表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そっと覗いてみて  作者: 遊月奈喩多
3/3

穴からあなたを見つめるものもいる

おはようございます、遊月です!

『殺伐感情戦線』参加作品、とうとう完結です!

寝落ちたりいろいろすることがあって遅れましたが、全3話で完結となります。


突如明かされていく秘密……

ふたりはどうなっていくのか?


本編スタートです!!

「あたしもね、人を殺したの」

「え?」


 雨が降り続ける公園のベンチで、静かに告げられた言葉はあまりにも軽い調子で、なのにあまりにも重く、わたしの中に響いていた。

 なに、なんなの?


「あたしね、お姉ちゃんのこと好きだったの。妹としてじゃなくて、女の子として。初めての相手はお姉ちゃんがよくて、お姉ちゃんの初めてもあたしがよかった。きっとそうなれると思ってたの。

 だって、あたしたち小さい頃からずっとなかよしで、何するにも一緒だったから。きっと通じ合ってるって思ってた。なのにね、お姉ちゃん外で恋人作ってきたんだよ?」


 ほら、見て?

 そう言いながら彼女が見せてきたのは、耳たぶがズタズタになるくらいに空けられたピアス穴。もうどこ刺したらいいかわかんないよねぇーと、愉快そうに語る彼女が、とても怖かった。

「それ、何?」

「お姉ちゃんが男の人とエッチした回数だよ?」

「え?」

「部屋隣なのに、全然お構いなしなんだもん。ずっと声聞こえてんの。嫌だったなぁ、あたしの神様みたいな人だったお姉ちゃんがさ、まるで泣いてるみたいな声でむり、とかだめ、とかしんじゃう、とか言ってんだよ?

 お姉ちゃんってあたしの中ですっごい大きかったのに、あんなのが付いてるだけでそんなお姉ちゃんをただの女の子にしちゃえるなんて、信じたくなくて。でもね、それ聞きながら、あたし自身がお姉ちゃんとする想像しちゃったりはしたかな。だから、お姉ちゃんのエッチ聞きながら自分ですることもあったんだよ?」


 無邪気に、けれど凍りつくほど美しくて恐ろしい笑顔。

 こんな年齢の娘が浮かべていてはいけない、執着で凝り固まった笑顔のまま、彼女は語り続ける。


「でもね、今日お姉ちゃんの彼氏に自分でしてるの見られちゃって。そしたらね、何勘違いしたんだかニヤニヤしながら襲ってきたんだよ? 信じられなくない? 力いっぱい抵抗したけど口塞がれてさ、しかもそのまま入れられたの。

 初めてだったんだよ? ちょっとくらい夢見てたかったのに、無理やり突っ込まれてびゅーびゅー出されて、お腹の中が気持ち悪いの、もう切りたくなるくらい……!」


 半狂乱になりながら話す彼女を、わたしは止められない。だって、彼女が負った傷は、わたしも……。やっぱりわたしたちは、よく似ている気がした。


「許せなかったのはね、」

 雨が強くなっていく。

「あたしが犯されたのはまだ許せた。中に出されたのもまだ許せた。でもね、あいつ言ってたんだ、『お前の姉ちゃんも最初そんなだったな』って笑いながら。

 酷いと思わない? あいつ、嫌がるお姉ちゃんを無理やり犯して、それで壊したんだよ。あんな別人みたいに腰振ってるお姉ちゃんに変えたのはこいつだったんだ、って。自分から飲んだり、お尻に入れさせたり……そういうの全部、あいつがお姉ちゃんを歪めてたんだって知ったの」

「だから…………、殺したの?」

「うん」


 いつの間にか、彼女は泣き出していた。

 そんな彼女の丸まった肩を、そっと抱き締める。

 きっと彼女が人を殺したのは本当だと思う。だって、あまりに酷すぎる。世界を壊されるのって、とても辛くて痛いものだから。胸の中に大きすぎる裂け目ができて、埋めようもない孤独と痛みが押し寄せてくる。

 そんな辛さも、わたしならわかってあげられる。


 たぶん、彼女がしたいこともわかっている。

 きっとわたしも後戻りなんかできない、そろそろ彼の家に他の女の子が来ている頃だろうから、わたしも終わりだ。遠くから聞こえ始めたパトカーの音は、きっと。


「どっちのだろうね?」

「さぁ」

「どっちでもいっか」

「うん、ねぇ、このあとどうするの?」

「お姉さんは?」


 わかってるくせに。

 答える代わりに、わたしは鞄からナイフを取り出す。どうしてこんなもの持ってきていたのだろう、あの男が持っていたナイフは、今では持ち主の血で黒ずんでいる。

「だよね」

 彼女も、赤い包丁を手に持った。


 わたしたちは、お互いに知られちゃいけない秘密を知られた同士。教えたくない秘密を抱えたもの同士。きっと、今この瞬間、世界で1番お互いのことをわかっているもの同士。


 だから、この子になら。


「じゃあね、お姉さん」

「うん、ばいばい」

「もし地獄があったら、また会いたいね」

「きっと見つけてみせるから」

「へへ、ありがと」

「だってまだ名前も知らないし」

「知っちゃうと決心鈍るよ」

「だよね、ごめん」

「じゃあね、たぶん……またね」

「きっと、今度は普通に会おう」

「うん」

「会ったばかりだけど、大好き」

「……あたしも」


 そしてわたしたちは、お互いの胸に突きつけたナイフを思いきり前へ――――――

前書きに引き続き、遊月です!

とうとう終わりましたね……『穴』。お互いの心に空いた大きな穴。きっとそれを埋められる相手を探すために、ふたりはさまよっていたのかも知れませんね(あと居場所もないし)


ということで、また次回作でお会いしましょう!

ありがとうございました!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