if END
これは本当にあったかもしれない話。
『私より』
いつも通りの朝。なんにも変わらない日常。なのに、何かが足りない気がした。
ベッドから起き、寝ぼけ眼で学校の準備をする。一階へ行き朝食を済ます。そのまま歯磨きと洗顔をして寝ぼけている頭を覚醒させる。
部屋で制服に着替え、鞄を持つ。すると、下からお母さんの声が聞こえた。
「まつりー、一真君が来てるわよー」
「はーい、今行くよー」
待たせないために急いで部屋を出ようとしたとき、ベッドの下に何か光る物が見えた。
帰って来てから見る方が正しいはずなのに、なぜか今確認しなきゃいけない気がした。
ベッドの下に手を入れて、光る物に触れる。触った感じはツルツルで丸かった。取り出してみると、それは透明な水晶だった。
「なんで私の部屋に?」
友達が遊びに来た時、忘れていったのかもしれない。そう思い、鞄に入れると階段から誰かが上ってくる音が聞こえた。
「あ、やばい」
誰が来るかと言ったらお母さんしかいない。呼んでから全く下りてこない私を怒りに来たはずだ。
鞄を持って急いで部屋を出る。そこにはやはりお母さんが上ってきていた。
「ほら、早く──」
「行ってきます!」
お母さんの言葉を遮り、私は急いで家を出た。
出ると、私が来るのを待ってくれていた一真が立っていた。
「相変わらず遅いな、まつりは」
「今日は早く出ようとしたよ! でも、気になる物を見つけて……」
「気になる物?」
「うん、えっとね……」
私が鞄を開けようとしていると、一真が先に歩き始めた。
「早くしねーと遅刻するぞー」
「あ、待ってよ~」
慌てて追いかけ、一真の隣を歩く。
「んで、気になる物ってなんだ?」
「えっと、これこれ」
鞄の中から水晶を取り出し見せる。
「水晶? なんでそんな物が……まさか、誰かから貰ったのか?」
一真の雰囲気が変わって、怒っている気配がした。
「ち、違うよ! 私は誰からも貰ってないよ! 貰うとしても一真だけだから!」
「ふーん、まあいいや。それより、誰からも貰っていないならなんでお前が持ってるんだ?」
「さっき家を出ようとした時にベッドの下からこれが出てきたの」
出てきた場所を言うと、一真が驚いた表情をした。
「ベッドの下か……俺も水晶じゃないけどこれが出てきた」
そう言って鞄から取り出したのは一本の棒だった。
「それってただの棒だよね?」
「まあ、そうなんだけどな。どっからどう見てもただの棒なんだけど、どうしても捨てられないんだよな」
「それは私も。この水晶を持ってからなんか捨てちゃいけない気がするんだよねー」
お互いに謎の物を見て悩んだ。そのまま学校で水晶と棒のことを聞いたが、誰も知らないようだった。なんのヒントも得られないまま時間だけが過ぎていき、放課の時間になっていた。
「手がかりなしか……」
「誰も知らないっていうことは、誰も置いていってない、という事だよねー」
お互いにため息をついた。
「ねえ、一真。その棒を借りてもいい?」
「ん? まあ構わないけどどうしたんだ?」
「一緒にしてたら何か起きないかなー、て思ったの」
「なんも起きないだろ」
そう言いながらも棒を渡してくれる一真。棒を受け取ると、水晶が仄かな熱を持ったような気がした。
それから他愛ない話をして、私の家の前に着いた。
「それじゃ、今日も送ってくれてありがとう」
「ん……」
いつもならここで一真が歩いて帰るのだが、なぜか私をじっと見ていて動かなかった。
「どうしたの? 私の顔に何か付いてる?」
「いや、そうじゃないんだが……」
歯切れの悪い返事をする一真に首をかしげて見ていると、何か覚悟を決めたのか真剣な表情をした。
「なあ、まつり。今週の土曜日、デートしないか?」
「……えっ」
あまりにも聞き慣れない言葉が出てきた。別に『デート』という単語が聞きなれないのではなく、一真からそんな言葉が出てくるなど思いもよらず、思わず間抜けな言葉が出てきてしまったのだ。
