鬼ごっこ
私は悪い笑みを教室に入る前に消した。それから深呼吸をして教室の中に入る。しかし、案の定佳奈さんしかいなかった。
「せ、先生、穂乃花さんと蒼空さんは……」
「大丈夫よ、これから面白いことをしたいから佳奈さんに二人を呼んできてもらっていい? 私はその間に準備しちゃうから」
「は、はい! わかりました」
佳奈さんは急いで教室を出て行く。その間に私はこれからやるための準備をする。先生からもらった水晶を取り出して、仕込みをしていく。
こっちの準備が終わった時に三人は戻って来た。
「先生、連れてきました」
佳奈さんが席に着くと、その後を追って二人も教室に入ってきた。
「先生、面白いことをするって何ですか?」
「ちっ、つまらないもので呼び出すんじゃねえよ」
穂乃花さんはまだ興味があるみたいだったが、蒼空さんは完全に嫌そうな顔をしていた。
「これからするのは鬼ごっこよ」
「「「…………」」」
一真達と同じ反応を示す。
「帰る……」
「つまりませんね」
穂乃花さんと蒼空さんが教室を出て行こうとして慌てて引き留める。
「ちょっと待って!」
「なんだよ! ガキじゃぁねんだぞ、もう少しマシなものはなかったのかよ!」
「本当ですね。幼稚な遊びではお話になりませんね」
それでも出て行こうとする二人に私は杖を構えた。
「【氷牢よ】」
魔法陣が教室の入り口に広がり、氷の柱が飛び出す。突然のことに二人は驚き、私の方を睨みつける。ようやくこっちに意識が向いたことに私は安堵し、次に進む。
「さて、人の話は最後まで聞こうね。私が言った鬼ごっこは普通のじゃない」
「えっと……何が違うんですか?」
おずおずと佳奈さんが質問してくる。
「魔法を使った鬼ごっこよ。ルールは簡単。三人が鬼で私が逃げる役。場所は私が今作ったフィールド内で空飛ぶ魔法を使って鬼ごっこをするの。その中で魔法を上手に使って私にタッチしてみて。ただし、人に危害を加える魔法はダメだから。制限時間は三十分、それまでに捕まえられればそっちの勝ち、私が逃げ切ることが出来れば私の勝ち。何か質問は?」
「えっと、先生一人だけですか?」
「うん、そうだよ」
「ふん、すぐ終わるじゃねぇか。でも……さっきの魔法でイラっと来たからその分は返さねえと気が済まねぇ」
「はい、私も腹が立ちました。なので、先生を捕まえてお説教させてもらいます」
問題児二人がやる気に満ち溢れている中、佳奈さんだけが心配そうな表情をしていた。
「三人だとすぐ捕まっちゃいますよ、先生……」
「大丈夫。そう簡単には捕まらないから。逆に自分の持ってる力を全部使わないと私は捕まえられないよ」
私はあえて挑発するようなことを言う。すると、蒼空さんと穂乃花さんは怒ったように言ってくる。
「先生でも今の発言は聞き逃せません。あたし達を挑発してどういうつもりですか」
「ああ、ちょっと馬鹿にし過ぎじゃないか?」
「じゃあ、私を捕まえることが出来たら授業を受けずに好きにしていいよ。そのかわり私が勝ったら授業をちゃんと受けてもらうからね」
二人はそれで構わないと頷き、佳奈さんは緊張した声で返事した。
「それじゃあ、今から移動するよ」
三人を連れてグラウンドへ向かう。
全てのグラウンドが使用されていたが、私はそのうち一つを使用していた先輩の先生に事情を説明して、ほんの少しだけ場所を開けてもらった。
「さて、三人は先に飛んでてもらっていていい。私も準備が終わったら行くから」
三人はそれぞれの杖を使って空へ飛んでいくのを見届けてから、鬼ごっこするために用意した水晶を取り出す。全て紫色をしており、全部で八個ある。それを地面に置いてから杖を振る。
「【舞え】」
それだけで水晶が浮かび上がる。水晶は三人を囲むように規則正しく配置されていった。
「【囲め、全てを閉ざし幾人も出られぬ檻となれ】」
