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第6話ー病魔の魔王ー

第1章ー神隠し編ー

第6話ー病魔の魔王ー

ーーーーーーーーーーーーーーーーー


*********

○ワラキオ王国○

○【王都・プタペニア】○

○【王城・ツェペッシュ城】○

○国王執務室○



ワラキオ王国国王【ヴラド・ツェペッシュ・ワラキオ】は疲れ果てていた。



「なんじゃ、この忙しさは…」



現在ワラキオ王国は正にフル稼働の状態が続いていた。


ーーー黒曜帝国への対応。

ーーードラニア公国の併合作業。

ーーージェルシード女王国女王と第1王子との婚約および併合作業。


内政も外交も、すでに限界までフル活動していた。



「おまけにいつのまにか軍の実権を第2王子が握っておるし」



そう、ちゃっかりと言うべきか、ワラキオ王国第2王子は将軍の1人として復活戦争に従軍し、多数の武勲と戦争期間中に他の軍人達と言葉を交わす事で、軍に絶大なる影響力を持った。



「はぁ、早く落ち着かんかなぁ」

「へ、陛下ぁあああ‼︎」



そこに1人の貴族が駆け込んでくる。



「なんじゃ宰相。今は罰を与える時間と労力も惜しい。さっさと仕事しろ」

「それどころではありませぬ‼︎ 黒曜帝国が動きました‼︎」

「なんじゃと⁉︎」



ワラキオ王が慌てて報告に耳を傾ける。



「黒曜帝国の皇帝が直接会談を申し入れてきました‼︎ その際に姫様も同行させるとの事‼︎」

「やっとか…‼︎」



ワラキオ王は拳を握りしめる。



「盛大に迎え入れるとしよう…‼︎ もうすでに小国ではないというチカラも見せつけてくれる‼︎」

「は、ははッ‼︎」



ワラキオ王国は兵力を王都に集め始めた。



*********

*********



中国とロシアをくっつけたような大陸の形をしたシード大陸は、今現在危機的状況を迎えていた。


道端に人の死体が溢れ、それを処理できる人間もいなかった。人々は死神が去るのを待つしかできなかった。



ーーー死神の名前は【黒死病】。大陸中に広がる疫病であった。



*********

○【騎士王国連邦】○

○【連邦王都:キリシタン】○



3人の騎士を王とした3の王国の連邦国家である騎士王国連邦は、他国の例に漏れず、黒死病の魔の手に苦しんでいた。



「神に祈ったところで、この疫病は収まらないわ」



そう言いながら、少女は王城の一室でメイドに髪を整えさせる。



「とはいえ、現状我々には取れる手立てが限られており、その手立てでは…」



メイドは弱気の声を漏らす。



「こんな噂は知ってるかしら? とある港町では黒死病は根絶間近だと」

「そんなことがあるのですか?」



メイドは内心驚きながらも、少女に問いかける。



「今配下に確認に行かせたわ。そろそろ帰ってきてもおかしくないけれども…」

「姫‼︎」



部屋のドアが強引に開けられ、1人の女騎士が部屋に入ってくる。



「どうしたのですか? 港町の件は?」

「はッ‼︎ 噂は誠でございました‼︎ 港町には死体どころか、商店が通常通りの商売をしておりましたッ‼︎」

「「なっ⁉︎」」



それは現在のシード大陸の情勢では、絶対にあり得ないことであった。黒死病の恐怖に商人達も店に閉じこもってしまっているのが実情であったからだ。



「どうやら大陸外の国家が手を差し伸べたらしく、その国の人間から国王陛下にお渡しするようにと、親書を預かってまいりました…中身は支援の打診との事でした‼︎」


「今すぐにお父様の元に行くわ‼︎」


「お嬢様髪の毛がまだッ⁉︎」


「それどころではないわ‼︎」



少女は部屋を慌てた様子で出て行った。


驚いていた女騎士が、手紙を持って追いかけるまであと15秒。



*********

*********




日本列島に四国をぐらいの島をもう一つ追加した、というべき国土を持つ国がある。近藤が皇帝を務める国家…その名前を【神聖ロンド皇国】といった。



*********

○神聖ロンド皇国○

○とある港○



港から次々と船が出港していく。その全てに対ペスト物資を載せていた。



「赤字だなぁ…仕方ないけども」



その様子を、護衛の兵士に囲まれた近藤が見送る。



「でも、大陸に干渉するならこのタイミングだ。 武器ならどこかに角が立つけど、薬を渡して恨まれる道理はないからな」

「陛下」



1人の文官が、近藤の前に跪く。



「支援艦隊全艦の出港を完了。騎士王国連邦からも支援を要請し、場合によっては軍艦の寄港も許可すると」

「なりふり構ってられないってところか…久島ニキの言う通りだな」



近藤がニヤリと笑みを浮かべる。



「さあ、俺達の商売を始めよう」

「「「はッ‼︎」」」



それにしても、と近藤は心の中で考える。



「(久島ニキがあんなにペストに詳しいとは思わなかったな)」



実は今回の支援作戦には、反対派であった久島が多くはないが少なくもないアドバイスをしていた。


特にペストによる情勢の逼迫は、久島の言う通りのものであった。


近藤はその追い詰められた情勢に付け入る形で、大量の軍艦を輸送船として送りつけていた…なお、その中には調査部隊という名前の諜報員が多数紛れ込んでいるのは、言うまでもないことだろう。



