068 時間厳守でお願いします
2018. 7. 21
光学迷彩を解いたことで、突然近くに現れたリヴァイアサンに驚かないはずがなく、兵士達は、コンテナをぶら下げる徨流を見て腰を抜かす。
「な、なんだ!?」
「ハコ?」
「ひ、人が乗ってる!?」
「……あれは……王子達を連れて行った……お前達は王へ連絡しろ!」
そんな中、一人の騎士が冷静に指示を出す。恐らく、昨晩宗徳を見ていたのだろう。先触れもなく現れたのは、やはりマズかったらしい。冷静に見えるその騎士の顔色は悪かった。
宗徳は反省しながら、彼らから十分に距離を取った場所にコンテナを下ろさせ、そこに飛び降りる。
こちらから動くのは警戒されるだろうと思い、騎士が駆け寄ってくるのをしばらく待つ。そうして、やって来る間に少しは落ち着いたらしい。騎士は役目を全うしようとしていた。
「失礼いたします! 中を確認してもよろしいでしょうか!」
宗徳はコンテナの上にいた。その腕には、既に小さくなった徨流が巻きついている。
「おう、助かる。今開けるからな。運び出してくれ」
「はい?」
運び出すと聞いて、最悪の事態を想定したらしい。何を思ったかを察した宗徳は、違うと手を振る。
「いやいや、王子達じゃねぇよ。今回の元凶っていうか、ちょっかいかけてきたあんたらのお仲間だ。煩かったんで眠らせてるけどな」
「は、はぁ……」
軽々と二メートルほどあるコンテナの上から飛び降りた宗徳は、手早く鍵を開けてやった。
開けて一歩下がる。覗き込んだ騎士は、しばらく声もなく固まった。それを見て宗徳も頭を突っ込む。入れこんだ時と同じ状況のままになっていることに安心した。
ただのコンテナと侮ってはいけない。重力や気圧の制御など、細かい調整を魔術によって施した優れものになっているので、どれだけ速く飛んだとしても、中身が片寄らないのだ。お陰で、お茶も楽しめる仕様になっていた。
「こ、これは……」
「寝てるだけだから心配ねぇよ。ったく、王が謝罪したってのに、納得しねぇのはおかしいよな?」
「そ、そうですね……運んでいただきありがとうございます。こちらで運び出させていただきますので、少々お待ちください」
「おう。この上にいるから。気にすんな」
部外者であり、未だに正体不明な宗徳が、我が物顔で城の中を歩くのはよくない。とはいえ、つい先日にそれをやっていたのだが、あの時とはもう状況が違うのだ。ここは、大人しく誰もが見える場所で無害さをアピールしておくに限る。
王と善治の問題は解決しているはずなのだから、わざわざまた波風を立てる必要はない。
続々と集まってくる兵や騎士達。それと同時にコンテナから一人一人運び出されていく。最後の一人となった時、統率された一段が中央に一人の男を囲みながらやってきた。
「失礼いたします」
「おう。えっと……もしかして王様か? あ、何もしねぇし、こっから動かねぇから心配すんな。あ、これだけ渡すわ。妃さんからの手紙な。返事あるなら待つから」
「ああ……では待っていてもらいたい……」
「おう。けど、最長で三十分……って、時計なかったな……え〜っと、時計は……」
この世界には、細かい時間が分かる時計はない。何より、時計を持ち歩く習慣もなかった。町では六時、十二時に長めの鐘が一回鳴り、三時と九時に短い鐘が鳴るだけ。
十分後とか、そういうことは分からない。唯一、砂時計が三分のものと五分のものがあるが、それくらいだ。なので、宗徳はちゃんと分かりやすいように時計を用意してやることにした。
宗徳としても、昼食の時間までに戻らなくてはならない。時間はあってないようなもの。
「あった、あった。そんで大きくするっと」
「こ、これは!?」
コンテナの前に、大きな柱時計が現れる。宗徳が生まれた時からあった古い柱時計。もう動かなくなり、それでも捨てることができずに倉庫に眠らせていたそれを、こちらで修理したのだ。それをさらに魔術によって大きくすればよく見えるだろう。
「お、丁度良い。今十一時だから長い針が一番下に来るまでに頼むな」
「し、承知した……」
王が手紙を持って城の中に戻っていく。
「さて、俺らはここでお茶でもするかな」
《くきゅっ》
引き続きのんびり待つことにしたのだ。
読んでくださりありがとうございます◎
計画的に。
次回、また一度休ませていただきます。
土曜4日0時です。
よろしくお願いします◎