水晶一つ一つに魔法陣が広がり、半透明な壁が形成されていく。三人を包み込むように壁は作られていき、完成したの球状の結界だった。グラウンドで授業を受けていた生徒や先生が注目しているのがざわめきでわかった。
「さて、私も行なきゃ」
杖にまたがり、重力を消して飛ぶ。結界の壁に頭から入って行き、中に侵入する。
中に入ると、三人が驚いた様子で結界を見ていた。
「ここが鬼ごっこをするための場所だよ。この結界も三十分ちょいしか持たないから結界が消えたらそこでおしまい。ルールはもう一度確認する?」
「ふん、今さっき説明されたルールを忘れるか」
「あたしも同じよ。そんなすぐに忘れるのは頭がお花畑な人だけ」
「わ、私も大丈夫です」
全員ルールを覚えていることを確認してから小さな魔法陣を二つ広げる。一つは氷の塊、もう一つは火の玉を作り出した。
「この氷を投げてから火の玉を当てる。そして、当たって弾けた瞬間鬼ごっこがスタートよ」
それだけ言うと私は、右手に持つ氷を投げてから火の玉を投げる。そして――
パンッ
氷と火の玉がぶつかり合った瞬間、私は急降下した。その後を追うように蒼空さんが追って来た。
「やっぱり最初はあの子か……」
独り言を言っていると、いきなり背後から突風が吹き荒れた。バランスを崩しかけるもすぐに体勢を立て直す。
しかし、くるのは風だけではなかった。
「【舞い散れ】」
どこからともなく紙が舞ってきた。目くらましのために紙を使ってきたのに感心したが、それよりも連続で詠唱してきたのに驚いた。
「これで終わり」
蒼空さんがいつの間にか背後に迫り、手を伸ばしてきていた。私は確かに蒼空さんが授業を受けなくてもいい、そう思いもした。魔法を連続で詠唱できるし魔法の制御が高いために高速で飛ぶこともできる。そしてその速さに耐えられる精神力も備えている。
今の状況を評価しながら、迫りくる手には慌てなかった。なぜなら……
「っ! 通り抜けた!?」
手が私の体を通り抜けたのに驚き、前進を止めた。
「残念でした。私はここだよ」
蒼空さんからだいぶ離れた場所に私は飛んでいた。火と水の複合魔法を使って虚像を作り出したのだ。
蒼空さんが悔しそうな表情をして再び向かってくる。しかし、私との距離はだいぶあるため、少しはゆっくりできそうだった。
「油断は禁物ですよ!」
背後から声がした。私は杖を起点に体をさかさまにする。すると、私がさっきいた場所に手を伸ばした格好の穂乃花さんがいた。
「そんな器用な避けかたが出来るなんて……」
穂乃花さんがすぐに手を引き戻して再度タッチしようと伸ばしてくる。しかし、私は杖から手を放すことでそれを逃れた。自殺行為だと思われたかもしれないが、それはちゃんと考えがあってそうしたのだ。
ローブのポケットから愛用の棒を取り出す。
「【生まれる力は足場となる】」
足元に片足ぐらいの魔法陣が広がる。魔力が集まっていき、魔法陣の所だけ下の景色がぼやける。その箇所に片足をつけて着地した。
「そんなことが出来るなんて……!」
上から穂乃花さんの驚き声が聞こえてくる。私はその場から離れるように次々と足場を作り出していく。棒に負荷がかからないように短時間かつ最小範囲で使用することで、杖より小さな棒でも宙にいることを可能にしていた。
「さて、あとは佳奈さんだけかな」
まだ姿を見ていないからどこにいるのか把握していなかった。足場を作りながら辺りを見渡すと、穂乃花さんと蒼空さんが同じ方向から来るのを確認した。
とりあえず二人から距離を置くことを先にして振り返る。すると、そこには手を伸ばした格好の佳奈さんがいた。
「わわわ、びっくりしたー」
「あっ」
慌てて佳奈さんから離れる。あとほんの数センチで触れられるところだった。佳奈さんも気づかれたのにびっくりしたのか少しだけ離れていた。
