070 情報も仕入れられました
2018. 8. 11
ケーリア国は大陸の東に、海を隔ててある大国だった。
そこに数年前、邪神が現れた。人々に病をばら撒き、多くの者が亡くなった。しかし、異世界から召喚された勇者によってそれは封じられ、国には平穏な生活が戻ったのだ。
その勇者というのが、宗徳と寿子が息子認定した廉哉のことだった。
宗徳は、時間を確認する。残り十分となったところで、こちらから出向く前に王がやってきた。
「お、書けたのか?」
「ああ……届けてくれ」
「任せとけ。それと、これとは別に教えてもらいたいことがあるんだが」
そうして話を切り出した。
コンテナの前にテーブルと椅子を用意し、そこに向き合って座ると緊張する王へ尋ねた。
「ケーリア国ってのは分かるよな?」
「ああ。東の大陸の国だ。距離はあるが、国交がないわけではない」
この国があるのは、大陸のやや東の端。だが、ケーリア国とを結ぶ港があるのは二つ隣の国だ。それほど関係は持っていない。
「なら、情報はある程度あるよな?」
「全くないわけではない」
王は何を聞かれるのかと気が気ではない様子だった。それに内心苦笑しながら続けた。
「勇者の話って聞いたことあるか?」
「邪神を倒したという勇者のことだろうか? 詳しくは知らない。戦いの末に亡くなられたと聞いているが……」
「へぇ……死んだことになってんのか……」
「あ、ああ……」
目を細めて考え込む宗徳が怖かったのだろう。王はこれに続いて不確かではあるがと付け足してから更に口を開く。
「勇者は実は生きており、あの国の貴族達に命を狙われておるのではないかと噂があった。勇者に爵位を持たせるのを反対した者達がいたようだ。何より、勇者と呼ばれるほどの力を恐れたのやもしれん」
あり得ることだった。
「元々、今の大国としての領土は、戦争によって小国を次々に取り込んでできたものだ。まだ今の規模になったのも、六十年ほど前だったはず。その間も内乱は絶えん。つい数年前に現れた邪神を敵とすることで一つにまとまっておったが、今後もどうなるか分からん」
力によって奪い合ってできた国。だからこそ、強い力を持つ勇者が、自分達へと牙を剥くことを恐れたのだろう。
だからといって、勝手に呼んで、無理やり使命を与え、それを成した後は消そうとするとは人として許せるものではない。
「なるほどな……ありがとよ。長いしちまったな。俺はこの辺で失礼する。手紙は確実に届けるから安心してくれ」
「ああ……頼む……」
王はそれを聞いて寂しそうな顔をした。仕方ないだろう。妻と子ども達に出ていかれたような状態なのだから。
「数日のうちには送ってくる。そう心配するな。案外楽しんでいるようだったし、妃さんの病気は完治させる」
「すまん……よろしく頼む」
「おうよ」
宗徳はニカッと笑って、椅子とテーブル、時計を片付ける。それからコンテナも片付けると、唐突に大きくなった徨流に飛び乗った。
「じゃあ、またな」
手を振ってすぐに徨流の姿が見えないように高光学迷彩を施す。王都から離れたところで、姿を少し見せて、上昇した。
◆◆◆◆◆
見送る王の隣に、この国の宰相がやってくる。
今まで宗徳を刺激せぬようにと兵達に直接通達して回っていたのだ。
王とは同世代のその宰相は、宗徳に悪い印象は持っていないようだった。
「私の言った通りでありましたでしょう」
「ああ。あれだけお前に言われていたというのに欲をかいた……すまん」
「いいえ。ですが、彼らのような存在に王であるあなたが警戒するのも仕方がないことです」
「……だが、結局敵に回すところだった」
国を守るため、国を良くするために彼らの力を欲した。国のためと考えてはいても、最終的には敵とみなされて国が危なかった。絶対に誤ってはならない選択を間違ったのだ。
「それでも、あなたは非を認めて彼らに誠意を見せた。ならば相殺されています。寧ろ、お互いを知るためには良かったかもしれません」
「……そうだろうか……」
「そうですよ。だから、せめて対等になれるように努力しましょう。これから大変ですよ?」
「そうだな……ああ。やってみよう」
今はこちらが下だ。けれど、あの気持ちのよい青年を見れば、上だ下だという立場ではなく、対等になれると感じられた。その努力を怠らなければ、いずれはいい関係のまま、その力を国のために使ってくれるようになるだろう。
それはきっと、従わせるよりも良い結果に繋がる。
「まぁ、ですがとりあえず、当面の目標は数日後に帰ってこられるお妃様や王子、王女の信頼を取り戻すということで良いかと」
「……お前は本当に頼りになるよ……」
「恐れ入ります」
王は宰相の言葉に大きくため息をついたのだった。
読んでくださりありがとうございます◎
良い関係になるといいですね。
次回、土曜18日0時です。
よろしくお願いします◎




