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第4話ー寝返りー

第1章ー神隠し編ー

第4話ー寝返りー

ーーーーーーーーーーーーーーーーー


ワラキオ王国軍はドラニア公国軍主力部隊を打ち破り、ドラニア公国領へと雪崩れ込んだ。そしてワラキオ王国軍は首都へと着実に進撃していた。


だが、楽に進軍できるはずもなかった。



「今こそドラニア貴族が立ち上がる時である‼︎ 古き支配者達には、狭い国土がお似合いだと教えてやれ‼︎」



ドラニア公国の貴族達が挙兵。ワラキオ王国軍を阻むために徒党を組み、その前に立ちふさがった。



「…"城崩し"を」

「はッ‼︎」



ドラニア公国貴族連合軍に対し、ワラキオ王国軍は秘密兵器の使用を決めた…"城崩し"と呼ばれるそれは大砲であった。


もちろん提供元はムーン人民共和皇国の旧式(骨董品とも言う)大砲であり、その総数は20門であった。


20もの大砲の砲撃は、次々と貴族連合軍の兵士達を吹き飛ばしていく。



「な、何だというのだ⁉︎ これはッ⁉︎」

「か、神よ」



この戦いで、ドラニア公国の有力な貴族は、その大多数が大砲の犠牲者(餌食)となった。



「ふん、たわいもない」



しかし、ここまで無敗のワラキオ王国軍にも、決して余裕があるわけではなかった。


ワラキオ王国軍の弱点は"数"であった。そう、質はいいにしても、ドラニア公国に決定打を与えるには、数が少なかったのである。



「かつての栄光を‼︎ ワラキオ万歳‼︎」



そんな中、占領されたドラニア公国の街の一部で、"旧ワラキオ主義"を掲げた人間達がワラキオ王国軍に合流し始めた。彼らは、かつてドラニア公国独立時に併合された地域に住んでいた元ワラキオ王国民の子孫達であった。


