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魔女の弟子  作者: かじら
魔女の学校 ~問題~
13/28

謎と謎

 俺は一人学園の屋上にいた。ただ一人でいたかった。だけど……

 つまらない。こんな授業がずっと続くなんてつまらない。確かにあの教師には魔法への『アイ』みたいなのを感じた。それが俺にはどういう物かはわからないけど、あの教師は知識がある。特に魔法の歴史やそれがどのように使われてきたなどといったものが多かった。そして、さっき言ってきた魔法の使い方だ。あれは今後も言う言葉だろうとなんとなくわかった。


「何が人を傷つけたりする道具じゃないだ。魔法で強くなれなきゃ自分の身を守れないだろうが、相手を倒せないだろうが……」


 俺には力が必要だった。自分の身を守れる力が欲しかった。そのためにここに入学した。力を得ることが出来るこの学園に。そしてひたすら勉強した。幸い俺には魔法の適性が有り、難易度が高い魔法もすぐに習得できた。そんな時、あの教師が現れた。元気が良すぎてうるさい。正直俺は苦手だ。だからあいつの授業から離れたのに、そしたら鬼ごっこときたものだ。バカにされているのかと思った。だが違った。あの教師の目を見れば純粋に自分の授業を受けてほしいだけ、それだけを感じた。そのためにわざわざ慣れない挑発までしてきているのがよくわかった。


 そして負けた。だけど、あの教師の実力は本物だという気がした。小さな棒でも工夫して飛び、魔法で自然現象を意図的に引き起こす。この二つの魔法は誰にも危険が及ばず、かつ鬼ごっこで逃げるのに適していた魔法だった。それに対して俺は風で無理やりバランスを崩そうとして、紙吹雪で視界を塞ごうとした。俺が使ったのは危険性が高く、最悪落ちていたかもしれない。なのにそれをことごとく(かわ)した。


 それを見て思う。自分が誰かを傷つけようとして勉強してきた魔法を真っ向から否定されている。そんな気がした。


「なんなんだよ、あの教師は……! ムカつく!」


 このイラつきがどこからきているのかわかる。そう、あの教師だ。だけどあの教師は悪くない。言っていることも正しい。間違っているのは……


「俺だっていうのかよ! せっかくここまで魔法の勉強したっていうのに、強くなるためにしたっていうのによ! 俺が間違えてるって言いたいのかよ!」


 俺が悪い、俺が間違えている、それはわかっていた。でも、強くなりたい、自分を守るために……この間違いをだれか肯定してくれる人は……


「僕がキミを肯定しよう」


 背後から声が聞こえた。振り向くと、顔を覆うほどのローブを着込む男が立っていた。


「誰なんだ、お前は……!」


「僕はキミの間違いを肯定する者だよ」


「っ! 何言って――」


 言葉を続けようとしているといきなり男が消えた。そして、声が俺の横から聞こえた。


「僕が何者かはどうでもいい。今はキミが今以上の力を欲していることの方が大事だ」


「ちっ! 近寄るんじゃねぇ!」


 咄嗟(とつさ)に男から離れた。得体の知れない者から発せられる気迫に呑まれそうになった。しかし、男はその場から動かずに、黒色の水晶を差し出し床に置いた。


「キミにはこれをあげよう。これにはキミが望む力が込められている」


 それだけ言うと男の姿が消えた。あとに残ったのは、そこに置かれた水晶だけだった。水晶に近づく。しかし、それがまちが――いや、正解だった。


「これは……」


 表面には何も映さず、全てを飲み込んでしまうかもしれない、と錯覚してしまうほど黒かった。


「先生に伝えた方が……」


 どうしようか悩んで、手に取った瞬間。


『力が欲しいならこれを持て』


「はっ?」


 頭の中に声が響く。それからどこからともなく力がみなぎってきた。


「これはすげぇ」


 何でもできそうな気がする。全ての魔法が使えそうな気がする。そして、アイツを殺すことも……


 ◇


「よいしょ。これで今日の分は終わり……」


 春香は今回整理する棚全てを終えて一息ついた。世界中にある本をかき集め、今やその数は兆を超えていた。しかし、読まれる本はその一握りだけだった。


「主に読まれる魔法の本を、整理するように言われたけど、いくらなんでも多すぎるでしょ……」


 並べられた本棚を見てうんざりした。五千冊は入りそうな巨大な本棚、それが無数に並べられていた。右、左、前、後ろ、そして上を見ても本棚。


「はあ、奥に行ったら絶対に迷子になって戻ってこれない」


 自信もってそれだけは言えた。


「はあ、もう陽が沈み始めてるしこれじゃあ写真を撮りに行けないよ~」


 テーブルの上でだらける。まつりが授業から戻ってきても多分明日の準備をするだろうからその邪魔は出来ない。


「うーん、時間が余ってるし本でも読んでようかな」


 どのジャンルの本を読もうと悩み、なんとなく歴史の本が集まっている本棚に歩いて行った。


「何かないかなー」


 本を探し続け、いつの間にか奥深いところまで来てしまった。辺りを照らす魔法が常時起動し続けて、辺りは暗くはなかった。しかし、人は誰もおらずもう少し進んだら本当に迷子になってしまいそうだった。


「うーん、戻ろうかな」


 戻ってこれなくなるのも困るため、引き返そうとした。その時、本棚の隅に一冊の本が落ちているのに気づいた。


「こんなところに本が落ちてる」


 春香は落ちていた本を拾い上げてしまおうとする。しかし、その本の題名を見て手を止めた。


「魔女の始まりと終わり? こんな本があるんだ……あれ、でもこれよく見れば直筆の本? こんなのここにあったっけ? ……う~ん、わからない」


 春香は謎の本が気になり、それを持ってテーブルの方へと戻って行った。

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