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092 過酷な場所です

2019. 2. 16

徨流に乗って地上より遥か上空を行く宗徳と廉哉は、目的とするケーリア国のある東の大陸が目前にまで迫っていた。


「ここまで片道で一時間ってところでしょうか」

「時間計ってたのか?」

「一応はと思って」

「俺はすっかり忘れてたぜ。持つべきものは優秀な息子だな」

「役に立ててよかったです」


幼い時から知り合いもいない未知の土地で生きてきただけのことはある。


しっかり者な廉哉があまり無理しないようにしてやるのが、親となった宗徳の役目だ。しかし、ここではまだ廉哉の知識量には追いつけていない。


「そんじゃ、あの辺に一度降りるか。そういや、町に入るにはギルドカードを見せるよな? こっちの大陸のじゃねえけど大丈夫か?」

「冒険者ギルドの識別カードは、どこで発行しても同じですよ。僕もあちらに渡ってからも、ちゃんと使えてました。それに、冒険者が渡ってくることもないわけではありませんから」

「へえ。まあ小さい船は通れてるんだもんなあ。行き来が全くない土地じゃなけりゃ大丈夫か」


廉哉が言った通り、町には問題なくギルドカードの提示だけで入ることができた。


「硬い土だな……」


宗徳がまず門を通ってはじめに口にしたのはその一言だった。


足で地面を擦り、踏みつけてその硬さを感じ取る。


「踏み固められたってだけじゃないよな」

「そうですね……外壁の下とかに草の一本も生えていませんから」


故意に固められた土ではない。これが固まってしまった土だ。草が生える隙間さえない。ほとんど栄養がないのだろう。雨の気配も薄い。


「暑いわけじゃねえな。けど、空気が乾燥してて嫌な感じだ。あの辺でへこたれてんのはガリガリじゃねえか……」

「僕が前にここを通った時よりも酷いです。売っている野菜も小さいですね」


しばらく門から真っ直ぐに伸びている道を歩いていくが、露店を見ても萎びた野菜や、質の悪そうな小物。あまり需要があるようには思えない。


しかし、ここではこれが普通なのだろう。明らかに小さな野菜も売れていく。


細い路地の間には風を凌ぐつもりなのか、それとも邪魔にならないようになのか。行き倒れそうな浮浪者達が溢れていた。


「レン、この飴玉舐めとけ」

「どうしたんです? これ」

「風邪の予防にな。病人も多そうだからちゃんと喉を湿らせとけ。変な菌を持って帰るわけにいかんだろ」

「わかりました」


乾燥しているのが一番ダメだ。そんな時に活躍するのが『ばあちゃんの飴玉』だ。


寿子の鞄にはいつだって大量の飴玉が仕込まれている。切らしたことがないのが不思議だ。出かける前の補充は完璧。今回も出かけるに当たって、持っていけと渡された。


「……これ、スッとしますか?」

「ん? いや、甘いお茶みたいな感じだ。ハッカみたいな感じはないな。なんだ、スッとするやつ嫌いなのか?」


やっぱり子どもには辛い系とかハッカ系は好みに合わないのかと廉哉の年齢を考えて思った。飴玉なんて、この世界にあるとは思えない。ならば、小さい時に舐めて以来だろう。


「一度、のど飴を舐めたらあれでお腹が痛くなったんです。それから少しでもダメでした。あれから多少は大人に近付いているので大丈夫かもしれませんけど」

「あ〜、確かになんか腹が冷えるような感じするもんな」


喉はスッとして気持ちが良いが、お腹が痛くなるのでは躊躇してしまうのも無理はない。だが、今回の寿子お手製の飴玉は、息も爽やかな上に歯にも優しいグリーンティ味だ。


「あ、お茶な感じで美味しいです」

「だなあ。こっちで作ったにしちゃ完成度高い」


こちらの世界にあるもので食べ物も道具も作る。それが異世界生活の醍醐味ってものだ。