「(久島ニキめ、あんなに反対してたのに、支援が始まると積極的になるなんて…ツンデレ王かッ‼︎)」



近藤は内心でツッコミを入れたが、答える者は皆無であった。



*********

*********



こうして、神聖ロンド皇国主導による支援計画は本格的に始動した。


計画名は【アンチ・ペスト計画】とされ、人員3万人軍艦15隻もの動員がなされた。


作戦の第1段階である、騎士王国連邦の港町のペスト根絶は成功していた。そこで近藤は第2段階である騎士王国連邦全土のペスト撲滅作戦を開始。まるで丁寧に色を塗っていくかのように、港町から周辺地域に撲滅作戦を行っていった。



「死神の病を撲滅せよ‼︎ その先に人類の栄光があるであろう‼︎」



しかし、その裏でペスト撲滅作戦で追い詰められる者達がいた。



「我が病魔達が人間ごときに駆逐されるだと⁉︎ ありえぬ‼︎ 信じられぬ‼︎」



その者の名は【病魔の魔王:ガジルフ】。魔王と呼ばれる人類の敵対者であり、ペスト流行の犯人であった。


彼は眷属である鼠(【魔鼠】と呼ばれる魔物)を使って、大陸中にペスト菌を撒き散らしていた。



「我が眷属である鼠どもに流させたペストが駆逐されていく…⁉︎ このままではッ⁉︎」



ガジルフは決意する。



「こうなれば直接この手で打って出る‼︎ 兵団よ‼︎ 出撃せよ‼︎」

「「「「チュウ‼︎」」」」



人間サイズの鼠人間達が魔鼠達と共に、地底の底から地上へと侵攻する。


それは、魔王と人類の戦争の始まりであった。



「何だと⁉︎ 魔王だと⁉︎」



魔王軍侵攻の知らせは、シード大陸全土の国教とされる【ガーディン教】の教王にもたらされた。



「黒死病も奴らの仕業に違いない‼︎ 大陸全土に布告を出せ‼︎ 我ら今こそ黒死病に倒れた同胞の仇を取らん‼︎」



布告は檄文となり、大陸全土を駆け抜けた。



「魔王だと⁉︎」

「黒死病の親玉だ‼︎ 戦支度だ‼︎」

「黒死で死ぬか、戦いで死ぬか…2つに1つ‼︎」

「これよりは聖戦である‼︎ 人間達よ立ち上がれ‼︎ 国民よ武器を手に取れ‼︎ 黒死病に倒れた者共の仇を取れ‼︎」

「我らが怒りを思い知れ‼︎」

「団結の時は今‼︎」



黒死病によって苦しめられた国々は次々と対魔王戦線へ参戦していった。


とはいえである。病魔に苦しめられた国々の戦力は、著しく低下していた。特に食料等の物資の不足は大きな課題であった。



「え?食料等の支援?確か今まで輸出してた分の過剰分あったでしょ?あれ格安で降ろしてあげて。どうせ腐らせるだけなんだし…ほら、スーパーとかでお惣菜の賞味期限ギリギリのやつが割引で売ってるみたいな感じで」



という近藤の鶴の一声で、山のように食料品等がシード大陸に輸出されることとなる。そして、その値段は採算度外視の、最低限の金額であった。


そしてその中継地である騎士王国連邦は、貿易で栄えていくこととなる。



*********

○ムーン人民共和皇国○

○【王城:朧月城】○

○会議室○



「"病魔の魔王"だぁ?」



画面に映る近藤の報告に、その場にいる二井と画面に映る夕霧が眉をひそめる。



『そうそう、その魔王とやらがペスト広げてたみたいでさ。 この前なんて【大教会】とかいう場所で、神託を受けた勇者が魔王討伐に旅立ったみたい。いやー、まさに王道ファンタジーですな。俺たちの存在がなければの話だけど』

「よくある擬人化というか、偶像化じゃないのか?確か中世のペストとかでもそういうのあったろ?」



中世の時代、ヨーロッパで流行したペストは、あまりの猛威に死神として描かれることが多かった。つまるところ二井が言いたかったのはこの場合の魔王とはヨーロッパで描かれた死神と同じく、恐怖から作られた偶像ではないか?ということであった。



『いや、部下に確認させたけど、実際に魔王の眷属の【マウスソルジャー】とかいうのを確認してるから、間違い無いようだけど?』

「ふむ…王道ファンタジーだな」

『だね…』



二井と夕霧がウンウンと頷く。



「ま、勇者とやらが旅立って、大陸国家達もやる気なら任せて構わんだろ」

『こっちも、支援に集中することで話がついたよ…最近はちょっとばかし大陸側の要求が多くて苛つくけどさ』

「それだけ追い詰められているんだろ?あとでその分を利子付きで返して貰えば良い」

『…それもそうだ』



近藤が肩をすくめる。



「ところで久島はどうした?いつもなら誰よりも早く来てるだろ?」



そう、画面に映し出されているのは近藤と夕霧だけであり、久島の画面は何も映っていなかった。



『ああ、ごめん。言い忘れてた。 久島君は緊急の用事で来れないってさ』



夕霧が二井の疑問に答える。



「急だな?」

『会議開始の1時間前。行けないって伝言頼まれてたの忘れてたよ』



あははと夕霧が苦そうな笑みを浮かべる。



「どうせ仕事をやり忘れてたとかそんなんだろ?」

『宿題とかもよく忘れてたしなぁ』



その後学生時代の雑談が続いた。


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エンド

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