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065 ウチの子です!

2018. 6. 23

善治が帰ってきたのは、昼食が済んでしばらくしてからのことだった。


その時宗徳は、ギルドマスターである善治の執務室の片隅で地図を作る作業をレンヤと共に行っていた。


「お、善じぃが戻ってきたな」


気付いた宗徳が、そう口にすると、レンヤが顔をあげる。


「えっと、ここのマスターでしたっけ?」

「そうだ。俺の武術の師匠でもある」


話している間に、善治が部屋に入ってきた。


「戻った。その子がレンヤか」

「あっ、はじめまして。久月廉哉です」


立ち上がり、緊張しながらレンヤがフルネームで名乗る。


「ああ。善治だ。事情はあらかた宗徳と寿子から聞いているが、奥の部屋で話しをしよう」

「え、あ、はいっ」


そのまま住居スペースである奥の扉に向かう善治。そこに宗徳が慌てて手を伸ばす。


「ちょっ、善じぃ。王とのことは大丈夫だったのか?」

「話は付けた」


無表情のまま告げる善治に、宗徳は顔をしかめる。そこに寿子がやってきた。


「お帰りなさいませ師匠」

「今戻った。彼とこれから話をするから、来てくれるか」

「はい。あら、あなた。どうしたのです?」


そのまま当たり前のようにレンヤと善治の後を追う寿子。しかし、宗徳は足を止めていた。


「ちょい待ちっ。牢に入ってる兵隊とか、王妃とかどうすんだよ!」


完全に全て終わったというか、まるで最初から何もなかったように進める善治にびっくりだ。一体、王と何をお話してきたのだろうか心配になる。


「……騎士は解放してくれ。ついでに王妃達を護衛して帰るように」

「あなた。レン君の事は私が。そっちはお願いしますね」

「……はい……」


宗徳に選択なんてなかった。


◆◆◆◆◆


宗徳に面倒ごとを全て押し付けた寿子は、レンヤを隣に座らせて善治と向かい合っていた。


「成る程……『勇者』で『召喚された者』か。苦労したな。最近は回収班も手が回らないらしい……無事で良かった」


改めてレンヤの鑑定をして、善治はため息をついた。


「師匠、回収班とはなんです?」


寿子が気になったのはそこだった。言葉からこうして異世界に来てしまった者たちを迎えに行く部署があるかのようだ。その予想は当たっていた。


「異世界召喚をされた者を救出する部署だ。一つ下の階でな。あそこは、扉を新たに解放する仕事もあるから、万年人手不足なのだ」

「……それじゃぁ、レン君は連れて帰っても……」

「ああ。申請書類はもう向こうで用意されている。数日後には通るだろう。ただ……事故だったそうだな。君だけこちらに来たことで助かったらしい……」

「っ、そうですか……」

「レン君……」


レンヤも、宗徳と会って余裕が生まれてから記憶を整理していた。そこで、事故のことを思い出したのだ。それは、旅行先で起きた崖崩れだった。


自分は一度死んだのだと思っていたという。


「覚悟はしていました。そうですか……調べてくださってありがとうございます。大丈夫です……家族の分もちゃんと生きようと思います」


善治や寿子には、レンヤが強がっているのがわかる。それを痛ましく感じながらも、決して面には出さなかった。


「ああ……それで戸籍だが、あちらではもう死亡とされてしまったのでな……社の方で用意した。住む場所として寮の手配もできる。できれば、そのままライトクエストに所属してもらいたい。もちろん、気持ちが落ち着くまで自由にしてもらっていい。生活費も社が持つ」


選択肢があるように思えるが、実際はライトクエスト所属、一択だ。異世界を知ってしまったのだ。それも戦わなくてはならず、生きるか死ぬかという世界。


日本に戻っても、すぐに常識や感覚の違いが混乱を招くようになる。もっとも危惧しなくてはならないのは、そういった心の問題だ。これに、ライトクエストならばすぐに対処もできる。


「……お世話になっても良いのでしょうか……」

「構わん。それに宗徳や寿子は君を簡単に手放す気はないだろうからな」

「当然です。もうレン君はウチの長男ですもの」

「っ……」


胸を張って得意げに言い切った寿子を思わず見たレンヤは、顔を赤くして、くしゃりとその表情を崩したのだった。


読んでくださりありがとうございます◎



手放す気は全くありません。



次回、土曜30日0時です。

よろしくお願いします◎

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