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第2話ー再軍備支援ー

第1章ー神隠し編ー

第2話ー再軍備支援ー

ーーーーーーーーーーーーーーーーー


*********

○ムーン人民共和皇国○

○【王城:朧月城】○

○会議室○



「こういう会議は初めてだな」



二井が画面に映し出される3人に向かって話しかける。



『ま、予定が合わないこともあるだろ。実際一番近い俺の国からでも、ムーンまでどんなに急いでも4時間くらいかかるしな』



映像の久島が、二井の言葉に答える。



「仕方ないか」



二井は肩をすくめる。



『で、急に会議なんてどうしたの?』

『オラ気になるゾ‼︎』



夕霧と近藤が、会議の発案者である二井に問う。


そう、今日の会議はビデオ通信での会議であった。緊急で会議を招集したために、集合が間に合わなかったのだ。



「ああ、実はとある国から依頼というか打診が来てな。一応皆にも許可をと思ってな」

『打診?どんな?』



夕霧が近藤に問う。



「先ず前提の話になるが、その国の軍は近衛兵くらいがせいぜいでな。大国の駐屯軍で国防を行なっていた。しかし、その大国との関係が極度に悪化したために軍備化が必要になったらしいんだが…それをうちの武器でやりたいって言ってきた」

『なにそれ、大国をアメリカ、その国を日本にしたら完全日本じゃないデスカー』



近藤が笑みを浮かべる。



『二井はどうする気だ?』



久島が二井の真意を問いかける。



『支援すれば、その国との友好関係は築けるだろうし、武器を依存するようになれば半属国扱いもできるだろう。だが、大国がどう動くか分からん。最悪その大国とその国の奪い合いになるかも知れん。メリットとデメリットは半々というところだ。どうする気だ?』



ワラキオか大国か。久島は二井を見つめる。



『大国が攻撃してきたとしても、文明レベルは中世と同レベルでしょ? 返り討ちにすればいいんじゃない?』



近藤が武力による制圧を提案する。



『周辺国家からの評価の問題だ。初っ端から対立に介入し、戦争を始める国家だぞ?危険な国だと思われても仕方ないぞ』



久島が慎重な意見を出す。



「(ほう…)」



二井は2人の対応に目を細める。何故ならゲームでの対応と現在の対応がまるで逆だったからである。


久島はゲーム内で【暴君】の異名を持つほどの好戦的なプレイヤーであり、逆に近藤は平和主義であった。


それが今では久島が平和を説き、近藤が戦争を真っ先に選択肢に加える。


まるで逆の対応であった。



「(とはいえ、現実のことを考えると納得の考えではあるか…)」



現実において、二井の久島と近藤への評価はゲーム内とは違ったものである。


久島は右翼国粋思想と事なかれ主義を持っており、それを自認していた。近藤は吹っ切れるととんでもないほど吹っ切れる日本人らしい癖のようなものがあった。


つまり、久島は下手に動いて事を悪い方へ転がしたくないと考えており、近藤は転移のストレスで吹っ切ってしまったと考えられた。



「(近藤は少し落ち着けばなんとかなるか。問題は久島か…)」



すでに吹っ切ってしまった近藤と違い、ここから限界を超えた久島はどう吹っ切るか分からなかった。そして、久島は元々ゲームで好戦的なプレイヤーだった事を考えると、二井にはその先は大変危険な未来が見えていた。