気付けば総勢3千もの志願兵が軍に加わることとなった。



ーーー更に、事は連鎖する。



ドラニア公国軍とドラニア公国貴族連合軍の完敗ぶりをまざまざと見せられたドラニア貴族達が、1人また1人とワラキオ王国軍に寝返り始めたのだ。



「わ、我々も元々はワラキオ王国貴族の末裔である。ワラキオ王国軍に与する正当性はある」

「我々はワラキオ王国軍を歓迎する。今こそ我々はワラキオ王国に帰属するべきなのだ」

「な、何でもする‼︎ 我々は必ずワラキオの役に立つ‼︎」



ワラキオ王国の人間からすれば裏切り者達の戯言であったが、ドラニア貴族達は忠義の証として、所領の私兵を率いてワラキオ王国軍に合流した。


その中には、後に有名になる貴族がいた。【鋼鉄卿】と呼ばれる【ガジフ・スターリン】辺境伯である。



「我々は今こそ1つの国となるべきだ」



親ワラキオであり、旧ワラキオ主義者だった彼は、領軍で出せるだけの戦力をワラキオ王国軍に合流させた。



「う、裏切り者どもめ‼︎ 売国奴どもめ‼︎」



ドラニア王国軍司令官マルコス・ディアーノは敗残兵を掻き集め、最後の抵抗を行なった。それはもはやワラキオ王国軍に逆らう最後の司令官としての意地であった。


しかし、それは即座に撃滅される事となる。



「もうまともに我々に対峙できる戦力は残っていまい‼︎ 首都へと雪崩込め‼︎」

「「「「ぉおおおお‼︎」」」」



最後の敵を打ち破ったワラキオ王国軍は、ドラニア公国の首都へ雪崩れ込んだ。



「ここに至っては致し方あるまい…無念だ」



ドラニア公国公王は無条件降伏を宣言した。ワラキオ王国軍は宣言を受諾。ここに終戦と相成った。


ドラニア王国は敗北し、ワラキオ王国は勝利した。



「勝鬨を上げよ‼︎ 軍歌を歌え‼︎ 勝利は我らが手に落ちた‼︎」

「「「「ぉおおおお‼︎」」」」



後に、人々はワラキオ王国軍復活のこの戦いを、復活戦争と呼んだ。



*********

○黒曜帝国○

○王城:ハウスブルク城○



王城の謁見の間で黒曜帝国皇帝【ジェームズ・ドラビオ・ローエン】は、静かに将軍からの報告を受けていた。



「ドラニア公国が敗北…いや、ワラキオ王国が勝利したか」



ジェームズ帝はため息を吐き出す。



「これよりドラニアはワラキオに併合され、ワラキオの国力は元の3倍近くになるかと思われまする」



将軍が今後の予想…というよりも、ほぼ確定情報を伝える。



「超大国ワラキオ大王国の復活…か」



この時点で、ワラキオ王国は寝返った貴族の戦力を合わせて6万近くの大軍となっていた。これは黒曜帝国としても無視できない戦力数であった。



「諜報員からの報告では、新生ワラキオ王国軍の強さは、かつてワラキオ王国の誇った最強の軍団【イェニチェリ軍団】を越えるとのこと」

「厄介な…」



旧ワラキオ王国軍イェニチェリ軍団は、かつてリアブロ大陸に勇名と武勇…そして残忍さを知らしめた戦闘軍団である。その強さは大陸最強であり、この軍団が内紛が起きて自然崩壊しなければ、ワラキオ王国はさらに100年は大国のままだったと言われている。


なお、反乱を起こした一族を一族郎党槍で串刺しにして、骨になるまで放置したことから【ツェペッシュ(串刺し)軍団】の異名とも呼ばれた。



「ワラキオを支援した国のことは分かったか?」

「国名が"ムーン人民共和皇国"で、大陸の外の国としか…」

「余計なことをしてくれたものだ…おかげで激怒しているワラキオ王国が軍事力という凶器を持ってしまった。怒りと凶器は人を突飛な行動に走らせる。

…国境は?」



ワラキオ王国と黒曜帝国の国境線には、ワラキオ王国再軍備化開始から3万近くの兵士達が警備に当たっていた。



「合計10万の兵で守るよう命令を下しました。突破されることはないでしょうが…」

「ワラキオの戦意を削ぐほどではないか」



ジェームズ帝は頭を抱える。



「せめて、第1王女が説得を手伝ってくれれば」

「牢獄から解放された後は部屋にこもりきりで、部屋から出てこられる気配はなく、生活の世話はワラキオ関係者が行なっており、我々は顔を見ることすらできませぬ。 そもそもあの売女…失礼、詐欺師の女が盛った薬物のせいでしばらくは安静が必要かと」

「まあ、そうであろうな」



ジェームズ帝は深い深いため息を吐き出す。


そう、ワラキオ王国の王女は人前に出れる状態ではなかった。投獄されている間に薬を盛られ、薬物中毒の状態に陥っていたのだ。


ゆえに、ワラキオ王国が王女の返還を求めても、そう安易に答えられなかった。



「戦争を避けるために、今の我々に出来ることは…何だと思う?」

「元々が半ば無理やりの婚約でしたからな。さてはて、我々の謝罪の意思がどこまで届くか」

「しかし、やるしかあるまい。今同盟相手としてワラキオを失うのは痛いし、何よりもこのままワラキオ王国が、かつての栄光の大王国化を目指せば、確実に我が国に来る。ここら辺で釘を刺しておきたい」

「現ワラキオ王は非旧ワラキオ主義の筈。そこは怒りさえ何とかなれば問題ないでしょう…問題は第2王子です」

「旧ワラキオ主義の塊の…今頃小躍りしているだろうな」



ワラキオ王国第2王子は、各方面に有名なほど旧ワラキオ王国の復活を思想する、生粋の旧ワラキオ主義者であった。そんな男がこの状況で黙っているとは、ジェームズ帝には思えなかった。



「…一先ずは王女には療養してもらおう。ワラキオには戦勝祝いと使者を送れ。 あとで親書を書く」

「ははッ‼︎」



ワラキオ王国と黒曜帝国の未来は、未だに暗かった。



*********

○ムーン人民共和皇国○

○王城:朧月城○

○皇帝執務室○



「そうか、ワラキオが勝利したか」



二井が安堵した様子で息を吐き出す。



「はっ、どうやらドラニア貴族達の寝返りがあったようです」



将校が答える。



「ワラキオ王国軍の弱点は数だからな。良くも悪くも、兵数が増えれば弱点は克服可能だ」

「はっ」

「ああ、戦勝祝いを送っておいてくれ」

「かしこまりました」


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エンド

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