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第5話ー反宗教主義ー

第1章ー神隠し編ー

第5話ー反宗教主義ー

ーーーーーーーーーーーーーーーーー


*********

○ムーン人民共和皇国○

○王城:朧月城○

○会議室○



「ドラニア公国の敗戦により、ワラキオ王国はドラニア領を併合。ドラニア公国公王は監視付きで、大陸から少し離れた元ドラニア領の小島に、一生涯幽閉…ってな感じだな。戦後処理は」



二井が画面に映し出される3人に向かって報告する。



『ま、妥当じゃないか?』

『寝返った貴族とかはどうなったの?』



久島がウンウンと頷き、夕霧がドラニア貴族のその後を二井に問う。



「一部貴族は、そのままワラキオ王国貴族として迎え入れるそうだ。人質として子弟を軍に入れさせるようだな」

『妥当だな。流石元大国。戦後のやり方を分かっている』



久島はウンウンと頷く。



「(久島の奴、妙にワラキオへの好感度が高いな…)」



そう思いつつ、二井は久島の別の感情を感じ取っていた。



「…久島、長い付き合いだ。何を腹に抱え込んでるか話せ」

『何のこと…と言っても二井にはお見通しか?』

「会議中ずっとイライラしているだろう?」

『流石だな。新大陸の【シード大陸】でちょっとな』



シード大陸。それは近藤が発見した、新たなこの世界の大陸である。



「何かあったか?」

『個人的事だ。この世界の文化レベルなら当たり前のことだしな』



ラチがあかないと、二井は近藤の映る画面に視線を向ける。



『俺にもよく分からなくて…確かシード大陸は宗教のチカラが強いってのを聞いてから、機嫌悪そうだけど』

「あ〜、成る程な」



その言葉に二井は納得の声出す。



「久島は()()()()()だからな」



そう、久島は反宗教主義と言っても差し支えのない考え方を持っていた。とはいえ、彼とて神を信じていないわけではない。どちらかといえば地元の神社の神様を信仰するぐらいには信心深さがあった。


では、何をもって反宗教主義なのか? それは宗教組織である。久島は宗教組織が大が付くほど嫌いであった。


組織というのは腐敗しやすく、特に宗教組織というものは救いがない。それが彼の考え方であった。バチカンあたりが聞いたら大激怒するであろう考え方である。


キリスト教の十字軍しかり、日本の戦国時代の僧兵しかり、一部イスラム教徒によるテロ行為しかり…歴史上宗教組織がチカラをもっていい事などない。神は個人個人が信仰すれば良い。 一々組織化する必要はない。それが久島の反宗教主義であった。



「そんな久島からすれば、シード大陸とやらは嫌悪の対象なんだろう?」

『まあ、いい気はしないな…それもあって、現在シード大陸には深入りしていない』

『ああ、そのことも相談したかったんだ。チェニキがシード大陸に干渉することに大反対してるんだよ。結構急を要してるのに…』

「急?何かあったのか?」



二井は、少し焦り気味の近藤に問う。



『商売ができないのも問題ではあるけどさ。問題はシード大陸に、あの悪名高き疫病の【ペスト】が流行してることなんだよね』

「ペストだと⁉︎」



ペストは中世のヨーロッパで猛威を振るったことで有名な感染症であり、高い致死率を持つことで知られている。



『俺としても、放置できないから支援したいんだけど…』

『神の奇跡だ何だと言って、最悪の場合異端の治療術、悪魔の術とか言われて手柄を奪われ、迫害されるのがオチだ。狂信者どもを支援する必要はない』



久島が己の感情を露わにする。過去に何があったというレベルである。



「落ち着け久島。 俺としても、例えある程度その後のオチが見えていたとしても、非人道的判断は良くない。それに最悪の場合、ペストが国内に入る可能性もあるんだぞ?」

『…チッ、やむ終えないか』



苛立ちを隠せない様子の久島が、苛立ちを表すかのように舌打ちをする。



「(とはいえ、何とか理解はしてくれたようだ。納得まではしてないようだが)」

『支援は了解した。ただし近藤君が主導してくれ。俺では私念が入りそうで怖い』

『了解。後方支援は頼むよ』



二井は心の中でため息を吐き出す。



「(久島は本気でキレると、理論が通じなくなって、損得抜きに感情だけで動くからな。今回はそこまで本気ではなかったから良かったが…)」



ーーーしかし、のちに彼らは、久島の本気の激昂を目にする事となる。



*********

*********



ワラキオ王国勝利の報は周辺諸国に速攻をもって伝わった。


かつての大国の復活とも言える勝利に周辺諸国の国王達は対応を考えた。


そしてその中には、驚嘆に値する選択をした国王がいた。



「我が【ジェルシード女王国】は、ワラキオ王国に帰属する」



ジェルシード女王国の女王である少女はそう選択した。



「できれば、国内からの不満を避けるため、そちらの王族と我が国の王族が混じり合う形にしたい。 出来るだけ不満が出ぬような併合をお願いする」

「承った。悪いようにはしない」



こうして、ワラキオ王国第一王子とジェルシード女王国の若き王女は政略的婚約した。そしてジェルシード女王国はワラキオ王国の属国となり、結婚後ジェルシード女王国がワラキオ王国に併合される形で、条約が結ばれた。


この報に、各国は驚愕に揺れる事となる。



ーーームーン人民共和公国。

「あ?また併合?勢いあるなぁ」

ーーー黒曜帝国。

「またワラキオ王国が拡大した⁉︎ もはや一刻の猶予もないのかッ⁉︎」

ーーーとある小国。

「かつてのワラキオが復活する⁉︎」



そして、それは同時に旧ワラキオ主義の人間達の台頭を後押しした。



「かつてのワラキオを‼︎ ワラキオ大王国を‼︎」

「ワラキオ‼︎ 我らが大王国よ‼︎」



旧ワラキオ主義の若者や実力者達がワラキオ王国になだれ込んだ。


そんな情勢下でやっとその情勢を耳に挟んだ人間が1人…。



「何なのですか⁉︎ これは⁉︎」



ワラキオ王国の王女は、ベットの上で悲鳴に似た声を上げた。やっと薬物中毒の症状が落ち着いたところでの事であった。



「馬鹿な⁉︎ 何故ワラキオ王国が、私の祖国がこのような拡張政策に…」

「ひ、姫様。恐れながらも、陛下は黒曜帝国に要求を通すため軍備を再び整えたところを、ドラニアに奇襲されたらしく、それをワラキオ王国は撃破しただけにございます」

「だとしても、早く国に戻らなければ…このままでは国力を高めたワラキオ王国と黒曜帝国が戦争になりかねない」



当初王女は事を楽観視していた。自分がどうなろうとも小国たるワラキオ王国ではどうしようもできないだろうと。しかし、ワラキオ王国は戦えるだけのチカラを得た。一歩間違えれば、黒曜憎しで戦争になる可能性もあった。



「皇帝陛下に御目通りを…‼︎ 一刻も早く帰国しなければ‼︎ 特に兄上を抑えなければ本当にワラキオ王国は拡張政策に走りかねない‼︎」

「ははッ‼︎」


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エンド

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