すぐに返事をしなきゃいけないのに、その言葉が出てこなかった。何も言えないまま一真の顔を見ると、その頬は僅かに赤みを帯びていた。
「……」
「……」
見ているこっちも赤くなってしまい、お互いに無言の時間だけが流れて行った。
やがて、一言だけ口から出せた。
「……はい」
その返事はか細くちょっとした音で掻き消えてしまいそうな音だったが、一真には届いたようだった。
「……それじゃ、また後で連絡するわ」
それだけ言うと早足で自分の家へ歩いて行った。
しばらくその姿に見とれて、カラスが頭上で鳴いた時にハッとして、家の中に入った。
「◇?♪」
鼻歌を歌い、スキップをしながら部屋に向かい、一気にベッドへダイブした。
「かーっずまっから~さっそわーれたー」
変な歌を歌いながら足をばたつかせ、笑っていた。
一真と付き合い始めてから初めての誘いの言葉だった。告白はあっちからしたのにそれ以降は全く前進せず、私が振り回し続けていた。
思わぬことに舞い上がっている私は、さっきまで話していた水晶のことなど忘れていた。
「さて、土曜日は何着ていこっかな?」
土曜日はまだまだ先だけど、そんなのは気にせず浮かれたままクローゼットを開ける。
そこには一真と一緒に出かける時だけ着る服が何着もあった。
「どーれーがーいーいーかー……な?」
服を見ていると、中に見慣れないものが入っていた。
「何これ?」
取り出してみると、それは魔法使いが着るようなローブだった。
「なんでこんなのがあるんだろ? こんなの買った覚えはないし……」
身に覚えのないものを前にして、頬をかく。すると、濡れる感触がした。慌てて指を離して、鏡を見る。そこには涙を流している私の顔があった。
「なんで私は泣いてるの……?」
泣いている顔を見た瞬間、いきなり胸の奥から寂しさと悲しみが込み上げてきた。
自分でもよく理解出来ない感情に戸惑っていると、水晶が小さな光を放っていた。
「さっきまで光っていなかったよね?」
疑問に思いながら恐る恐る水晶を手に取る。すると、水晶の輝きが一段と増した。
「わ、わわっ!?」
輝きにびっくりして落としてしまった。水晶はそのまま床に落ちて割れた。
「ど、どうしよう……弁償、しなきゃいけないのかな……」
どうしたらいいのかわからず、とりあえず破片を掻き集めようとして、その手を止めた。
「なに、これ……?」
水晶は光の粒を散らしながら空気に溶けるように消えた。その代わり、一つの円が出来上がった。円には無数の線が複雑に描かれ、光っていて、まるで、
「魔法陣……みたい」
魔法陣らしきものは、その光を増しながら少しずつ大きくなっていった。
その様子を見ていることしか出来ず、前に立っていた。
ドンッ
「えっ……」
いきなり背中から誰かに押されたような衝撃がした。足が一歩前に出て、体が魔法陣らしきものに触れてしまう。
光がより強くなり、部屋の中を照らした。
私はそんな状況で誰が押したのか後ろを見る。そこには、うっすらと人の形をした誰かがいた。そう思った瞬間、見ていた景色が切り替わった。
◆
景色が切り替わった世界は、いつも見ている自分の町と変わりはなかった。だけど、普段なら誰かしらは通っているこの道路には、誰もいなかった。それだけでなく、車の音や動物の鳴き声も聞こえなかった。
「ここは……」
自分が知っている町だけど、知らない世界。
私はとりあえずここら一帯が見えるあの山に向かった。
向かっている道中も人の影はなかった。山に登り、今は更地になっている場所に来た。
「どうしてここに来たんだろう……」
自分でもよくわかってない。だけど、どこか懐かしいような気がした。
でも、ここに来たのは小学生のときが最後で、それ以降は一回も来ていない。なのに、何故ここを見ただけでこうも胸が締め付けられるのだろう?
