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Return  作者: のあ
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Re:1 はじまり

初投稿になります、誤字脱字あるかもしれない上に語彙力がないです...よろしくおねがいします


ここは魔法界。精霊、妖精、魔獣、人間、様々な種族が共存している。中でも自然中のに漂う魔力が人間の姿に具現化した「神」と呼ばれる存在を、他の種族は崇め、尊び、その存在の多大すぎる魔力を前に屈していたのである。


「神」は3人いる。この世界は3つの層で出来ていて、天空、大地、海洋とそれぞれ異なる環境での暮らしがあった。1つの層に神1人。それが大昔からの「お決まりごと」というものだった。


そして私は127代目の海神ーー海洋の神として生まれれきて、人より裕福に育ち、今まで生きてきたはずなのだ。はずなのだが。



目が覚めると、視界には空が広がっていた。海の中から見上げる空とは大きく異なり、とても近く感じられる。なぜ私は地上にいるのだろう?私は海の中の人間だーー。

ふとあたりを見回すと、同じように地面に横たわり、こちらを見つめてくる少年の姿があった。少年は驚いたような瞳で私を見つめーーー


「キナ!」


「そら?」


私の名前を呼んだ。水城樹七(みずききな)、私の名前だ。思いがけない幼馴染みの登場に、謎は深まるばかりだ。なぜなら、そらはーー、天野宙(あまのそら)は、天空の「神」である。普段なら、文字通り天空にいるはずだ。


「どうしてここに?ここはどこ?私、どうしてここにいるのか分からない」


「俺もだ、ついーー2分前くらいに、ここに来た」


そう言って起き上がり、そらは少し離れた所を指さした。そこには、淡く光が点滅している、円盤型の装置が設置されていた。


「あのキカイで、ここに来たんだ」


何が何だかさっぱり分からないままだった。


「お前、ここに来る前のこと、覚えてないのか?」


そう言われて、思い出してみようと頭をフルに回転させてみるが、私の記憶の中には確かな空白期間があった。何も、思い出せない。


「覚えてない」


そらはまた少し驚き目を見開いた。そして、親切ご丁寧に何も分からない私に説明を始めた。


「俺は、いつもみたいに定期検診を受けるよう言われて、それで......いつもとは違う部屋に呼ばれたんだ。そこで、これと似たようなキカイの上に立たされてーーそんで気づいたらここにいたんだ」


定期検診。「神」という存在は、自然の中の魔力が具現化したものであるため、神の体調や心情によって自然環境が変わってしまうことがあるのだ。そういう自体を防ぐために、私達は定期的に検診を受けるようになっていた。そのことは覚えていた。よく考えてみれば、私は自分の名前も、そらのことも、自分が神だということも覚えている。なのに、ここにくる直前の事だけが、記憶の中からはっきりと消えていた。


「気づいたらここにいた?」


「ああ、一瞬だ。あのキカイに乗ったら、キカイから光が出てーーー少しして光が収まったと思ったら、ここに放り出されてた。今あそこにあるキカイからな」


「天空にあるキカイに乗ったのに、大地に放り出されたの?」


「そうだ。お前が来た時も、光が出てたぜ。このキカイから」


いよいよ混乱してきた。私たちはそれぞれ違う場所で(おそらく私も)キカイに乗り、2人して地上に送り込まれた。今ここにあるキカイを通して。


「なにそれ、ワープ?」


「.......っぽいよな。まじかよ」


ワープの魔法はない。光の魔法で極限まで早く移動することは不可能ではないが、ここまで一瞬で移動することはできない。


信じがたい状況に、2人でポカンと座り込んでいたその時、人影が現れた。複数ある。そう遠くない場所だ。話に夢中になり、2人とも気づかないでいたのだ。

スッと臨戦態勢に入り、相手を待ち構えた。「神」は最高地位に値する。それ故、命を狙ってくる者も多かった。地位を奪うためである。普段は護衛が付き添っているものなのだがーー今は違う。2人とも温室育ちとはいえ、それなりの武術は学ばされた。