「全然気づかなかったよ」
「私は影が薄いって前から言われてて……」
まあ、その理由もわかりはする。半日見ただけだが、おとなしい性格であまり大きな声で喋らないのが原因だろうと思った。
「さて、私は逃げちゃうよ。そろそろ制限時間だけどいいのかな~」
「が、頑張って捕まえてみせます!」
佳奈さんが杖に乗って早く動けるのに対して、私は小さい棒のため小規模の魔法しか使えず、しかも移動するときは自分の力で動かなければならない。
どう動こうか考えていると、先に佳奈さんが動いた。杖を操りフェイントなしの直進だった。
「それじゃ捕まらないよー」
軽々と避ける私に、果敢に挑んでくる。動きをしっかりととらえて、ギリギリまで引き付けて避ける。そんな時、突風が横から吹いて来た。さすがに耐えれずバランスを崩し、魔力の足場を踏み外す。
「今度こそ終わり」
蒼空さんが高速で飛んできた。今から足場を作って避けようにも時間が足りない。なら、できるのは的を増やすことだった。
「【実像は虚像となり、幾人にも触れることは出来ない】」
私の姿が徐々に増えていき、本体を除いて十二人の私が新たに生まれた。
蜃気楼。空気の密度が不均一になり光が異常屈折し、虚像を生み出す現象。それを魔法で意図的に生み出した。
先生と高校時代に今と同じ鬼ごっこをした時に、先生がよく使っていた魔法だった。それを学び、さらに手を加えることでその虚像の数は一人から、十二人に増やすことが出来た。
本物の私がどれか探そうと、蒼空さんが止まる。
「ちっ、小賢しいことを!」
「「「これを見破ることが出来なかったら負けだよ」」」
さらに挑発をする。蒼空さんの苛立ちが目に見えてわかる。そんな時、上から穂乃花さんと佳奈さんが降下してきた。
「虚像があるならそれごと吹き飛ばせばいいことです!」
穂乃花さんがそう言うと魔法陣が広がる。
「【その瞬間に耐えられない】」
風が吹き荒れた。蜃気楼を起こすために使った火が消されてしまい、虚像が消えていってしまう。本物の私を見つけた佳奈さんと蒼空さんが別方向から迫ってくる。そして、今も自由落下している私は、結界にぶつかる寸前でもあった。
「やっぱり先生みたいにスマートにはいかないな~」
呟き、とっておきを使うことにした。魔法陣を広げて呪文を紡ぐ。
「【千変万化、千々に散り今一度戻れ。我が望むままに】」
愛用の棒が徐々に光りだし、次いで光の粒になった。光の粒は一度渦巻き、再び物体を構成し始めた。最終的にできたのは杖だった。
棒が杖に変わったのを見て三人は、驚きはするものの追いかけてくるスピードは落ちなかった。
「いまさらそんな物質変換を使ったところで何を」
蒼空さんが先にやって来る。
「やっぱり速いな~。ま、それだけじゃ捕まえられないけど」
感想をこぼしながら、少し不敵な笑みを浮かべる。結界に衝突するまであとわずかだが、焦らずに呪文を唱えた。
「【そこには何も存在しない。存在すべき場所は彼方にあり】」
ひし形が飛び出ている魔法陣が広がる。魔法陣は周囲の魔力を吸い込む。その輝きも基本的な魔法陣の輝きより眩しく、通常の魔法ではないのが見てわかった。
「それじゃ、精一杯頑張って」
それだけ言うと私の姿が消えた。
「「「っ!!」」」
三人が息を呑むのが遠くから見てもわかった。
「頑張って探してるね~。私も先生とやっていた時はあんな感じだったのかな」
辺りを一生懸命見ている三人を見て、過去の自分の姿が想像できた。
「もうすぐ時間切れだけど、これは私の勝ちだね」
笑みを浮かべて勝利を確信した。
そして、結界が消えた。三十分が経過したことで、水晶の効力が消えたのだ。結局三人は私を見つけられず、肩を落としていた。
「残念でした。私の勝ちだから明日から授業に出てもらうよ」
「ちっ、わかった……」
