098 見に来たんだそうで
2019. 4. 20
先ず、最初に接触した四人はこの町の住民達の代表だった。
「……孤児達が消えたのに気付いて、気になって調べていたんだ……」
彼らの家の裏や近くの路地にも、ろくに動けなくなった子ども達がいた。その存在を知ってはいても、助けることができなかった。
人一人を養うというのは大変なこと。それが小さな子どもであっても、明日の生活さえ満足に想像できない彼らにとっては重荷になる。
助けることで、自分自身や家族が死ぬかもしれないのだ。
毎日、日に日に衰弱していく孤児達を目の端に置いて生活していた。それはとてもストレスのかかることだ。
しかし、そんな子ども達が一晩で消えた。
町の者達はその怪異と呼べるような現象に不安を覚えた。そして、この教会にたどり着いたのだ。
「こんな教会、昨日の朝はなかった。なにが起きたのか怖くなって……交代で見張っていたんだ」
「まあ、そりゃあ驚くわな。すまん。つい出来心でな」
「はあ……ということは、本当にこれをあなたが……」
「おう。俺と息子でな」
これを聞いて、信じるとは思っていない。
いくら魔術を知るこちらの人であっても、こんなことが容易くできるものではない。それに何より、この大陸で魔術を使えるのは上流階級の者のみ。
平民である彼らには想像できない奇跡の技だった。
一方、貴族らしく見える身なりの良い少年と護衛の二人の三人組。彼らも信じられないようだ。
「これは魔術を使われたのですか……? もしや、あなたは西の大陸の方ですか?」
「そうだ。まあ、だからってあっちの大陸の奴らが全員これをできるとは俺も思わねえよ? 俺らはちょい特殊なんだよ」
「それは……わかります」
あまりにも荒唐無稽に過ぎるとでも思っているのだろう。魔術を知っているからこそ、これがどれほど異常なのかがわかるのだ。
「で? お前さんは何者なんだ? 貴族の坊ちゃんで間違いないとは思うが」
これに少年は素直に頷いた。
「はい……私はこの町を治める領主の三男です」
「三男か。なんだ? じゃあ、様子見てこいって言われたのか」
「そうです……それでこの教会を接収しろと……」
「へえ。接収ねえ……で? すんのか?」
「っ……」
宗徳がニヤリと笑って見つめると、少年は怖じたように首を引っ込めた。
よく見ると震えているようだ。そして、はっきりとした声で叫ぶように否定する。
「で、できませんっ」
「ははっ、そんな怯えんなって。なあ、父ちゃん連れて来られるか?」
「え……父ちゃ……父上のことですか?」
「そう。その父上さまをな。俺はどんなやつか気になるし、父ちゃんはここが気になってんだろう? なら来いってこと」
「……父上を……」
少年は悩み出す。宗徳への恐怖心を一時的に忘れてしまうほど、思案していた。
その間に町の青年たちへ再び話しかける。先ほどから少年の護衛達はピクリとも動かないのだ。どうも、宗徳が只者ではないと感じ取り、動くべきではないと判断したらしい。
なので、彼らはいないものと考えることにした。
「お前らの家ってどの辺なんだ?」
そう言って、宗徳は机に手を触れ、集中するとふっと魔術を発動させる。
すると、机にこの町の地図が描かれた。まるで焼き入れされたようだった。
「っ!?」
「ほれ、ここがこの教会だ。どこだ?」
「え、えっと……」
驚きながらも、宗徳が平然と尋ねるので慌てて視線を走らせていた。
「こ、ここだと思います……」
「あんま遠くないな。で、お前らは?」
そうして四人全員の家の場所を把握する。
その頃には少年の思考が終了しており、次に唐突に机に描かれた町の地図に目を見開いていた。
「お、戻ってきたか。お前さんの家はそれだよな?」
「は、はい」
丁度少年の正面。町のほぼ中央に立派な屋敷があったのだ。
「そんで、どうだ? 父ちゃん、呼んでこられそうか?」
「……いえ……私の言葉を父上は聞かないでしょう……」
「いや、聞くくらいするだろう」
今回も見てこいと言ったのなら報告は聞くはずだ。とはいえ、家では発言権が低いのだろうことは分かった。
「まあいいけどな。なら、お前しばらくここに泊まればいい。その内、気になって出てくるだろう」
「……え?」
宗徳は少年のやつれた姿を見た時には既にそれを決めていた。
「どうせ、家でもあんま食ってねえんだろ。ここにいろ。好きなだけ食わせてやっからな」
「っ……」
ニカッと笑った宗徳に、少年だけでなく全員が期待するように目を見開いたのだ。
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