071 可愛い息子のためならば
2018. 8. 18
何とか預かった手紙も妃に届け、十二時の昼食の時間に部屋へ滑り込んだ宗徳は、食事を済ませた後、善治へ報告に来ていた。
話を聞いた善治は、何かを考え込むように何度か顎を撫で、小さく頷いた後に宗徳へ目を向ける。
「廉哉については、お前達が保護者として面倒を見てやってくれ。明日にでも一度、共に社に帰ってあちらで手続きをしてもらう」
「分かった。向うでは寮か? 俺らん家に引き取っていいならそれでも良いんだが」
「それは廉哉の意思に任せるが、一人になりたいときもあるだろう。寮の部屋も借りておけ。どちらで生活しても構わん」
何年振りかに元の世界に戻るのだ。色々と考えたい事もあるだろう。一人になる時間も必要だ。
彼は既にあちらでは死んだことになっている上に、外見も少しばかり変わってしまった。それは、知人や友人に会ったとしても気付かれないということ。改めて孤独を知ることになるだろう。
「カウンセリングも入るが、基本、彼の意思とお前達保護者に任せることになる。現実を知って、嫌な気分にもなるだろうから、気をつけてやってくれ」
「もちろんだ。あいつは俺らの息子だからな」
「そうか。ならいい」
宗徳の答えにふっと笑う善治。一人で膝を抱えさせる気は宗徳にも寿子にも当然ない。現実を知らない若者ではないのだ。心配はいらなかった。
「で? 俺らの次の仕事は?」
「特に今は取り立てて急ぐ案件もない。町作りとギルドの業務を並行して頼む。明日向こうへ行って、好きな時に戻ってきてくれていい。緊急の用件があれば、連絡する」
「廉哉も連れて帰ってきてもいいか?」
「構わん。こちらには弟妹達もいるようだからな」
宗徳と寿子が育てると言った獣人の子ども達。彼らは、廉哉の今の家族であり、可愛い弟妹達だ。あちらで一人でいるより余程気も紛れるだろう。
彼のここへ来る権利を奪う気は、善治にもライトクエストにもないのだ。
「そういや、レンが倒したってか、封じた邪神ってのは何なんだ? 突然現れたって感じの話振りだったが」
王の口振りだと、元々その大陸に封印されていたとか、そんな伝説があったという感じは受けなかった。まるで唐突に降って湧いたように話していたのが気になったのだ。
前例があるならば、ここでも突然にそんな事があってもおかしくはない。大切な子ども達がいる場所だ。不安要素への対策は怠るつもりがなかった。
「……あれは恐らく……」
長い沈黙のあと、善治は重いため息と共に口を開く。
「あの土地にいた神だろうな……最初から邪神であったわけではないのだろう。あちらの大陸の調査も昔行ったが、古い神が眠っていたはずだ……」
善治は、その気配がゆっくりとだが変わっていったのに気付いていた。彼らはいわゆる『神の怒り』に触れてしまったのだと思う。
「それって……レンになにか影響ねぇのか?」
『邪神』と呼んだのは、怒らせた彼らだ。だが、正しく『神』なのだ。廉哉がその恨みを買っていてもおかしくはない。訳が分からないながらも、彼らの味方をしたのだから。
「封印の力は、廉哉のものだ。怒りに目が眩んでいなければ、そこから廉哉の人となりを読み取れるだろう。誤解を詫る必要はあるが、廉哉が落ち着いてからでも構わん」
封印はしっかりしており、今すぐにということはないだろうというのが善治の見立てだ。
「分かった。なら、とりあえずやることは、レンをしっかり立たせるこだな」
「ああ。頼んだぞ」
「任せとけ」
宗徳は自信満々の笑みで答えたのだった。
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次回、土曜25日0時です。
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