「(まあいい…今はな) 俺は支援をするつもりだ」



二井は支援の実行を告げる。



『大国と対立してもいいということか?』

『ひゅー♪ 流石ニイニキ♪』

「茶化すな」



二井は久島の問いに答え始める。



「今回の依頼には当然報酬がつく。我が国が提案したのは租借地だ」

『租借地?』



近藤が不思議そうに単語を呟く。どうやら租借地を知らなかったようだ。



「この場合の租借地は、金を払って借りる土地のようなものだ。今回は代金の代わりに、武器の納品と新設軍隊の教育を支払うことになった」

『ワラキオ王国の租借地をリアブロ大陸への橋頭堡とする気か⁉︎』



二井の狙いを予想した久島が声を上げる。



「ああ、その租借地を橋頭堡として現地で情報を集め、ワラキオ王国を仲介を頼んで外交を始めるつもりだ」

『確かに現地に中継地があるのとないのとじゃ、話が違うよな』



近藤がウンウンと頷いている。



「もちろん、皆の分の大使館も用意するつもりだ」

『さっすがニイニキ♪』

『正直助かるな』

『だね〜』



瞬間、近藤の画面に文官らしき男が現れ、耳元で何かを囁く。



『え?マジで…分かった。あとで詳しい指示を出す』



近藤が文官を下がらせる。



『今報告があって、うちの沿岸警備隊が新しい大陸を発見したって』

「ほう?」



近藤の報告に二井が反応する。



『沿岸警備隊が?新しい大陸は近いのか?』



沿岸警備隊とは本来沿岸を警備する名前のままの艦隊である。そんな艦隊が新大陸を見つけたのかと久島が問う。



『沿岸警備隊の一部の船を近海の索敵に出してたんだよ。その索敵に出してた船が見つけたらしい。まあ、まだ見つけただけで調査も何もしてないけど』



そう、近藤は沿岸警備隊から25隻もの警備艇を抽出し、5隻1艦隊で周辺海域を索敵させていた。その結果が新大陸の発見であった。



「…近藤、その大陸はお前達に任せて構わないか?」

『別にいいけど…どうして?』

「正直他の大陸に手を出す余裕がない。リアブロ大陸のワラキオだけで手一杯だ」



そう、彼らは元々は普通の学生であり、ゲームでしていたとはいえ突然国家元首となった。簡単に言えば外交慣れしておらず、多くのことに手を出す余裕がなかったのだ。


よって、二井は新大陸を一先ず置いておいて、ワラキオ問題に注力しようとしていた。



『俺らが調査隊を出すのは自由だよな?』



久島が調査隊の派遣を提案する。



『いいんじゃない?夕霧ニキはどう?』

『うーん、僕は環境調査が済んでないからまた今度にするよ』



近藤の提案を夕霧が断る。



「それじゃあ、新大陸には近藤と久島、リアブロ大陸は俺と夕霧で対応するか」

『その方が分かりやすいか…なら、リアブロ大陸に派遣しているうちの人間は引かせておこう』

『俺はもう少し商売させてみようかな?』



久島がリアブロ大陸の調査を中止し、近藤が少しの未練を見せる。



「では、担当も決めたところで解散としよう。また定期の会議で会おう」

『おつー』

『またな』

『おつかれー』



画像が全て消える。



「…さて」



二井が手元のボタンを操作すると、久島が画面で現れる。



『どうした?二井君。 会議は終わったよな?』

「支援について相談したくてな」

『俺に…か?』

「ああ、ワラキオへ送る武器とかな。 そういうの得意だろ?」



久島はアニメオタクであったが、軽度ではあったがミリタリーオタクでもあった。よって、二井よりも武器については詳しかった。そこで二井は久島に支援の相談をしたのだ。



『うーん、やっぱりマスケット銃あたりが妥当だろうな。大砲は初期型カノン砲を数門というところじゃないか?』

「それだと黒曜帝国に対抗できなくないか?」

『別に対黒曜戦で勝てるようにとは言われてないんだろ? それにその程度の装備でも相手に大損害を与えることはできるはずだ』

「まあ、それはそうだ」



二井はなるほどと頷く。



『それと、使い方と戦い方を教える軍事顧問団は必須だろうな。それに、師弟関係はかなり強いものだ。ワラキオ王国軍に影響力を持ちたいなら軍事顧問団はかなり有効だ』

「ふむ、分かった。そこらへんを配慮して支援するとしよう」

『二井君。失敗しそうなら離れるのも手だからな?』

「ああ、ありがとう」



*********

*********



ーーー大陸において、最も早く近代科学軍を編成したのは、ワラキオ王国だとされる。


黒曜帝国との関係が悪化した530年代。かつての繁栄を失っていたワラキオ王国は、小国と言える国力まで落ちていた。国防も、関係悪化前の黒曜帝国軍に頼っていたほどである。しかし、関係悪化により、ワラキオ王国は己の手で軍を再編成する必要性に迫られていた。


