【閑話】 謎ルール「精霊の定め」とナメクジフゼイ
さて、このプシチャクの地、もう神はいらっしゃらず、その欠片が【大抱っこ様】になって現れるのが精一杯。
【大抱っこ様】が、姫王閣下が大きく抱っこし、プシチャクの地を見せられるのもこれが最後。
貴重な機会ですので、プシチャクの地を、姫王閣下の7歳児視線だけでなく、中2くらいの視線でも見ておきましょう。
そう、プシ国を含む極東諸国では、例年、幸福の季節で隣国間の小競り合いが行われる。ふだんのクソ寒さよりはましな気候の中、騎士というか男たちにとってのみ、ご都合主義な精霊の定めが幸福の季節では有効になる。大多数が小心者の騎士たちがけしかけあう小競り合いの中、幸福の季節の謎ルールのもと、各国の騎士たち、やや醒めた目で見ると次代の子をなす女性たちを交易しあうことに。
戦闘メイドだのという役割を押し付けられ、結果として、隣国へと交易されて子をなす女性たちからするととんでもないことだったが、残念ながら、精霊の定めなどクソルールといって破棄した国々はもう残っていない。なぜなら、この、すばらしくもクソ寒い世界プシチャクでは、妙な儀式なくして男女が自由に愛し合うなどというのは、ほとんどおとぎ話の世界なのだから。例えば、日本の山村ではしばし行われた夜這いなどしようとするならば、既にカースト的な身分制に縛られた制約を守って慎重に道を進むうちに、十中八九、凍死する。平安時代のように、夜空を見上げて想し人に向け詩を歌おうとしても、クソ寒い上にそもそもプシチャクの夜空は星も見えずにただ寒々しいだけなので、ロマンチックな想いになることは難しく、大多数の人々はコタツにふて寝することに。
結果、このプシチャクでは自由恋愛などないに等しく、王族かそれに順ずる地位のもののみが行うことが可能な見合い婚、騎士と平民の間での精霊の定めによる儀式的な女性の交易、そして、最底辺のカーストに置かれたもののみに許される近親婚と奴隷売春が、結果として人口減少を防いでいるのだった。このうち見合い婚の数は少なすぎて人口への寄与は少なく、最底辺カーストの人々は哀れにも差別されすぎてしまった結果として、奴隷売春などおぞましいと騎士や平民の利用率は低かった。ゆえに小心者の男たちが期待するのは、そこそこの武功もあげられデカイ顔もできる、少しだけ小春日和の幸運の季節の精霊の定めに従っての戦場処理と戦後処理。
しかし、繰り返しになるが、定めに従ったことで戦奴隷にされる女性にとって、それは、まさにクソルール。加えて、各国は若い戦闘メイドが枯渇することで国力が落ちたと揶揄されないよう、こちらは好きにしてくれとばかりに古株の戦闘メイドを前に立たせるのも、また、クソルール。他方、プシ国の新王が幼女だということを聞きつけ、付き従う新人戦闘メイドは若くていい女なのだろうと期待して騎士が群がってきたゲシア国と周辺諸国に関しては、男たちの方がクソ。こうしたクソな行為が起きてしまうとそれは国々を乱すことになるため、後にタブーとなる。
それは「この、下衆が」と言われて当然の、精霊の定めに対する事実上のルール違反なのだった。隣国同士は本気で争うと衰退してしまうだけなので、小心者の小競り合いに留めるのが、プシチャクならではの騎士の誇りという奴なのだった。
さて、そんな下衆たちに対し、物理攻撃で制裁を与える精鋭メイドたちの存在も気になるところ。「余は幼女姫王をお持ち帰りでもしようか。」などと不埒に考え、戦場を観戦しようとしていたゲシア国のデップり王。普通にゲス野郎とはいえ、そのデップりを「蛞蝓風情」として倒してしまうあたりは、精霊の定め的にも(状況によっては日本国刑法的にも)完全に過剰防衛。もちろん、そのお言葉は、とある業界的には大変ありがたいお言葉なのですが。
ということで、次クールから、そんな彼女ら精鋭メイドたちの中の人、いわば準主人公たちが登場いたします。