「はい、その条件だったので……」
問題児二人は渋々負けを認めた。その時、佳奈さんが手を挙げて質問してきた。
「先生、明日からって言いましたけど今日の授業はどうするんですか?」
「今日はこの鬼ごっこを通して私がどんな魔法を使ったのか考えてみて。もちろん三人でね。それじゃあ、また明日」
私はそれだけ伝えると一足先に地上に降りて行った。地上に降りると他生徒や先輩教師が見ていた。注目されているのが恥ずかしくなり、小走りで水晶を回収して教師塔の中に入って行った。
◇
私は春香がさっきの鬼ごっこを見ていたか確認するために、図書室に向かった。その途中で一真に出くわした。
「かーずま! さっきの鬼ごっこ見てた?」
「ああ、見てたぞ。評価としちゃ危なっかしくってもう少しまともに動けないのか、と思った」
「うっ……そんなこと言わないでください。あれでも頑張ったんだよ」
「先生の道具を使っていて何を言うんだか」
私は一真にそのことがばれていて、頬を引き攣らせた。
「ナニヲイッテイルノカワカラナイナー」
「とぼけなくてもいいぞ。最後の転移魔法、杖と手の間に紙を挟んでいやがったろ。あんなに転移魔法は早くないからな」
「はい……」
私は先生に頼んで、転移魔法陣が仕込まれている紙を一枚もらっていた。それを補助として使うことで、即座に魔法陣が起動できた。それを見破った一真に何も言えなかった。
「えっと、このことは……その……」
一真に上目遣いでお願いすると、呆れたようにため息をついた。
「わかったわかった。誰にも言わねぇからその目をやめろ」
違う方を向きながらあっち行けと手を振って来た。
「むぅ……私は春香の所に行ってくるね。それじゃ」
少し頬を膨らませるも、黙っててくれることに一応感謝してその場を離れた。
図書室に入ると、春香が本の整理をしていた。
「はーるーか」
「あ、まつりちゃん。鬼ごっこお疲れ様」
「どうだった? 鬼ごっこの意味が分かったでしょ」
「うん、さすがに私もあれには驚いたよ」
春香の素直な言葉に私も嬉しくなり、少し頬が緩んでしまった。
「あの鬼ごっこは高校生の時に、私と一真、それに先生……あ、理事長のことね。三人で、魔法をどれくらい習得したか判断するときにやったんだよ」
「なるほど。確かに鬼ごっこなら飛んで逃げる相手に対して、追いかける側は魔法を使っていかに工夫するか、そういうのがわかるんだね」
さすが魔法に造詣が深い春香には、鬼ごっこの狙いが理解できたようだった。
「そそ、だから私も先生と同じことをして、どれくらいの魔法が使えるか判断したの」
「それで結果は?」
私は三人のプロフィールを春香に見せ、そこに書かれているのと比較しながら伝えた。
「伊辺蒼空さん、成績は中の中で魔法の熟練度だけで見ると学生の中では上位に入るよ。ただ、彼の性格が問題で短気で怒りやすいかな。まあ、そこはおいおいと話していけば何とかなると思う」
「写真を見るだけでもちょっと危険な香りが……」
「まあ、そんな子だからね。次は美和穂乃花さん、この子も成績は中の中で魔法の熟練度も相当だよ。一回背後を取られかけたけど、多分隠ぺい系の魔法を使ってたんだと思う。立ち止まっている場合は制御はそこまで難しくはないんだけど、動いているとどうしても隠蔽に穴が出来ちゃうんだよね。その点、この子はタッチするギリギリまで制御できてたんだろうけど、最後に気を抜いちゃったのからなのか、私は気づくことが出来たんだ」
「見てはいたけど私も気づかなかったよ。魔力制御がすごいみたけど、この子も問題児なんでしょ?」
「うーん、蒼空さんよりはマシ、かな。まだ面白いことをすれば授業を聞いてくれるみたいだったし。さて、最後はこの子。百瀬佳奈さん」
「おとなしそうな子だね」
