088 水の中にありました
2019. 1. 13
遅くなりました
リヴァイアサンに導かれて進む水のトンネル。
しかし、宗徳と廉哉はいつ水の中で息ができなくなるかと気が気じゃなかった。
「ど、どこまで行くんだ?」
「もうかなり深いですよね……」
そろそろ、素潜りでも行けないところまで来ているはずだ。一体、この海はどれほど深いのだろう。
トンネルにいるため、上から差し込む光が未だ届いている。だが、間違いなくもう深海だ。予想通り、次第に暗くなっていくのをヒヤヒヤしながら感じていると、不意に前方から光が見えた。
「ん? なんで海の中に光が……?」
不思議に思っていると、ふっと突風を受けたような感覚があった。
「うわっぷっ」
「っ、わっ」
思わず目を閉じ、次に開いた時。眼前には青い空が広がっていた。
「はあ?」
「う、海の中でしたよね!?」
いつの間にかもしかして上昇していたのだろうか。さっきの突風は、水面に出たことで起きたものだったのかとキョロキロと周りを見回す。
しかし、上を見て違うとわかった。
「……これ、竜宮城ってやつじゃね?」
「……はい。僕もそう思います……」
廉哉と二人、ポカンと口を開けて見上げる。その先に、水族館の水槽のトンネルのように、境界線らしいものの向こうに魚が泳いでいた。間違いない。ここは海の中だ。
「ちゃんと空気がありますね」
一番大事な酸素を確認しながら、今度は二人そろって下を見る。
「建物は普通だなぁ。城もねぇし。石造りの町って感じか……」
「ですね……」
竜宮城にしか思えない場所なのに、建物はヨーロッパ式。ちょっと残念だ。
「あ、あそこに降りるみたいですね」
リヴァイアサンが真っ直ぐに向かったのは、石の柱がいくつも立っており、それが円形に敷き詰められている石畳を囲っている場所。
まるで丸い舞台のようだった。
その中心へと向かったリヴァイアサンは、唐突に発光し、その大きさを萎めていく。そして、光が消えた後に現れたのは青いマーメイドドレスを着た美しい女性だった。
「おいおいっ、人だったのか!?」
「い、いえ、多分違います。あれは人化したんじゃないかと……」
廉哉はなんとなくそういう、ゲームかアニメで昔見た人化する知識があるのでそう答えた。
一方、そういった知識がない宗徳だが、なぜかあっさり腑に落ちたように頷いていた。
「あ、タヌキとかキツネが化けるみたいなやつか」
「……間違ってないです……」
そう考えるとなんだか一気にファンタジーな世界が現実っぽくなるのはなぜだろうと、廉哉は遠い目をしていた。
見上げるようにしてその場で待っている女性。
その視線を受けて、徨流が自分もと加速して向かっていく。
「お、おいっ、ちょっ」
これでは地面というよりも女性に衝突してしまうと考えた宗徳と廉哉は咄嗟に徨流から飛び降りた。
風の魔力を上手く使い、なんとか着地できそうだとホッとしていると、先に突っ込んで行った徨流が大きさを変える時のように発光しはじめるのが見えた。
グッと縮んでいき、小さな玉になってしまったのだ。
「すっげぇちっさくならんかったか?」
「ええ……行ってみましょう」
無事着地した地点からは、石の柱のせいで中央が見えなかった。横にずれながら向かっていくと、その中央では女性に抱きかかえられた二、三歳くらいの子どもがいた。
「ん? もしかしてアレ……」
「……ですね。鑑定でも間違いないです」
「あ、本当だ」
子どもの方を鑑定してみる。
固有名称【リヴァイアサン(神変異種・呼称:徨流)】
レベル【386】
種別【神獣】
HP【15200/15500】
MP【16570/18000】
称号【勇者(宗徳)の騎獣】【契約神獣】
レベルが一ついつの間にか上がっているが、間違いなく徨流だ。
女性の方もと思ったが、さすがに女性のアレコレを勝手に見るのはよくないと思い直した。
こちらに気付いたというか、待っていたらしい女性は、笑みを向けて歩み寄ってきた。
「改めてご挨拶をさせていただきます。この子の母です」
淑やかに、少しだけ足を曲げて頭を下げる彼女に、宗徳も応える。
「俺は宗徳という。勝手に徨流と名付けちまったが、良かっただろうか?」
この世界で苗字は必要ないだろうと、あえて最近は名前しか名乗らない。同じように廉哉も名前だけ名乗っていた。
「構いません。そもそも、この子が心から信頼していなければ、わたくしたちに名付けはできませんわ」
「そうなのか?」
そんな事情は初耳だったので驚く。
そこで、徨流が母親の腕から降りると、小さな足をたどたどしくも一生懸命動かし、宗徳の足に取り付いた。
「とうちゃん」
「おう、またえらく可愛くなったなぁ」
「えへへ」
高い高いをされて嬉しそうに笑う姿は、無邪気で可愛らしかった。
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次回、土曜19日です。
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