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091 神が求めた世界

2019. 2. 9

レヴィアは、あの地に残してきた神をずっと気にしていた。


人の醜さを、神は理解していなかった。盲目的に愛し、大切に想うことしか知らない神は、きっと傷付くことになるとわかっていたのだ。


「人は本能だけではなく、思考することを許された存在です。神はこれにより変化を望まれました」


普遍であった世界を変えるため、人々にも想い合う心を育てるため、生み出された存在だった。


「人は知恵をつけ、行動すれば何かが変わるということを理解しました。それは欲望を生み、物の価値を作り上げ、優劣つけるようになったのです」


そこまでならば良かった。物の価値だけならば、人々はより良い物を作り出そうと努力することを覚え、技術というものを知っていく。


それは人々の暮らしを発展させることに繋がったのだ。神も望む結果だった。


「ですがやがて、自分たちにも優劣をつけるようになりました。他者と比べ、数を得て賛同を得ることに喜びを覚えてしまった……認めない者を悪とし、自身を善とする考え方が広まっていったのです」


自分は正しい。自分を認めない者は正しくない。それは単純な思考だ。しかし、自分だけでなく、他者がそれを認めるということが大きな力となってしまった。


やがて上下関係ができ、権力が生まれる。多数が正義で少数が悪となり、国が出来上がっていった。


「あれだな。多数決ってのは公正な決定の仕方だってガキの頃から自然と教えられているが、それが正に多数が善で少数が悪って教える行為だよな」

「幼稚園とか、小学校でもそれが普通だって教えられますからね。多い方に決めるってやり方。わかりやすいですけど、今考えてみれば、それは少数をねじ伏せるやり方なんだって思います」


どちらかしかなく、多い方に入れれば自分は正しかったと自身を満足させることができる。同時に、数の力には敵わないのだと教え込まされてしまうのだ。


「ええ、そうです。そして、人々は更に上を目指すようになります。完璧に、全ての者……神にさえも同意を得られなくてはならないと……」

「そうなると、方法は一つだな」

「はい……これにより、戦争という、数で争う行為に出るようになったのです」


同意する者たちだけの世界にしてしまえばいい。反対する者は消す。何もなかったかのように。完璧に全員が同意する世界にする。


「神は悲しまれました。そして、悩まれたのです……」


愛しい子どもたちが争い、命を取り合う。その行為は、神にとっては納得し難いものだった。


ただ幸福だと思える一生を、自身が創り出した世界で生きてほしい。願わくば愛を知り、慈しむことの喜びを知って欲しい。


それが神の願いだった。


何がいけなかったのか。どうしてこうなってしまったのか。それを考え続けることで、神は病んでいった。


「出された結論は、無に還し、もう一度やり直すこと……邪神と呼ばれる姿となってしまった神は、人々を消し去ろうとされたのです……」

「それが、邪神との戦いの始まり……だからあんなにも、苦しそうだったんだ……」


廉哉は、自身が封印した邪神を思い出していた。


黒く染まった醜い姿。常に涙を流しているような、酷く嘆いている表情のまま固まってしまった姿をしていたらしい。


「そりゃあ、可愛い子どもたちが分からず屋になって、それを止めるには殺すしかないなんてことになったら、母ちゃんは嘆くよな……血の涙ってやつが出ててもおかしくねえ」

「そうですね……」


自身が生み出したものを、無に還すことの辛さ。愛しく思っていたのならば、その辛さはどれほど大きいだろう。


「神の意思を知り、説得すべきわたくしは、人々にとって悪……神はそのまま行動に起こすしかなかったのです。ですから、倒すのではなく封印してくださったこと、感謝しております」

「……でも神様ですし、僕は敵として立ちはだかったことに変わりはありませんよ? それなのに、神の元に一緒に行って良いものでしょうか……」


神の想いを改めて知り、戦うべき相手ではなかったと分かった。けれど、一度は倒そうと対峙した身だ。共に行く宗徳まで敵と認識されないかと不安なのだろう。


「あなたが神の想いを感じ取っていたように、神も今、あなたという人を封印術から読み取っておられます」

「つまり、レンのことを怒ってたら、今頃大人しく封印されてねえってことだろう?」

「仰る通りです。あなたが優しい方だということを、神は理解しておられますよ」

「っ……なら良いのですが……」


廉哉は二度と神と戦おうとは思わない。寧ろ、あの地に帰ったなら、封印を解こうと思っていた。


勝手に異世界から攫ってきて、使うだけ使ってから不要になったら消そうとした召喚者達が敵としていたものならば、廉哉にとっては味方になり得るものかもしれない。


逆に廉哉の方が味方になるべきものかもしれないとずっと考えていたのだ。


そんな悩みを廉哉が抱えていたことに、宗徳は気付いた。


「心配すんなっ。俺がなんとかしてやるよ。レンは俺の息子なんだからな。子どもがどうにも出来んことから守んのは親の役目だ」

「宗徳さん……はい。どうにもならなかったらお願いしますっ」

「ふっ、おう! 任しとけ」


できた息子だと宗徳は満足げに笑う。廉哉は全てにおいて助けを求めるような情けない子どもにはならない。それを、レヴィアは羨ましそうに見つめていた。


「お二人は素敵な関係ですね」

「あんただってそうだろう? 徨流がそんだけ嬉しそうにしてんだ。離れてても親子ってのは想ってるもんだし、子に何かあれば落ち着かないだろう」

「……そうですね。コウリュウ、いつでも帰っていらっしゃい。ずっと想っていますからね」

「はい!」


こうして、宗徳達はまた来ると約束し、レヴィアに見送られて神に会うため、地上へと戻ったのだった。




読んでくださりありがとうございます◎

次回、土曜16日です。

よろしくお願いします◎

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