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079 竜神様の使者だそうで

2018. 10. 27

案内された道場の裏。


そこには、相変わらず高い草が生い茂っていた。しかし、以前に来た時とは決定的に違う所がある。


「あ? 湖が……ない……」


どれだけ目を凝らしても、そこに水がない。近付いてみるが、やはり小さな窪みがあるだけになっていた。


更に、かつて湖だった範囲。湖を中心にして結界が張られていた範囲の草が、キレイになくなっていた。


確か、イザリが濁った池となってしまっていたそこを、浄化してくれたのは知っている。その後にこれをというのは違うだろう。


「草……ハルキが抜いたのか?」


かなりの広範囲だ。あり得ないと思いつつも確認する。


「違いますよ。すごいですよねっ。あの後、一晩で水とあの辺だけ草がなくなったんです。けど、お陰で探しやすかったですよ」


治季が唐突に突き出した手には、オレンジ色に輝く石のようなカケラがいくつかあった。


「それって、琥珀?」


覗き込んだ律紀が不思議そうに眺める。これに答えたのは、これまで静かについてくるだけだった美希鷹だ。


「魔石だよ。この色だと、魔力暴走したのかも」

「へぇ、けど、あっちで回収したのは、どっちかっていうとガラスみたいな青みがかった感じだったぞ?」


占いで使うような丸くて透明度の高い水晶にしか見えなかったはずだ。


「力使い切ったやつがそうなるんだってさ。けど、刻まれた術とかは残ってるから、知ってるやつが見れば魔石だってわかる」


一般的にはただの水晶にしか見えないが、魔術の心得のある者が力を流し込んで読み取れば、それが元は魔石であったとわかるらしい。


「けど、もしかして……これは片方の力を使い切ったら、もう片方が暴走するとかの仕掛けがあったのかも……」


暴走と聞くと、危ないイメージだ。実際、説明する美希鷹の様子を見ると、危なかったのかもしれない。


「あと、ノリさんは感じねぇ?」

「何がだ?」

「……いや、気のせいかもしんねぇ……ちょっと変な感じがするだけだし……」


落ち着かない様子の美希鷹を不思議に思い、彼の頭の上にいるキュリアートを見つめるが、首を傾げられただけだった。


「なんでもない。繋がってた場所だからかも」

「あ〜、なるほど。俺はそういうの分からんけど……まぁ、イズ様と階層長には伝えとくか」

「うん……」


今まで必要以上に喋らなかったのは、何かを感じて警戒していたからのようだ。思い返してみると、さりげなく律紀との距離を詰めていた。きっと、何かあった時には律紀を助けようと身構えていたのだろう。


それを知ると、嬉しくなって宗徳は美希鷹の肩を軽く叩いた。


「ありがとな」

「……べ、べつに……」


何に対して礼を言ったのかを正確に察し、美希鷹は照れくさそうにそっぽを向いていた。こういう所、年相応で可愛い。


律紀に言わせると見た目天使なツンデレらしい。それが今宗徳にも分かった。


そんな話をしている最中の治季と律紀は、楽しげだ。


「あの方は、律紀さんの彼氏さんですか?」

「え、あ、鷹君?う〜ん……ヒミツ」

「え〜、でもお似合いだから私の中では彼氏彼女に認定です」

「なにそれっ、治季さんって面白いね」


年はやはり治季の方が一つ下だった。けれど、治季は早生まれで、学年は同じらしい。それを知って、話はとても弾んでいる。


「あ、あの……律ちゃんって呼んでも良いですか?」

「いいよ。私も治ちゃんって呼ぶね」

「はいっ。嬉しいです。私、あまりお友達がいなくて……どうしても家のことを優先してしまうので、話も合わなくて……」


治季は、道場である自分の家を誇りに思っている。いつか、自分がこの家を守っていくのだと思うと、遊ぶよりも先に道場で体を動かしてしまうらしい。


「おじいちゃんも昔ここに通ってたって……そういう、伝統を守るっていうか、家を守るって凄いと思うよ」

「ありがとうございます。今回のことで、家名にもあった竜神様の居場所は失くしてしまいましたけれど……」

「そっか、そういうことになっちゃうんだ」


竜守家の名は、間違いなくそこから来ていた。けれど湖は枯れ、竜神が訪れる場所は消えてしまった。その場所を守ると誓う名であったというのに。


「いいんです。ずっとお姿を見せなかった竜神様と最後に会えたのですし、それに、聞く所によると、宗徳さんがその竜神様と誓約されたとか……でしたら、宗徳さんは竜神様の使者ということになります。そんな方と交流を持っているのですから、失ったという感じはしません」


むしろ、当主である父よりも、自分の方がこの家の者としての役割を持っているようで嬉しいと笑った。言葉遣いは丁寧でおっとりしているが、案外したたかだ。


「私も会ってみたいなぁ。おじいちゃん、竜神様、連れて来られないの?」

「あ?」


唐突に声をかけられる、宗徳は苦笑する。


「徨流のことか? どうだろうな……」


こっちでは間違いなく存在しない生き物だ。小さくなっても蛇だとも言い張れない。だが、美希鷹が答えた。


「キュアみたいに不可視の術かければ問題なかったけど?」

「そうなのか?」

「うん。ただ、生き物だし面倒だけど糞とか、ヨダレとかの処理はちゃんと……っ、痛っ、痛いだろキュアっ」

《ふん》


色々の処理の話をされたので恥ずかしかったらしい。頭の上は、抗議がしっかりと直後にできて良い場所だ。美希鷹の頭皮は、将来大丈夫だろうか。


「っ、そ、そういう痕跡をちゃんとすれば良いんだ。船と飛行機とかで検疫ってあるじゃん。ああいうやつをライトクエストで受けて、詳しくルールとか教えてもらえば良いよ。それに、律紀が会うくらいなら、いつもの最上階の部屋で会えば良いし」


あくまで、外に出すのにルールがあるだけ。ライトクエスト内ならば、異世界と何ら変わらないので問題はないそうだ。


「あ、でも、そいつ自身がこっちの環境と合う、合わないはあるから、善治さんに相談してみてよ」

「分かった」


これを聞いていた律紀は、目を輝かせており、無理とは言えない様子だったのは、言うまでもない。



読んでくださりありがとうございます◎


孫には弱いので


次回、土曜3日です。

よろしくお願いします◎

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