「うん、実際に大人しい子だよ。ただ、おっちょこちょいなのか挨拶の時におでこをぶつけていた」
「おっちょこちょいよりは天然……?」
「この子だけが鬼ごっこで飛ぶ魔法以外は使ってなかったんだよねー」
「あれ、でも背後を取られていなかったっけ」
「あれは、その、本人曰く影が薄いだけみたいです」
私の答えに春香は難しい顔をした。
「何とも言えないね……」
「そうなんだよねー。でも、まだ始まったばっかりだからこれからだよ」
「それもそうだね。これからのまつりちゃんの授業に期待しています」
プレッシャーをかけてくる春香に、私は緊張した声で返すしかなかった。
「き、期待していてください」
それからしばらく雑談に花を咲かせて別れた。
◇
教師塔の最上階。この数日間で何度も出入りしているような気がしているが、そこから見える景色が綺麗で、何度見ても飽きる気がしなかった。
私は今日の出来事を伝えるために理事長室に来ていた。しかし、先生が様々な書類に目を通している真最中で、今はそれが終わるのを待っていた。だが、その中で一点気になることがあった。それは……
「まつりさん、紅茶の準備ができました」
「あ、はい。ありがとうございます」
理事長室の中にある、面談用のテーブルにティーカップセットとおやつが置かれていた。そして、それを準備したのがなんと学園長だった。
「学園長はここで何をしているんですか?」
「私はここで理事長のお手伝いですね。一応学園長なんですけどまだできたばかりで、こちらにまで仕事が回ってこず、秘書として動いていますね」
「そうなんですか。そういえばこの学園の学園長とかってどうやって決めたんですか?」
「それは一番長寿の方から上の役職に就く、つまり年功序列みたいな感じですね。ちなみに私は理事長よりわか――ひゃっ!」
説明している途中で、いきなり可愛い悲鳴を上げた。その原因は学園長の頭上に広がる魔法陣だった。
「学園長、私のサインや印鑑が必要な書類にはサインして、目を通しておいたので確認をお願いしますね」
優しい口調で言われたはずなのに、先生の顔を見るとそれも恐怖の一部になってしまう。私はそれで察してしまう。
先生の年齢が……
「まつりちゃんも何も考えていないわよね」
「はい、な・に・も考えていませんよ!」
言葉を強調しながら言う。私の足元にもいつの間にか魔法陣が広がっていて、首をぶんぶんと横に振った。
「そう、それならいいわ。それじゃあ、あとはお願いね」
「は、はい!」
学園長はビシッと背筋をただしたかと思うと、急いで先生がサインした書類を確認していた。それを見ていた先生の顔には優しい笑みがあったが、それが悪魔女の笑みにしか見えなかったのは言わないのが正解だった。
「さて、待たせてごめんなさいね」
「いえ、大丈夫ですよ」
「それじゃあ、今日はどうだった?」
私は今日の出来事を全部話した。その間先生は笑ったり真剣な顔をしたりして聞いていた。
「午前中はハプニングがあったみたいだけど、よく午後で持ち直したわね」
「いやー、正直お手上げでしたよ。でも、一真のおかげで助かりました。先生とやった鬼ごっこが授業で役に立って感謝しています」
「別に感謝されるようなことではないわ。それよりも、これからも続けられそう?」
「はい、大丈夫です。先生みたいな教師になるのが私の夢なので、こんなところで諦められないですよ」
先生は嬉しそうにほほ笑み、頷く。
「そう、それなら私も安心だわ。これからも頑張ってね」
「はい、頑張ります!」
気合の入った声で返事をすると、書類を確認していた学園長の用務も終わり今日のお茶会?はお開きになった。
部屋に戻ると春香がまだ起きていたが、私は今日の鬼ごっこで精神をすり減らしてへとへとだった。落ちてくる瞼を必死に持ち上げながら明日のための準備をし、終わった瞬間ベッドにダイブした。