私にはわからなかった。
「なんで、こんなに胸が締め付けられるの……?」
『それは、あなたが忘れているからよ』
声がして、びっくりする。それから声がした方向へ、ゆっくりと顔を向ける。目の前には誰かが立っていた。
誰かと言うのも、その姿がぼやけててはっきりと見えなかったからだ。だけど、その声にはすごく聞き覚えがあった。
「ここは一体どこ?」
『ここはあなたの記憶の中から私が再現した世界』
「なんで私はここにいるの?」
『あなたに伝えたいことがあるから』
「あなたは、誰?」
『……私はアヴニール』
聞いたことがない名前だった。外国人にしても、日本語があまりにも流暢で外国人とは考えづらかった。
誰かは気になるが、それより気になることを言っていた。
「私が忘れているからって、一体どういうことですか?」
『言葉通りのままよ。あなたは忘れている。とても大切なことを』
そう言われて、確かに何か忘れているような気がした。
『思い出せるはずよ。あの時、あの人はあなたにそれを渡したから』
アヴニールが私の胸に指をさすと、ずっと首から下げていたネックレスが光った。
「この花は……」
花の名前は勿忘草。いつの間にか持っていて、捨てるのも勿体なくてお洒落するときや学校から帰ってきてから、いつも付けているもの。
『思い出せばあとは棒が教えてくれる』
「棒って……あ」
棒という言葉で思い出した。一真のところにあったあの棒だ。
「棒が教えてくれる……何を教えてくれるんですか?」
『……思い出せば自然とわかるわ』
何も教えてくれなかった。
すると、この世界に大きなひびが入った。
『時間ね……』
「え、まだ私は聞きたいことが……」
『混乱、してるかもしれない。けど、もう時間がないから全てを伝えることは出来ないの。でも、これだけは覚えておいて。願って。そうすればきっと、あなたが童話の中だけだと思っていた物が応えてくれるから』
「童話の中だけ……思っていた?」
なんとなく言いたいことがわかる。でも、それが存在するはずがなかった。
しかし、思っていることが事実だとしたら今起きている出来事にも納得は出来る。しかし、それが本当なのかどうか知りたかった。
「あの、思っていたって……それはまほ――」
『ごめんなさい……もう私の力も限界だわ』
私の言葉を塞ぐように、目の前の人は腕を振った。
空に黒い穴が開く。それはブラックホールのごとく周囲の物を吸い込み始めた。私の体は浮き始めて、慌てて下に生えていた草を掴む。
「わ、わわ、助けて……!」
必死に目の前の人に手を伸ばして服らしきものを掴んだ瞬間、それが取れた。
「え……」
私は間抜けな声を出した。それと同時に掴んでいた草が抜け、黒い穴に吸い込まれていた。
◇
「ふう、ごめんね」
もう体の維持も限界だった。『彼女』を呼び出し、記憶を呼び起こすために町を再現した。けど、それを維持し続けるには内包されている魔力を大量に消費し続け、結局短い時間しか『彼女』と話せなかった。
この町も崩壊を始めていて、あと少ししたら一緒に消えるだろう。別にそれは舞わなかった。ただ、重要な情報を伝えられずに遠回りな事しか言えなかった。
「……■■はきっと応えてくれる」
重要な情報は元々不完全な状態で作られたため、その際に破損してしまった。今みたいに口にしても音にはならない。
「頑張って、過去の私」
私は過去の自分にエールを送りながら、消えた。
◇
私はゆっくりと体を起こした。周りを見ても自分の部屋だった。時間は一分も進んでいなかった。しかし、今の私にはそれ以上の問題があった。
「さっきの人……私、だよね……」
最後の瞬間見たのは、髪型こそ違うけど私と同じ顔だった。なんで自分があんな所にいたのかわからない。
「なんで……」
考えても答えは出ない。どうしようか悩んでいると、さっき言われた言葉を思い出した。
「棒!」
ベッドに置きっぱなしにしていた棒を手に取る。しかし何も起きない。そこでその前に言われたことを思い出した。
「私は何か忘れている……何を忘れて……」
そう言われてから考えてみると、何か忘れているような気がした。毎朝起きると感じる、あの物足りない感じと似ている。でもそれが何なのかがわからない。
「何を忘れているの……」
必死に考えた。その時、最後に言われた言葉を思い出す。