だが、黒曜帝国も周囲の国家に対し、ワラキオ王国が軍事行動を起こさないように、軍事物資の販売を禁止するように求めた。周囲の国家は黒曜帝国が己の落ち度を認め、謝罪の意志があることもあり、回避できる戦争だと考えた。


すでにこの年だけでもあちらこちらで戦火が絶えなかったため、近くで戦争の火が燃え上がるのを避けようとしたのだ。結果としてではあるが、武器等軍事物資輸出を制限し、ワラキオ王国に対しては自制を求める声明をした。


黒曜帝国がワラキオ王国の爆発を止めるための行動ではあったが、この結果に憤慨したワラキオ王国は、一種の狂気を纏って、血眼で武器を探した。そして、大陸外から来た商隊に目をつけた。


その大陸外国家の商隊は、快く大量の武器等軍事物資を売った。その武器のあまりの高品質に、ワラキオ王国はその国との外交関係を強化し、その国式の軍隊を作ることにした。


その国式にした理由は単純であり、新たな武器であり近代科学軍の代名詞である"銃"の効率的運用の仕方が分からなかったためである。



ーーーだが、ワラキオ王国はあり得ないほどの当たりを引いた。

ーーーワラキオ王国が選び取った国の名前は、"ムーン人民共和皇国"。

ーーー押しも押されぬ、()()()()()()()()()であった。



ムーン人民共和皇国の支援のもと、ワラキオ王国は近代科学軍の編成を行った。


とはいえ、流石に最新式は提供されなかった。


例えば、小銃は雷管式の前装式ライフル歩兵銃【月見(つきみ)型小銃】が基本装備となった。当時のムーン人民共和皇国の技術力からすれば骨董品並みの価値しかないそれを、ムーン人民共和皇国はわざわざ量産してワラキオ王国に提供したのだ。


しかし、この銃は大陸においては絶大なるアドバンテージとなり得る破格の品であった。


同時に、多数の馬や剣や槍弓矢なども提供された。


これにより、ワラキオ王国は大陸最新科学武装を手にした兵を手に入れた。


さらにムーン人民共和皇国は軍事顧問団を派遣。急速にワラキオ王国軍を組織化し、将校に教育を行った。


軍再編から1ヶ月が過ぎる頃には、一先ずは戦える軍隊が出来上がっていた。



ーーー急速に軍拡を進めるワラキオ王国。

ーーーワラキオ王国をなだめようとしつつも、警戒する黒曜帝国。

ーーー両者がぶつかるのは自明の理…そう、思われていた。


ーーーしかし、戦火が上がったのはワラキオ王国南。

ーーーワラキオ王国と面積は少ないながらも国境を接する小国よりは少し大きい程度の中規模国家。

ーーー【ドラニア公国】からであった。



ドラニア公国は焦っていた。元はワラキオ王国領であり、当時のワラキオを裏切って独立した国であったため、恨まれていると思い込んでいた。


そして何よりも、今は小国とはいえ、元大国が軍隊を復活させるというのは、国防面からしても恐怖に値するものであった。



ーーーならば。

ーーー攻められる(やられる)前に攻める(やる)までだ‼︎



ドラニア公国軍5万人が北進を開始。後に【復活戦争】とよばれるワラキオ王国とドラニオ公国との戦争が始まった。



ーーーワラキオを討ち滅ぼせ‼︎

ーーードラニアの裏切り者に天誅を‼︎



侵略者への怒りに燃えるワラキオ王国軍。恐怖という狂気を戦意に変えるドラニア公国軍。


両雄は激突することとなる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

エンド

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