やがて姿がはっきりと見え始めた。同い年くらいの少年が1人と、少女が2人。


「誰だ?」


そらが腰の銃に手を掛けながら聞くと、少年が身構えた。


「俺たちは敵じゃない、敵じゃないからーー頼むから攻撃しないでくれよ?」


そうは言っても簡単には信じられないので、体勢は崩さないでいる。


「君たちも、その装置でここに来たんだろ?魔法使いか?違うか?」


「違うか?魔法を使えないやつなんていない。いたとしてもーー今のこのご時世じゃ奴隷国行きだ」


「それが、いるんだ。ここは君たちがいた世界とは違う。魔法使いのいない世界だ」


少年の言葉に唖然とした。魔法使いのいない世界?そんな世界は存在しないーーーと思われていた。


「じゃあ私たちは、あのキカイで異世界に転移させられたと、そう言いたいの?」


「そういうことだ」


身体の中の何かがすっと抜け出るような感覚がした。信じられない。ありえない。


「信じられないと思うけど、本当のことよ。自分たちも、魔法界から来たの」


山吹色のくるくるとした髪をなびかせて、1人の少女が言った。少女は自身が魔法使いであると証明するために、軽く手をあげ、光の球を作って見せた。


「この世界には、本当に魔法使いがいないの。ーー自分たちみたいに転移して来た人は別だけど......」


「私たちの他にも、こうしてこの世界に来た人が?」


「ああ、たくさんーーまあまあーーほどほどに、いる」


少年が言った。到底信じがたい話だったが、国が神2人に対し1人の護衛もつけず、この辺鄙な土地に放り出すはずがなかった。そっちの方がむしろ信じがたかった。他に助けも手がかりもない私たちにとっては、この話を受け入れるしかないようだった。


「詳しい話は後で、な。俺は氷室冬也(ひむろとうや)。俺の家で休むといいよ」


見ず知らずの人の家に上がり込むなど危険極まりない行為だが、どの道この世界のことは何も分かっていない。ここは情報を貰っておいた方が得策であると考え、氷室と名乗る少年についていくことにした。


「自分は夕咲蛍(ゆうさきほたる)。よろしくね」


山吹色の髪の少女が言った。


「......私は華菱実鈴(はなびしみのり)、よろしくお願いします」


もう1人の少女が言った。今まで一言も口を開かなかったことを考えると、相当な人見知りであると思われる。それにしても実鈴は発育が驚異的に良かった。


「君たちは?」


氷室少年に名前を聞かれ、本名を言うべきかどうかそらと軽くコンタクトをとった。神だという立場をはっきりさせておき、洗いざらい情報を入手することは可能だ。しかし命を狙われる危険がーーーあるといえども、たかが一般の少年少女3人だ。ここは地位をフルに活用させていただくことにした。


「俺は天野宙」


「水城樹七」


名を告げた途端、実鈴と蛍と名乗った少女が明らかに動揺したのが分かった。魔法界で神の名前を知らない者はいない。ということは、氷室少年は魔法界ではなくこの世界の出身なのだろうか?


「ふ、2人は......神様......なの......?」


「そうだ」


「す、すみません!先ほどはご、ご無礼な態度を......!」


少女2人の態度が激変した。それもその筈だ。神という存在はヒエラルキーの頂点に位置する。


「で、でも......その、新聞や演説で見る姿とは異なるのですね」


蛍が控えめに聞く。実はそうなのだ。世に知られている私の姿は、青と銀の混ざったような色の髪をし、メイクで実際よりも冷淡な印象を持たせた顔立ちになっている。しかし、本当の姿は漆黒の髪に光が当たった部分だけが青く反射し、年相応なーー若干ーーかなり、童顔とも言える顔立ちをしていた。


そらに至っても、世間では金一色の男子にしては長めの髪に、柔らかい印象を持たせるやや垂れがちな瞳を持つ少年だと認知されている。実際は金色の短髪には一筋だけ黒のメッシュが入り、目はややつり上がっている。


これは、私たちが自分の容姿くらい好きにさせてくれと使用人に頼み込んだ結果だ。普段は好きな格好をして過ごしているが、世に出る時には、大衆が思い描くような姿で振舞っているわけである。もちろん、容姿だけでなく、性格も激変である。


こういったことを3人に話すと、少女2人はまだ少し顔を強ばらせながら納得した素振りを見せた。


「まあ、まあ......俺は神とかなんだとか知らないけど、とりあえず家行こうぜ、な?な?」


どうやら氷室少年は魔法界出身じゃないらしい。

この場で突っ立ってい続けるのもアレなので、氷室家に向かうことにした。


「なあ、俺たちーーもとの世界に戻れると思うか?」


そらが不安げな眼差しで聞いてくる。きっと戻れる、と言ってほしいと顔に書いてあるようだ。昔から、そらは少し抜けているーーというより、頭が弱い部分があった。それも覚えていた。

実鈴や蛍が魔法界出身でありながら、もとの世界に戻っていないということは、何らかの理由があるはずだ。戻りたくない、ということもあるのかもしれないが、もしくは、戻れないーーなんてことも考えられる。


「きっと大丈夫だよ」


でも今は、こう答えておく事にした。私は、人に余計に心配事を抱え込ませることは嫌いだ。

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