「願う……童話の中だけ、私が思っていた……それって魔法、だよね」
そう、いつも私は童話や絵本に出てくる魔法に憧れていた。本を読む時も、それが出てくるものしか読まなかった。
「でも、魔法なんて……」
魔法と呟いて妙にそれがしっくりときた。
「……願えばいいんだよね」
魔法が本当にあるのか、それはさっき体験したことが示している。だけど半信半疑のままだった。だから、願ってみる。何を願うかはもう決まっている。
「私が忘れている記憶を思い出させて……!」
願った。数分間じっと願い続けた。静寂が部屋を支配したが、それを一つの現象が打ち破った。
私が持っていた棒が、いきなり動き出した。びっくりして手放すも、棒はずっと宙に浮いていた。それからゆっくりと私に近づき、その先で私のおでこを軽く叩いた。途端に何かが流れ込んできた。
それは、私が忘れている記憶だと理解する。
「思い、出した……」
私は自然と涙が流れた。
「……先生……先生!」
必死に忘れていた人のことを呼んだ。それで誰かがやって来るわけではなかったが、今の自分の気持ちを落ち着けるには、十分な効果があった。
涙を拭い、立ち上がる。それからクローゼットの中にしまわれている愛用のローブ(・・・・・・)を取り出した。ローブに袖を通し、棒を手にする。それから、首に下げていたネックレスを取り出した。それは花が一輪付いているだけの何の変哲もない物。だけど、その花に重要な意味があった。
「勿忘草……花言葉は『私を忘れないで』」
単純だけど、それに込められている思いが伝わる。ネックレスを元に戻して、私は一真の所に向かった。
◇
ピンポンピンポンピンポン……
音が連続で響く。迷惑かもしれないが、それよりも重要な事だったから今は構わず連打し続ける。
すると、中からドタドタと怒った足取りで私が待ち望んでいた人が出て来た。
「はいはい、うるさいから連打するんじゃ……て、まつり? どうしたんだ、しかもその服も」
一真は私がこんなことをしていることに驚いた顔をした。だけど、私は今の一真に構っている余裕がなかった。
「一真、ちょっとゴメンね」
「ん? 何をいきなり謝って――いたっ!」
私は手に持っていた棒で加減をせずに一真の頭を叩いた。
「お願い、思い出して……!」
一真は痛そうに頭をなでていたが、突然驚いた表情をして顔をしかめた。
「なんだよ……これ。まさか、これって……」
「思い出した?」
「あ、ああ……いきなり流れ込んできた記憶に驚いただけだ。それより、なんでこんな大事なことを忘れていたんだ?」
「それはおいおい話すよ。今は私に掴まって」
「わかった」
一真は私の手を握る。それから私は、未来の『私』からもらった魔法を使った。
「【そこには何も存在しない。存在すべき場所は彼方にあり】」
「おい、なんだそ――」
一真が興味深そうな声を出したが、それも起動した転移魔法で途切れた。
◇
私と一真が転移してきたのは、先生が住んでいるツリーハウスの前だった。
「……転移してきたのかよ……。まつり、一体いつ覚えたんだよ!」
「それはまた後で。今は中に入ろ」
そういうと私は、自分の気持ちに急かされながらツリーハウスの扉に触れる。
「お願い、開いて……」
願った瞬間、先生しか開けられないはずの扉が開いた。私は驚いたが、すぐに中に入る。
中は暗くて、床や壁はボロボロになっていて、私達がいた時と違っていた。
「先生……」
「なんだよ、これ……」
お互いにこの光景に悲しく思いながら、辺りを見る。しかし、そこには誰かが暮らしていいたような跡はなかった。
「もう、会えないんですか……」
私は先生に出会えないのかと思った。でも、それだとおかしい。完全に忘れてほしいならこのネックレスをくれるはずがない。この花を付けるはずがない。
私が気力を振り絞って探そうとすると、棒が突然動き出した。棒は私の手から離れ、ツリーハウスの奥に飛んで行く。一真がその後を追いかけると、
「まつり、こっちに部屋がある」
「え、そこは何にもないんじゃ……」
棒が飛んで行ったのはツリーハウスの奥。そこは何の部屋もないはずだが、一真がそう言うのだからあるのだろう。
奥の方に進んで行くと、飛んでいる棒と一真がいた。
「この部屋って……」
「多分な」
私と一真はお互いに頷き、扉の取っ手に手をかける。ゆっくりと開けると、そこは綺麗な部屋だった。中は色んな花に囲まれていて、空気もよかった。
