかったし、いつかの出し物にこんな奴いたっけな……。


「……違う者を召喚したんじゃ、ないでしょうか……。」

ギロロスの右側の従者が言った。


「まさか、容姿が人間に似ているのもそのせいだということか。」

ギロロスは頭を抱え、そう言った。


「容姿は人間に似ていますが、角が生え、魔眼【静】であるため、かなりの希少魔族かと……。」

「かつてのヘルグ先王もそうであったからな……。素質があるのかもな。」


それを聞いてゾッとした。

恐る恐るおでこを触ると角があった……。


仲間内で話し終わると、そのギョロリとした目をこちらに向けるギロロス。


正直こえぇよ。うん。

今まで会った喧嘩屋ども軽く越えるくらい怖い。


「……貴方はどのような名前でどのような世界から来ましたか?」

「俺の名前は赤城 陸斗(あかぎ りくと)だ。日本から来た番長ってモンかな。」


俺の前世の事。両親が亡くなっていて親戚の家に住んでいる妹がいること。 

そして()()高校生で、番長をしていたことを話した。


「……なるほど……リクト様ですか。」

「なんだ、俺の名前に文句あるのか?」

「いえ、そうではなく、たしかバンチョウ……と仰いましたが()()と、解釈してもよろしいですかな?」


別にそんなんじゃねぇけどなぁ……。

面倒くさいからそんな感じでいいか。


「……まぁ、そんな感じだ。」


そう見栄を張るとギロロスは目を更に見開いた。



「なんと…ッ。そちらの世界でも二ホンという地で統率者として皆を率いていたと…!」

「我らをお導き下され──。魔王様。」


目玉野郎達は跪き、俺を崇めるように言った。


「貴方のような指導者を探しておりました……。」

「ちよっとまて!俺は『本当に』魔王……なのか?」

「はい、我が主でございます。貴方の名は【魔王ギクス・リクト】様です。」

「なんだその読みにくい名前……リクトでいいよ。」

「さあさあ我が主よ!!宴がありますのでどうぞこちらへ!!」

「おいッ!腕を掴むな!おい!」


こうしてエルグ大陸に不良魔王【ギクス・リクト】が誕生したのであった。

そんな魔王が世界を救うのはまだ先のお話───。













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