「って、飴玉に関心してる場合じゃなかったな。あ〜っと……まだ反応はなしか。ここはまだ港町だろう? レンがいた国ってのは?」


レヴィアから受け取った刀に付いている石。それが何の反応も示さないならば、神はまだ遠いのだろう。


こうして一応はこの大陸の現状を調査するため、港に一番近い町をぶらついてみたが、問題のケーリア国というのはどこにあるのか。


「もっと内陸です。ここからなら、歩いて二日ぐらいでしょうか」

「へえ……まあ今日は下見みたいなもんだし、そのまま行ってみるか」

「はい」


町を横切り、内陸の方へと向かう門を出る。そこからは荒野と呼んでも良いほど、枯れた大地が広がっていた。


「なんか、テレビで見たことある感じだな。あれだ。サバンナ。あれをもっと寂しい感じにしたみたいな」


枯れた木々しかないが、黄色い大地はそんな印象を受けた。


「サバンナってあれですね。ゾウとかライオンとかがいる。でも確かに、魔獣もそれなりにいますよ。食べ物が少ないので、獲物って認識されると物凄い勢いで追ってきますから気をつけてください」


逃してなるものかと本気で追ってくるのだという。とても好戦的な魔獣が多いらしい。


「だから余計に貧しいまま町に籠るわけだ」

「ええ。隠れる場所とか少ないですから。逆に拓けているので、魔獣も見つけやすいんですけどね」


捕捉されると逃げ切れるか不安だが、遠くからでもこちらも確認できるので、いかに相手より早く気付けるかが勝負を分けるという過酷な世界だ。


「どんなのがいるか確認しとくか」

「結構足が速いのが多いので、油断しないでくださいね」

「おう」


そうして、三時間ほど生態調査を兼ねて魔獣と追いかけっこをした宗徳と廉哉は、走ったということもあり、それほど時間がをかけずに次の町まで辿り着いた。


「あんま変わらんな。けど……やっぱ港町よりかは活気がないな」

「食べ物が本当に少ないですからね。あそこは海がありますから、作物が手に入らなくても魚は手に入るのでまだ良いんです」


昼食でもと思って食べ物屋を探して入ったのだが、びっくりするほど質素。けれど値段は高かった。


「あの値段でも入るしかねえのな」

「はい……それがあるので、冒険者とかは食材を持ち込んで作ってもらっていましたよ」

「あ、それいいな。次の町で出来るように狩っていこうぜ」

「いいですけど……宗徳さん、あんなに生きるのに必死になってる魔獣を倒すのは気が引けるって言ってましたよね。いいんですか?」


これまでの生態調査で思ったのだ。あれだけ必死で獲物を得ようとする魔獣達の姿に宗徳は感心していた。そのため、幾度襲われようとも倒さずにここまで来たのだ。


「まあ、俺らも糧は必要だ」


そんな話をしていると、明らかにガラの悪い三人組の冒険者が近付いてきた。


「おいおい。ガキがいいご身分だなあ」


これは仕方がない。宗徳はこちらでは二十歳頃。廉哉は十代後半。三十代、四十代の男たちにはガキにしか見えないだろう。


そんな若い二人が、高い食事を取って食べているのだ。特に、この大陸の者からすれば贅沢をしているように見えるだろう。


「どこのお坊ちゃんだ? お家まで送ってやるよ」


なんともありきたりな展開だ。そんな中、宗徳はちょっとワクワクしていた。


「なあ、なあ。これってあれだろ? アレだ……てんぷらだ!」

「……惜しいです。テンプレです。テンプレートって基盤? 基礎のような……決まったお約束の展開って意味で使いますね」

「おおっ、それだ! テンプレ!」


若い言葉を使えて上機嫌な宗徳だった。



読んでくださりありがとうございます◎

次回、一度お休みさせていただき

土曜2日の予定です。

よろしくお願いします◎

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