その中で、一人水やりしている人がいた。白いワンピースに長い髪。十歳ぐらいの女の子で、可愛らしい印象を受けた。でも、私はその人が先生だと感じた。
部屋の中に入り、呼ぶ。
「せ、先生!」
女の子の動きが止まるも、幻聴だと判断されたのか水やりを再び始めた。
「先生!」
もう一度呼ぶと、また止まる。そしてまた水やりを再開するのかと思ったけど、違った。
女の子は振り向いて、私の姿を見た。そして、水やりに使っていたじょうろを落とす。
「まつり、ちゃん……?」
「はい……せんせーい!」
私は勢い良く先生に抱きついた。先生は私の勢いに負けて尻もちをつく。
「先生……先生……!」
泣きながら先生の名前を呼び続けた。
「まつりちゃん……」
小さな手で私の頭をなでてくれた。泣き止むまでずっと……。
◇
私が泣き止んでから、先生はお茶を用意してくれた。先生の姿は十歳の女の子と一緒だが、その口調は大人びていた。
「二人共、記憶を取り戻したのね」
「「はい」」
「二人の記憶を封印した理由、それはわかっているのよね」
「はい……未来での出来事は全部知っています」
「俺もです」
「……そう、それでも私と一緒にいたいの?」
その問いに私と一真は笑ってしまった。先生は至って真面目な質問をしたのに、いきなり笑われて目をぱちくりさせていた。
「先生、私達が今ここにいることが答えです」
「はい、未来であんなことが起きたなら、また別の答えを探せばいいじゃないですか。なんたって――」
「「魔法の可能性は無限大なんですから」」
私達二人の声が響く。先生はしばらく俯いていたが、やがて顔を上げた。
「わかったわ……二人ともありがとう。未来での出来事を知っているのに、私を、――魔法を、嫌いにならないでくれてありがとう」
ただでさえ小さい先生の体、今腰を折って謝られるとさらに小さく見えてしまう。
「先生、顔を上げてください!」
「そうですよ、先生が謝ることはありませんってば!」
私達は先生に顔を上げるように言うが、一向に上げようとしない。大人の姿だった先生でも中々上げようとしなかったことを思い出した。
どうしたものか悩んで、一ついいことを思いついた。
先生の体は今小さいから軽い。そう思って、その体を抱き上げた。
「きゃっ、いきなり何を……」
「先生、軽すぎません? 私でも持てちゃいますよ」
「し、仕方ないじゃない! これが本当の姿なのよ!」
「へー、見た目は十歳ぐらいなんですね」
一真が地雷を踏んだ。先生の雰囲気が一瞬で変わり、一真を睨んだ。
「一真君、見た目だけなのかしら……?」
「あっ……」
一真がしまったという顔をした時にはもう遅い。先生がどこからか取り出した、棒を握っていた。
「覚悟はいいわね」
先生は私の手から離れ、じりじりと一真に詰め寄る。見た目は十歳ぐらいの女の子に気圧された一真は、後ずさる。
さすがにこれ以上行ったら危険なので、話を変えることにした。
「先生、それより魔法を教えてください。また先生の授業を聞きたいんです」
「そ、そうですよ。俺も先生の授業を聞きたいです」
一真が私が出した助け舟に乗りながら調子いいことを言っていた。先生も、そこまで気にした様子はなく、ため息をついてから私の顔を見た。
「そうね、始めましょうか……て言いたいのだけど、その前にこのツリーハウスを直さなきゃね」
「はは、そうですね……」
「よし、今日は直したらおしまいにして、授業は明日からですね」
「ええ、そうしましょ」
私達は先生と一緒にツリーハウスを直し始めた。
◇
次の日、先生の所に行った。
「先生、来ましたー」
「おい、あまりはしゃぐなよ」
「だってー、先生の授業が楽しみなんだもん♪」
「へいへい、そうですかい……」
「ふふ、相変わらず仲良しね。まさか、付き合っているの?」
「「……」」
先生にそう言われると照れてしまう。二人して顔を赤くしていると、先生が苦笑した。
「そう、仲良しでいいわね。ほら、授業を始めるわよ」
「「はい!」」
私達はツリーハウスの中に入り、魔法の授業を受け始めた。
◇
これは本当にありえたかもしれない話。
魔法の可能性は無限大である。
魔法は願いから生まれた物。
あなたが願えばまた別の終わりがあったのかもしれない……




